第61話「森の妖精さん」〜雫side〜
───霧ヶ原宅 雫の部屋
「んふふ〜、やっぱりレミレミの髪ってサラッサラだねぇ〜」
ベッドの上で、私はレミアムの銀髪ツインテールをくるくる指で遊ぶ。
月明かりに照らされて、まるで絹糸みたいにきらめくんだ。
「お、おやめなさいましっ……子供扱いしないでっていつも言ってるでしょうっ!」
そう言って頬を赤くしながらも、レミレミは大きなリボンを結び直す私の手を拒めない。
可愛いなぁ。ほんと、可愛い。
──思えば。
「初めて会った夜も、泣き顔ぐしゃぐしゃで……ほんっと可愛かったんだよねぇ〜」
私はにやけながら髪を撫でて、あの光景を思い出していた。
───森の中 廃屋へ向かう道
今夜は絶好の“心霊スポット巡り日和”。
月は雲に隠れてるし、風もひんやりしてて……最高に雰囲気出てるんだよねぇ。
私は懐中電灯を片手に、わくわくしながら小道を進んでいた。
……と、その時。
「うぇぇんですわぁ……うぇぇんですわぁ……」
えっ、泣き声!?
こんな森の奥で? もしかして幽霊!?
内心テンションが爆上がりしつつ、声の方に光を向ける。
そこにいたのは──大きなカバンに隠れるようにしゃくり上げてる女の子。
月明かりに銀色のツインテールがきらりと光って、まるで人形みたいに整った顔立ち。
……でも、ぐしゃぐしゃに泣いてて可愛いぃ。
「だ、大丈夫ぅ?」
思わず声をかけると、女の子はびくっと震えて顔を上げた。
「ひっ……な、なんですのあなたは!? こ、ここは……人間界ではないはずですのっ!?」
おおっ、いきなり異世界人っぽい発言きたぁ!
でも涙でぷるぷる震えてる声は小動物みたいで愛らしい。
私はじーっと見つめて、にこーっと笑った。
「かわいい〜。森の妖精さんかなぁ?」
すると彼女は慌てて涙をぬぐい、胸を張る。
「よ、妖精ではありませんわっ! わたくしはレミアム・コーリル! れっきとした由緒正しき名を持つ貴族なのですわ!」
……うん。めちゃくちゃ可愛い。
決め台詞なのに声が震えてて、今にも泣き出しそうだし。
「ふむふむ──それでぇ、レミレミはどうしてこんな森の中にぃ?」
「レ、レミレミではありませんわぁ……ぐすっ……」
袖で涙をぬぐう仕草が、庇護欲をこれでもかと刺激してくる。
「わ、わたくし……住む場所がなくて……森の奥に“人のいないお屋敷”があると聞きまして……そ、そこなら……って……
でも……夜になると怖くてぇ……カァカァとかホーホーとか鳴き声がぁ……ひっく……」
おやおや。
なるほど、心霊スポットに住もうとして泣いちゃった訳かぁ。
──これはもう、お持ち帰り決定だよねぇ。
「……住む場所がないならぁ、うちにおいでぇ〜」
私はにこっと笑って手を差し伸べた。
レミアムはぱちくりと目を瞬かせ、驚いたように私を見上げる。
「えっ……い、いいの!? ……で、でも……知らない人について行っちゃいけないって……パパに言われてますわぁ……」
おぉ、いい子だぁ。余計に可愛い!
私はくすっと笑いながら、胸を張った。
「それならぁ──私の名前は霧ヶ原雫っていうのぉ〜」
わざと両手で自分を指さして、にっこり。
「ね? これならもう“知らない人”じゃないでしょぉ?」
「…………っ!」
レミアムは目を丸くして、口をぱくぱく。
やがてほんのり頬を赤くして、カバンをぎゅっと抱きしめた。
「な、なるほど……そういう理屈ですのね……っ」
小さく息を整え、胸を張る。
「……し、仕方ありませんわね! 雫……あなたのお家に、ついて行ってさしあげますわ!」
──こうして、銀髪ツインテールのお嬢様(自称)を拾った夜だった。
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