表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/94

第55話「図書委員・山田」

「さて──改めて案内するです」

雅は小さく咳払いし、案内モードに切り替えた。


「この学校は“清く正しく”がモットーで、在校生はおよそ六百人。部活動も盛んで、運動部・文化部ともに活躍してます」


「ふむ……清く、正しく、か……」

リリスはうんうんと頷きながらも、視線は廊下のあちこちを忙しなく泳がせている。


やがて、昇降口の方を指さし──


「おぉっ、あれは何じゃ? ずらりと並んだ木の小部屋……」


「……あれは下駄箱です。靴をしまう場所です」


「下駄箱……! 古文書によれば、そこに“密書”を忍ばせ、別の場所での密会や作戦会議を指定する──」

リリスの目がぎらりと輝く。


「これは陰謀と謀略が交錯する、秘密の連絡箱ではないかっ!?」


「そ、そんな物騒な場所だったとは……です……!」

雅は、なぜか背筋を震わせつつ全肯定。


リリスが下駄箱をひとつひとつ覗き込み、やたら真剣に“調査”している横で、雅は咳払いした。


「……コホン。続けるです。あちらが図書室で──」


「なにっ、図書室だと!? すぐに案内せよっ!」


リリスの食い気味の声に、雅は思わず敬礼する。


「か、畏まりましたです!」



---


──天ヶ原高校 図書室前。


重厚な扉を開けると、静けさと紙の香りが迎えてくる。


「……やはり、ここはただの読書所ではないのぅ……古文書の匂いがする」


リリスは低く呟き、雅は即座に頷く。


「確かに……そうかもしれません」


木の書架が幾重にも並び、整然と本が収められたその光景は、まさに“資料庫”そのもの。


リリスは歩きながら、光を受けるページのきらめきに目を細めた。


「うむ、これは人間界の“機密資料庫”じゃ。ここには世界の命運を左右する知識が封印されておる」


「なるほど……封印、です」

雅は真剣にメモを取り始める。


その時──厚みのある本を抱えた男子生徒が、カウンター越しの図書委員へ声をかけた。


「すみません、この本、貸してください」


図書委員は穏やかな笑みで本を受け取り、静かに告げる。

「はい、どうぞ。丁寧に扱ってくださいね」


リリスは、すかさず雅の袖を引いた。

「───奴は、何者じゃ?」


「彼ですか? 図書委員、です」


「司書か……アヤツこそ、この機密資料庫の番人じゃな」


「そ、そんな……隣のクラスの山田君が……まさかっです!」


その時、山田がこちらを見た。


人差し指を口元に当て、静かに首を振る。


雅が小声で解説する。


「あ、アレは“静かに”って意味のジェスチャーです」


しかしリリスは目を見開き──

「いや、違う……古文書で見たことがある……」


「あれは“一は全、全は一”を示しておる……真理の扉を開いた者が言っておった言葉じゃ………」


「や、山田君が……真理の扉を……っ!?」


雅は完全に信じ切り、二人揃って山田を畏怖の眼差しで見つめ続けた。

気に入っていただけたら、評価・ブクマで応援してもらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ