表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/94

第50話「おはぎは何味」〜リリスside〜

綺麗でした──

綺麗でした……。


蓮の声が、何度も頭の中で反芻される。

低く、けれど優しく響いたあの言葉が、耳に焼きついて離れない。


 


魔界にいた頃。

容姿について褒められることなど、何度もあった。


「気品あるお姿だ」「魔族の姫にふさわしい」「目を合わせるのも畏れ多い」


──だが、そのどれもが“立場”に向けられたものだった。

“魔軍司令の娘”という肩書をまとった私に。

私自身ではなく、“役割”に与えられた言葉。


───それでも良かった。


父上の立場を盤石なものとするために、何を言われても構わなかった。

魔王候補として選ばれたとき、私は──


喜んだ。心から。

父上の役に立てる。

私の存在が、あの人の背中を少しでも支えられるのなら──と。


けれど──


父上は、違った。


「おまえが魔王候補になる必要などない」

「そんなものは他の者に任せておけ」

「おまえは、もっと自由に生きていいのだ」


そう言って、私の手を取った。


強く、厳しい人だと思っていたのに。

その時だけは、どこか寂しげな目をしていた。


思えば、母上が亡くなってから──

父上は、職務の合間を縫って、よく顔を見せに来てくれた。


仕事で擦り切れた鎧のまま、こっそり第七層の私室へ。

無言で菓子箱を置いていくかと思えば、

「……これは王都で評判のやつらしいぞ」と、どこか照れくさそうに笑った。


護衛すら驚くほどの警備をかいくぐり、

「仕事で通りかかっただけだ」と、何度も嘘をついて。


あれが、あの人なりの──親心だったのだろう。


でも、私は納得できなかった。


魔王候補になれば、家の名誉は盤石になる。

だから、私は言葉を振り切って、こう言った。


「私は行きます。私の力で、“魔王”になってみせます」


あの時の父上の顔は──

今でも思い出せない。



父の手を振り払ってまで“魔王”を目指していたのに……


 


───それなのに、アヤツは! アヤツは!!


 


「氷の結晶も、髪も、まるで……神秘的な光景を見ているようでした」


 


──だって! そんなのスラスラ言える!?



無理! 想定外! 予想外!


父上の顔が、どんどん遠のいていく……


リリス……リリ……なんか喋ってる気もするけど、聞こえない。

だって、だって──


心臓の音が、煩すぎるのだから!!

気に入っていただけたら、評価・ブクマで応援してもらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ