第53話「こうしちゃおれん!」
境内を渡る風に、色あせた紅葉がはらはらと舞い落ちる。
竹箒を動かすたび、カサカサと乾いた葉が寄り集まり、小さな山を作っていく。
「……ふぅ」
吐いた息が白くほどけ、淡く空へ昇った。
リリスは手を止め、境内の隅にひっそり咲く菊をぼんやりと見つめる。
(そういえば──)
ふっと脳裏をかすめたのは、今日も修行に来るはずの雅の顔。
「む? そういえば雅のやつ、今日はまだ姿を見せんのぅ」
首をかしげるリリス。
時刻はとうに過ぎ、境内には夕方の気配すら漂い始めている。
(時間だけはきっちり守る子だったはずじゃが……)
──そのとき。
遠くから砂利道を蹴る足音が、バタバタと近づいてきた。
「し、師匠ーっ! お、お待たせしましたですっ!」
振り返れば、そこには──学生服姿の雅。
コートも着ず、頭に紅葉の葉をいくつか貼りつけたまま、息を切らして立っている。
「……なんじゃ、その格好は」
「えっと……学校の制服のまま来ちゃった、です……」
「…………ガッコ?」
リリスの瞳が、ぎらりと光る。
「今、ガッコと言ったか!?」
「は、はいですっ、学校のせいふ──あばばばばば!」
制服の襟をがしっと掴まれ、容赦なく揺さぶられる雅。
「ま、まさかそれは“G4”なる四天王が支配し、“ホスト部”という女子をもてなす秘密の部活があるアレか!?」
「ちがっ……ちがいますぅ〜! ふつうに授業受けるところですぅ〜!」
「………ガッコ……」
リリスがぼそりと呟く。
(……宝の在処がわかるやもしれん……)
瞳がらんらんと輝き、口元がじわりと吊り上がる。
次の瞬間、バッと雅の肩をつかみ、ぐいっと顔を寄せた。
「────こうしちゃおれん! さぁ、ガッコに案内せよっ!」
「ぶ、部外者は立ち入り禁止、ですぅ〜!」
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