世界最強という肩書き
「で、ヨーラたちは何しに来たんだ?」
「茶化しに来た」
「はあ?」
ヨーラの言葉にレンは首を傾げた。そんなレンの姿にヨーラは「まだ分からないの?」と言うように肩をすくめる。
「影欒、何か忘れてるでしょ」
「いや何も忘れて……ああ!やっべぇー。列車にスーツケース置きっぱだわ」
「馬鹿だ。ところで煙草持ってる?」
「あーーーーーーー。残念だけど全部スーツケースのな…こら、勝手に服を引っ張るな。そして勝手に吸うな。あぁぁぁ俺の生きがいがぁ」
ヨーラがレンのポケットから煙草を奪い取り、「世界最強もまあまあだね」と言いながら煙草を咥えた。
「世界最強ってのはただ_」
「レンさま、取ってきました」
「はい?」
不意に後ろから声がしてレンが振り返ると、息を切らしたニーナが立っていた。その両手にはレンのスーツケースが抱きかかえられていた。
「いやどうやって取ってきたんだよ。凄いけど。てか俺、ニーナの肋骨折ったよな?」
折れているはずの肋骨の苦痛さえ見せつけず、ニーナはにこにこと笑っていた。
「?走りました」
「………うん、そうか。まあ、無事ならいいか」
深くは考えてはいけないと悟ったレンはニーナからスーツケースを受け取った。
「ニーナは帰るのか?」
「はい」
「じゃあ気をつけろよ。できるだけバレないように。それと治療してもらえよ」
「はい、レンさま」
ニーナはレンに軽く礼をして人混みの中へと消えていった。
「警察には運ばなくて良いんだ」
「まあな。運んだとこでニーナは殺しちまうし。で、お前たちも任務か?」
「そうじゃ」
「ふーん。じゃあ精々頑張れよ、クソロリババアとヤニカスおねーさん」
片手を上げて立ち去るレンに、シャレルーラが必死に言い返そうとしていた。
「お主なんぞ、えーと……」
「ヤニカスジジイ」
「そうじゃ。ヤニカスジジイじゃ!」
「はいはい。好きな風に呼べって」




