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殺し屋―レン

 墓場の近くにある火葬場から、煙が上がった。

葬式中のようで、周りには喪服に身を包んだ人が十数人いる。中には、泣き崩れている人もいるが、ほとんどは数合わせのようなもので、突っ立ている人のほうが多い。

 そんな空間から少し離れたところに、煙草を吸う男がいた。男は、この場にそぐわないラフな格好だ。その隣には、男とは正反対で、真面目そうな男―ユキが缶コーヒーを握りながら言った。

「聞いてる?ボスがレンに新しい仕事だって」

「なあ、死んだのって誰だっけ?」

「サイラだよ。そんなことより、こんなとこで道草食ってないでボスのとこ行ってきて」

「サイラって誰?ババア?…あ、思い出した。受付のヤツか」

「レン!」

ユキが、煙草を吸う男―レンに掴みかかろうとしたところで、「ゴホン!」とわざとらしい咳払いが入った。ユキは、咳払いをした『ボス』が目にはいり、慌てて姿勢を正した。

「ボス、お騒がせしました。すみませんでした」

「もう行ってくれ、ユキ君」

「はい!」

ユキは『ボス』に一礼をして、喪服集団の方へ走っていった。一方、レンは『ボス』の前で腹を抱えて笑っていた。

 ひとしきり笑って、レンは目尻を拭った。

「ボスまで、なんて格好してるんすか。葬式なんて、もっとハッピーでいなきゃ。人生損ですよ。」

『ボス』は、呆れたのか、諦めたのか「今に始まったことじゃない」と呟いて首を振った。

「そもそも、ボスは年齢と口調が合わないんすよ」

「ガキで悪かったな」

「直すのは口調のほうがいいすよ」

「…そうか」

「ボスは、見ため的にショタとか」

「しょ、た…?」

『ボス』―年齢10歳の少年、エルゲンが首をかしげる。

「ショタ好きのおねーさんにでも聞いてみれば?『緋舞』のヨーラとか」

「そ、うか…」

何かを決意したのか、エルゲンは頷いた。そんなエルゲンを見ながら、ユキが3本目の煙草に火をつけた。

「ところで、仕事ってなに?」

「アデリー・ル・ヒナタが依頼主だ。仕事の詳細は彼女に聞いてくれ。これは地図だ」

「きったな。誰が書いた?」

渡された地図は、どうあがいても読めないほど汚かった。そもそも地図かどうかすら分からない。文字はふにゃふにゃで原形すらない。。強いて分かるのは、家の形ぐらいだ。

「依頼主」

「………俺が無事に帰ってきたらメシ奢って」

「おう。頑張れよ」

一番高いものを奢ってもらおうとレンが考えていると、横から長身の女性がやってきた。

レンが顔を上げる。

「よお、ヨーラ」

「煙草」

女性―ヨーラはレンから煙草の箱を奪い取って、「あ?」と呟いた。

「ボスだ」

「今更かよ。ん。じゃあ、俺はもう行くわ。煙草やるよ。ボス、ちゃんと聞いとけよ」

「ば、馬鹿にするな!」

レンはひらひらと手を振ると、火葬場から離れっていった。

エルゲンは顔を赤くしながら「ショタとは、なんだ…」と呟いたが、ヨーラには届いてなかったようで「この煙草美味しい」と言っていた。

恥ずかしくなったエルゲンは、その場をそっと離れなた。ヨーラは気づいていないようだ。煙を吐き出し、遠くを見つめる。

「ボスは口調変えればショタなんだよなぁ」

その声はエルゲンには聞こえなかった。



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