まだ、知らない過去
ニーナ。本名、アグルス・ニーナは研究者だった。3ヶ月前までは。
研究所で亡き恋人のために『人を生き返らせる道具』を創っていたときだった。研究所で大きな爆発が起こったのだ。爆発は、一瞬にして研究所を破壊し、大半の人が亡くなったという。
その爆発がなぜ起こったのかは定かではないが、爆発から離れたところにいたニーナは助かった。だが、ニーナには帰る場所がなかった。そして、崩壊した研究所を彷徨っていたところ、レンに保護され殺し屋となった。
まだ下位層の見習いといったところだが、一人で仕事をするほどの実力は持っている。
「…………」
おかしい。何かがおかしいのだ。
そう。ニーナは実力を持っているはずなのに、一般人に騒がれた点だ。しかも、気まで狂っていた。
「…………………?」
ニーナの腕に何か刺さっている。それは、指の爪ぐらいの大きさで丸く、無数の針が刺してある。
レンは、ニーナの腕に刺さったボールのようなものをとった。
「いった…。なんだよこれ」
レンはボールを地面に投げつけ、靴で踏みつぶした。すると、ボールから緑の液体が飛び出してきた。
近づこうとしたところで、誰かがレンの腰を叩いた。
「お主」
「ひぃ」
急に腰を叩かれたレンが悲鳴を上げた。その悲鳴に、声の主がケラケラと笑った。
「お主はいつ見ても面白いのぉ。偉大なる我でさえも笑わせるとは」
「チッ。このクソババアめ」
「誰がクソババアじゃ。我は偉大なる大老シャレルーラ様じゃ」
ふふん、とシャレルーラが胸を張る。
「あーそうだったな、クソロリババア」
「なっ」
シャレルーラは見た目は8歳ほどのピンク髪の少女だが、500年は生きているという。が、500年生きている証拠がないため、一部の人間には相手にされていない。
シャレルーラのことを、レンは信じているのかいないかは分からないが、少なくとも信用はしているようだ。
しかも、シャレルーラはレンと同じく、上位層にいる。
「お主っ。我はシャレルーラ様だ!!」
「はいはい」
レンはポカポカと叩いてくるシャレルーラを無視して、後ろで煙草を吸っている人物に目を向けた。
「で、ヨーラたちは何しに来たんだ?」
そろそろ『お嬢様』だしたい…




