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第43話「親バカ爆発!!グラントがやらねば誰がやる」

──魔界軍本部・中央作戦塔


荘厳な黒曜のホールに、警告音が鳴り響く。


「報告! 人間界にて高位魔力反応を探知! 該当波長、識別コード──“氷”系統!」


参謀が魔法式端末を叩き、空中投影に波形を浮かび上がらせる。


「魔力量、通常時の約12倍……これは……!」


「まさか……リリス様……?」


部下たちが息を呑むその瞬間、


──ドォンッ!!!


扉が爆発音とともに開き、灼熱の炎をまとった巨躯が現れた。


「……今のは、リリスの魔力じゃな……?」


「魔力の波に、かすかに迷いがあった……っ」


「まさか……リリスの身に何かあったのではあるまいなァッ!!?」


グラントである。


指一本で床を割りながら、怒涛の魔力を吹き上げる。


「通路をあけいッッ!!! わしが今すぐ人間界へ──!!」


「なりません、父上。落ち着いてください」


冷静な声が場を貫く。


リオルが歩み出て、即座に魔力結界を展開。


「人間界の結界に衝突したら、被害が出ます。まずは状況を把握してから──」


「リリスの身に何かあったらどうするんじゃ!!

 なぜ止める!? わしの愛しき娘ぞッ!!」


怒りのあまり火柱が吹き上がり、天井のシャンデリアが一部溶け落ちる。


グラントが燃えるような勢いで駆け出そうとしたその瞬間──


バチィンッ!


空間に展開された多重結界が、彼の足元を拘束する。


「ぐぬっ!? リオルぅっ、貴様ぁ……!」


「……これ以上、勝手な行動は許しません。父上」


リオルは片手で魔術式を操作しながら、ため息混じりに言った。


「リリスの身に何かあれば、私もすぐに対応します」


「ならば共に行くぞ! そなたの転移陣を貸せばすぐ──!」


「……落ち着いてください」


リオルの声が少しだけ低くなる。


「確かに、魔力には“揺らぎ”がありました。しかし、それは……本人の感情の波。暴走ではありません。制御が揺れただけです」


「……だとしてもじゃ!」


「……リリスは、魔王候補です。これから先、いかなる危機にあっても自らの力で乗り越えねばなりません」


リオルは、父の視線を正面から受け止める。


「……そして、今回は──バルがついています」


「……………」


グラントの顔がぴくりと引きつった。


「……あやつ、この間の報告書……"壁ドン"の三文字しかよこさんかったぞっ!! 報・連・相という概念を知らぬのか!? しかも絵付きだったぞ!!」


「……報告書に擬音とイラストを入れるのはやめろと、私も三回言いました」


リオルがこめかみを押さえながらうつむく。


「……ですが、彼の戦闘能力だけは、確かです。軍内評価で私に次ぐAランクですし、リリスのことも……本当に、大切に思っているようです」


「…………ぐぬぬぬぬぬ……っ!」


グラントの巨体が震える。


「父上……信じてあげてください。あの子を。そして、彼を───」


しばしの沈黙。


──やがて、グラントは深く息を吐いた。


「……そうか……わかった。わしが出るまでもない、ということじゃな」


リオルが少しだけ、ほっと息を吐く。


「……はい。そういうことです」


グラントは静かに頷くと、背を向け、どっしりと玉座へと腰を下ろした。


「わしは、静かに……ここで待つことにする。リリスが、無事戻るのをな……」


「……ありがとうございます。英断です、父上」


──その場の空気が落ち着いた、かのように思えた。


しかし──


──魔界・人間界門前、数時間後。


「よしっ、今行くぞリリスッ!!」


燃え上がるような勢いで、すでに門前に仁王立ちするグラントの姿があった。


「すべて任せてはおれん! 父として当然の行動っ!!」


──そしてその背後、門に貼りつけられた紙切れが一枚。


《人間界いってきます パパ》


そこには拙い手描きのリリスと自分が手を繋いでいる絵まで添えられていた。


──魔界軍本部・リオルの執務室。


書類の山を前に、静かに筆を走らせるリオル。


その時、部屋の扉がノックもなくバタンッと開いた。


「しっ、失礼します副長官っ!」


現れた若い部下が、気まずそうに手元の紙を差し出す。

その顔はどこか青ざめている。


「……なんだ?」


リオルは眉をひそめながら、その紙を受け取った。



「………………」


ぐしゃ。


リオルは無言でその紙を握り潰すと、天を仰いで呟いた。


「……あの馬鹿親父ぃぃぃぃ……っ!!」


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