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偉大なる大老 (中)

キリがいいとこまで書こうとしたらいつもより長くなりました笑

多分3倍くらいある…


(今回は文がグチャグチャ。…いつもだけど)

その日は、死体をも溶かすほど暑い日だった。


「…はぁはぁ。つい、た」

浅い記憶を辿ってここまで着けたのは奇跡だろうか。

 35年。主様が亡くなってから35年間も経った。村だったものは町になり、山は村へと変わり果てた。当時の子供は大人へとなり、大人は老人へと姿を変えた。変わらないのは、―変われなかったのは我だけだった。

「主様」

懐かしい。その名を呼んだのも久しぶりだ。零れそうになる涙を抑え、蔦が覆う建物に足を踏み入れた。

湿っぽく、カビ臭い。天井からは雨水が落ち、床に水溜りをつくっている。

入って正面には、無数の箱が積まれていた。中には我とそっくりの『人形』が押し込まれている。失敗作のようだ。

左側は崩壊して進めない。右側を行くしかないようだ。特に目を引くものがない通路を進み続けると、開けた場所に着いた。

そこは記憶にも残る場所だった。主様に初めて名前を呼ばれたところだ。今はもう、草が生い茂り随分と違っているが。

さらに進み続けると、小さな部屋にたどり着いた。崩壊していて、これ以上は先には進めない。部屋にはテーブルと椅子、折りたたみ式のベッドがある。それと、小さい窓。

「本…?」

テーブルの上に分厚い本が置かれている。だいぶ前から使われているようで、ページは黄ばんでいる。

表紙を捲ってみると、筆記体でこう書かれていた。

『僕の愛する娘、シャレルーナへ』

もう1ページ捲ると、年月日と数文の文字が刻まれていた。

どうやら日記本のようだ。

「これなら分かるかも」


ここに来た目的は『答え』を探すためだった。主様が我らを創った理由が知りたかった。我が一人生き残ってしまった理由が知りたかった。我はあと何年生きなければいけないのか知りたかった。我はこれからどうすればいいか知りたかった。


日記は、主様が亡くなる前日までか書かれていた。

それから毎日、1日分ずつ読み進めた。

『08.2-6 今日は特別な日だ。シャレルーナの誕生日なんだ。もう2歳だ。妻も喜んでいる。』

『08.3-19 一つ、大きなものを買った。屋敷だ。妻は驚いて怒っていたが、娘が喜べば良いんだ。』

『09.1-23 妻が死んだ。これからどうすればいい。教えてくれ。』

『10.1-23 穏やかな日だ。妻が亡くなってからもう1年がたった。シャレルーナは妻のことは忘れてしまったんだろうか』

『11.2-6 今日はシャレルーナの5歳の誕生日だ。お祝いのワンピースをプレゼントした。最新デザインで白く花がらのワンピースだ。本当はドレスが良かったが、仕方がない。6歳の誕生日には別荘をプレゼントするつもりだ。』

『13.9-17 シャレルーナが風邪を引いた。早く治るように医者を呼んだ。―追記。シャレルーナが消えた。』

『13.9-18 シャレルーナが見つからない。』

『13.9-20 シャレルーナを、町一つ越えた山で見かけたという者がいた。今から行ってくる。』

『13.9-21 シャレルーナが死んでいた』

『13.9-30 シャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナシャレルーナ。シャレルーナはどこだ?』

『13.12-5 シャレルーナを創ることにした。』

『14.5-18 また失敗だ。次は、先に脳を入れようと思う。』

『14.7-31 失敗だ。やはり、人肌を創るのは難しい。』

『16.2-6 成功の兆しが見えてきた。』

『17.6-10 成功した。19500体ほど創った。特に、18121体目のシャレルーラはシャレルーナにそっくりだ。これからは彼女達と暮らそうと思う』

『18.3-29 気になることがあった。シャレルーラは一人称を使ったことがないのだ。 シャレルーナのように「あたし」と言うのだろうか。―追記。やめてくれ。もう思い出したくないんだよ。シャレルーナのことはもう良いんだよ。』

『69.11-7 どうやらシャレルーラ達にも寿命があるらしい。故障と称しているが直す気力はない。だか、シャレルーラは違うようだ。何故だろうか。僕には分からない。』

『71.2-9 窓から見える月が綺麗だ。僕ももう寿命みたいだ。この後はシャレルーラ達とお茶会があるんだ。楽しみだよ。』

『71.9-4 実は明日が楽しみなんだ。理由は……明日書こうと思う。そのために、ここに日記本を置いておくよ。』


そこで文字は終わっていた。捲ってみても、何か書かれているページはない。

「…………」

主様が亡くなった日、何をしたっけ…?

「…………………」

他には誰かいた?

「………………………」

主様ってどんな顔だっけ?

「………………………………」

家はどこにあったけ?

「………………………………………」

我は。

「誰だ?」


気がつくと、辺りは真っ暗だった。窓からは月明かりが差し込むだけで、他の灯りがない。

雨上がりの草木の匂いが仄かに漂い、目が覚めた。

どうやら寝ていたようだ。寝る前の記憶がない。ベットに横たわる体を起すと、何かが落ちる音がした。

「日記…」

拾い上げると、積み上げた砂のように崩れた。バラバラになったページが再び、床へと落ちる。拾おうと立ち上がる。

「うっ…」

だか立ち上がれず、そのまま床へ倒れた。

振動に驚いたネズミが部屋の隙間から飛び出した。

 まるで数年ぶりに歩いたような感覚だ。歩き方も忘れてしまった感じもする。いや、もしかしたら数年、数百年寝ていたのかもしれない。

部屋が来たときとは全く違う。埃が雪のように積もっているし、窓はヒビが入り蔦が隙間から伸びている。あの日記本のページも虫に喰われ、字も薄くなっている。何年も、きっと何百年も経ってるのに。それなのに、我は。

「まだ、生きてる……」

生きたくないわけじゃない。だけど、忘れるのが怖い。

今、どうして我がここにいるのかがもう分からない。主様の本名も分からない。何年生きているのかも分からないし、どう生きてきたかもうろ覚えだ。

ひとつ、覚えているのは『主様と共に過ごした』という事実のみ。

「!屋敷は!?」

そうだ。屋敷だ。主様と過ごした屋敷はまだあるはずだ。

よろけながらも立ち上がり、工場の外へと飛び出す。


『君に贈り物があるんだよ』

主様がくれたワンピースは白く花がらのワンピース。

『シャレルーラ』

主様の目線はいつも遠くを見つめていた。

『君は「特別」だよ』

主様の誰かを拒絶する眼差しと認めようとする口調。

『シャレルーナ。ありがとう』

儚げに微笑み、背を向けようとする主様。


全てが、主様の欲望の『家族ごっこ』だったのだ。


『屋敷』に着いた頃には夜明けが始まっていた。

違う、か。


     屋敷はもう跡形もなかった。


屋敷があった場所は平地になり、『人形』たちが無造作に置かれている。

駆け回れるほど大きかった家はどこにもない。

主様達と笑いあった庭もない。

そこにあるのはゴミへとなった『人形』だけだった。

「どう、して…」

「おい。嬢ちゃん、邪魔だ。ガキは引っ込んでろ」

「!!」

背後からガタイのいい男が数人やってきた。

「フッ」

どこにもいこうとしない我に呆れて、男共は『人形』に近寄った。そうして、ゲラゲラと笑う。

「おい見ろよ。このゴミ、あのクソガキにソックリだぜ」

「アーハハッ!やめろやめろ。気味がワリィ」

「怒んねぇんだな?つまらない奴。ほらシッシッ」

「家に帰ってママにゴホンを読んでもらえよ」

我の頭の中でプツンと何かが切れる音がした。

「―煩い」

「なんだよ?文句アンなら言ってみろよ、おチビちゃん」

「死ね」

その声は過去で一番重い声だった。

男共は一瞬怯んだが、すぐに笑い出した。

「我の家族を侮辱したことを謝れ」

「ハッ!カゾクゥ?このゴミが?ウルセぇんだよ」

「親分やっちまってください!ガキ一人ぐらい殺したってバレませんすよ」

親分、そう呼ばれた男は子分からハンマーを受け取ってニヤリと笑った。

「ガキでも容赦はしねぇ」

ハンマーを持った男が突進してきた。それを躱し、背後から足で蹴飛ばす。が、男は痛くも痒くもない様子でハンマーを振り回す。男が振るったハンマーは我の左腕に直撃した。男は続けざまに攻撃を繰り返した。

「…っ」

「おいガキ。もう立てねぇのか?」

「これが、()()なのか……」

そう呟いて我は、男の子分の背後へと回り込んだ。そこにハンマーを持った男がやってくる。男は我しか見えていないのか、騒ぎだす子分に気が付かずにハンマーを振るう。案の定、ハンマーは子分達にあたり急所を当てられた子分はバタバタと倒れ始めた。

「ナニしてんすか、親分!」

と、子分の一人が血を流しながら言うが、男は気にもくれず、ハンマーを振り回している。男は焦り、汗を流している。

「ダマってろ!」

男が腕を振り上げた瞬間、男の手からハンマーが抜けた。男は衝撃で、前に転んぶ。

「滑稽じゃ」

我は目の前に落ちてきたハンマーを掴み、男の頭に振り上げた。グチャという音がして、ハンマーは血に濡れた。


それが、我が一番最初に殺した()()だ。


子分たちは男の死に様を見て慌てふためいたが、恐怖で動こうとしない。

我はそんな人間にハンマーを振るった。

気色悪い音が響き、白いワンピースには血が飛び散った。

そこで、8人死んだ。主様の遺体はなかった。


主様を見つけるために近くの町に行くと、露店を開いていた年若い女が近づいてきた。

「ハロウィンはまだなのよ。早くお家に帰って着替えてき_________」

露店にある果実に女の血が飛んだ。

「ヒィィィィィィ!!!!!!!」

赤子を連れた人間が叫ぶ。2人分の血は地面に染みた。

今度は、子供1人。次は老婆。青年。少女。男女。男。

ナイフや銃を持ってニンゲンを守ろうとする者もいた。

ニンゲンを庇おうと泣く者もいた。

ニンゲンの代わり自ら命を捧げる者もいた。

神に願うニンゲンもいた。

ニンゲンは53人死んだ。主様の遺体はなかった。


何百年か経った。


小さい村についた。

 いつも通りニンゲンを殺した時だった。


「なに、してるの?」


不思議そうにそう言った少女がいた。

解説的な?

シャレルーラ達を創った理由→シュタルクが娘、シャレルーナに偽りでもいいから会いたかったから。


 今回の舞台は前話に出てきた、シャレルーラたちを創った工場。工場は、屋敷からは徒歩で3時間近くかかる山の中腹にある。

 実際、シャレルーラが寝ていたのは200年間である。


(それを書けよっていう気持ちは知っています。だけど、それを書ける語彙力は持ち合わせていないんだ。)

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