第59話「youは何しに学校へ?」
「それでぇ〜……師匠さんはどうして学校にぃ?」
雫が机に頬杖をついたまま、にこにこと問いかける。
その笑みは柔らかいが、目だけはじっと二人を射抜いていた。
「えっ、それは──」
リリスは言葉を詰まらせる。
「わ、私が呼んだんです!」
雅が慌てて割って入った。
「呼んだぁ?」
雫は小首をかしげる。その仕草は無邪気だが、声音は探るように低く響いた。
「……う、うん! ほら、その……社会科見学の一環で!」
雅は必死に言葉を繋げる。
「へぇ〜、社会科見学ぅ? 面白そうだねぇ」
雫はくすっと笑う。
「それで何か得られたのかなぁ?」
「そ、そうじゃな……なかなか面白い発見があって楽しめたぞ」
「そ、そうです! 楽しかったです!」
「それはよかったぁ〜」
にこにこと笑みを浮かべる雫。
──その時、校舎に鐘の音が響いた。
「あれぇ〜もうこんな時間かぁ。もっと話したかったなぁ」
雫は伸びをして立ち上がると、ふわりとスカートを翻す。
「そうだぁ……これからちょっと、一緒に遊びに行かないかなぁ?」
「むっ、しかし時間が……」
リリスが難しい顔をする。
「ありゃぁ、予定あるのぉ?」
雫は机に顎を乗せたまま、じっと二人を見上げる。
「え、えっと……その……」
雅は言葉に詰まり、ちらりとリリスを見る。
リリスは腕を組み、しばし考え込むように目を細めた。
そして──大きくため息をつく。
「はぁ……実はな。このガッコに、宝のヒントを探しに来たのじゃ」
「お宝、です!?」
雅がぱちんと目を丸くする。
「うむ……秘宝の在り処へ繋がる、重大な手がかりがこの校舎にあるはずなのじゃ!」
リリスは胸を張って断言した。
「へぇへぇへぇ〜……」
雫はにやりと口角を上げ、興味深げに身を乗り出す。
「それはどんなお宝?」
「むっ……それはだな……」
リリスの言葉が途切れる。
「……わからんのじゃ。形あるものかどうかすら見当がつかぬ」
「えぇぇぇぇ!?」
雅がずっこける。
リリスは深刻そうにうなずき、ぽつりと漏らす。
「古文書には“ガッコ”の名が幾度も記されておってな……。その意味を確かめるために、ここへ来たのじゃ」
雫は頬杖をつき直し、にこりと笑う。
「ふぅん……じゃあ本当に“謎”が眠ってるんだねぇ、この学校には」
──その目は笑っているのに、奥底で光るものは鋭かった。
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