第39話「ときめき☆魔眼講座〜視線のぶつかり稽古〜」
──天明寺・裏庭。
「……では、いよいよ“実戦”じゃな」
リリスが腕を組み、芝の上に仁王立ちする。
「準備はよいか? 雅!」
「はいっ! 師匠っ!」
背筋をピンと伸ばす雅。今日はお札の代わりに、なぜか額に“魔眼解放中”と書いた自作の紙が貼られていた。
「ふむ……では、相手は──」
ひょこ、と現れたのはバル。
「どもーっス。お手柔らかに〜」
「きゃあっ!?」
雅が半歩うしろに下がった。
「えっ……師匠、召喚獣さんですか!?」
「うむ。なにせ蓮は………強力すぎる。魔力感知の修行も含め、召喚獣……バルあたりが適任じゃろぅ。」
「さりげなくリリス様も召喚獣呼びっ!?」
「さあ始めよ。見つめあえ!魂でな!」
「……はっ!」
雅はくるっと振り返り、バルの前に立つ。覚悟を決めて──
「い、いきますっ……!」
目を細め、魔眼の力を宿すような視線を送る。
……だが、
バルと目が合った瞬間──
「ひゃぅんっ……!!」
秒で目をそらす雅。真っ赤な顔でぷるぷる震えている。
「え、なんで目逸らすっスか?」
「む、無理ですっ……その……真っ直ぐ見られたら……ッ!!」
「いやいや、こっち向いてくださいって〜」
バルが身をかがめて、じぃっと覗き込む。
雅は後ずさる。さらに目を逸らす。もう背中は壁。
「ねえねえ〜。ほんとに魔力見えるんスか〜? ちょっとオレにも見せてくださいっス。」
バルが軽く顎をクイッと持ち上げる。
「ぎゃぴいっ!?」
変な声を上げて雅、壁へ逃げる
しかし、慌てすぎたその足が石に引っかかって──
「うわっ!」
「きゃっ!」
雅の足元がもつれ、よろけた身体を支えるようにバルが咄嗟に動く。
そのまま──ドンッ!
背中が石塀にぶつかり、正面を向くと。
バルの右手が、壁に。
左手は腰に添えられたまま。
ぐっと腕を突き出した形で、雅の顔すぐそばに、彼の顔がある。
──至近距離。
呼吸が、かすかに肌をかすめる。
まるで逃げ場を塞ぐように、バルが真上から覗き込んでいた。
「……怪我………ないっスか?」
その声が、妙に低く、やさしく響いて──
「──ぽわぁああああっ!!」
雅の思考回路は、一瞬でパンクした。
──バタリ。
雅、泡を吹いてその場に崩れ落ちた。
「──えっ!? マジで!? 嘘でしょ!? 起きて!?」
バルが慌てて揺さぶるも、雅はすでに変な笑みを浮かべて昇天中だった。
「…あ、あれはまさか……結界術………か、壁ドンッ……」
こうして、リリスの「ときめき☆魔眼講座」は壁ドンッ事故により終了した。
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