第62話「中秋の名月にはお団子がよく似合う」
「そろそろ──お宝のお話をしてくださいまし!」
レミアムがきりっと真剣な顔で切り出した。
……が、次の瞬間、自分の頭に妙な違和感を覚えたらしく、慌てて手をやる。
「なっ……!? わ、わたくしのツインテールが……お団子になってますわぁぁっ!?」
鏡代わりに窓ガラスをのぞき込み、顔を真っ赤にする。
ベッドの上で雫はケラケラ笑いながら、指先をひらひら。
「んふふ〜、可愛いからつい〜。気づくの遅いんだもん」
「む、むきぃ〜っ!」
ぷんすかしながらも、結び直す勇気はないのか、そのままお団子のまま睨んでくるレミアム。
雫は肩をすくめ、ようやく話を切り出した。
「ごめんごめん、えっとねぇ────」
──そして数分後。
「……つまり、ミヤビンという女子のお師匠様にあたる方が、そのような事を?」
お団子頭のまま、レミアムが眉をひそめて問い返す。
雫はにこにこと大きく頷いた。
「そうそう、不思議な人なんだぁ〜。神秘的というかぁ……なんというかぁ……まるでレミレミみたいな感じぃ」
「わ、わたくしみたい……ですの?」
思わず背筋を伸ばすレミアム。
雫は両手を広げて、夢見心地のように語る。
「そうそぅ、まるで小説の中から出てきたみたいでぇ……思わず質問攻めにしちゃったんだぁ……」
ふっと声が落ちる。
「……嫌われてないかなぁ……」
さっきまで笑っていた雫の横顔が、少しだけ曇った。
「”魔界出身”とか”異世界転移”とか……思ったことを口にしちゃったから……」
小さな声は、部屋の空気をほんのり沈ませる。
レミアムはしばし雫を見つめ──やがて小さく息をついた。
そして、そっと彼女の髪に手を伸ばし、優しく撫でる。
「……嫌われたりなんて、しませんわ」
「……レミレミ?」
不思議そうに目を瞬かせる雫。
レミアムは、彼女の不安を包み込むように微笑んだ。
「だって……雫は、わたくしがどんな存在かを知っても……こうして受け入れてくださっているではありませんか」
撫でる指先は、まるで安心を与えるように穏やかで──温かい。
「……」
「……わたくしが、“魔界”から来た……次代の魔王候補であっても……」
その言葉は、静かな夜の空気に溶けるように落ちた。
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