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第34話:純粋な真実の愛と背徳の口づけ(前編)

ムーンベルクの王女ムーンは、日に日にサマルティアの王子サマルを愛する気持ちが大きくなるのを実感していた。


一度心が壊れたことで、ローランへの想いがリセットされ、夫であるサマルを冷静に見ることができるようになった。かつては、燃えるような熱い情熱こそが愛だと信じていた。しかし、今ではそれがただの火遊びだったと悟る。


サマルの穏やかに包み込むような愛が、ムーンには心地よかった。今の彼女にとって、サマルこそが最愛の夫であり、彼女のすべてだった。


彼女は、何よりもサマルとのキスが好きだった。王族の王女として、夫に何かをねだることはほとんどなかったが、キスだけは別だった。


「サマルぅ、キスしようよぉ」


ムーンは甘えた声で囁きながら、椅子に座って本を読んでいるサマルの腕に絡みついた。夕食後の満足感と、ほろ酔いのせいで、普段よりも大胆になっていた。


「ははは、これじゃ本は読めないな」


サマルは微笑みながら本を閉じ、机の上に置く。その瞬間を逃さず、ムーンは彼の首に両腕を回し、顔を近づけた。


「ねぇ、いいでしょ……?」


彼女の熱を帯びた吐息が唇に触れる。サマルは一瞬目を細め、次の瞬間、彼女の腰を引き寄せた。


「まったく、甘えん坊だな……」


そう囁きながら、サマルはムーンの顎をそっと指で持ち上げ、ゆっくりと唇を重ねた。


唇が触れた瞬間、ムーンの体が小さく震えた。最初は軽く触れるだけのキス。しかし、それでは物足りなかった。彼女の手がサマルの背に回り、より深く求めるように身を寄せると、サマルも応えるように唇を開き、ムーンの柔らかな舌を迎え入れた。


サマルの舌がゆっくりと絡みつくたびに、ムーンの胸の奥がじんわりと熱くなる。彼のキスは深く、穏やかで、どこまでも甘い。まるで彼の愛そのもののようだった。


「ん……っ……ふ……」


甘く切ない吐息が漏れ、ムーンの指がサマルの服をぎゅっと掴む。彼の舌の動きに合わせるように、彼女も夢中で応えていく。


長い口づけの合間に、一瞬だけ離れた唇から、名残惜しそうに細い糸が引かれる。ムーンの瞳は熱を帯び、蕩けるような微笑みを浮かべた。


「サマル……もっと……」


囁くようにねだる彼女に、サマルは微笑みながら、再びその唇を奪った。


ムーンは、サマルの首に絡めた腕にさらに力を込めた。彼の唇の感触、舌の動き、呼吸の温もり――すべてが心地よく、愛おしかった。


「はぁ……ん……」


唇を重ねるたびに、ムーンの身体は徐々に熱を帯びていく。サマルの手がゆっくりと彼女の背を撫でると、ぞくりとした甘い痺れが背筋を駆け上がった。


「ムーン……」


サマルは息を整えながら、彼女の頬をそっと撫でる。その眼差しは優しく、しかし確かに彼女を求める熱が宿っていた。


「こんなに積極的なムーンは珍しいな」


くすりと微笑みながら、サマルは彼女の髪を指に絡めるように撫でた。ムーンは頬を赤らめながら、少しだけ恥ずかしそうに視線をそらす。


「……だって、サマルともっと……こうしていたいから」


甘えるように囁くと、彼の胸に額を押し当てる。その仕草があまりに愛らしく、サマルの喉がわずかに鳴った。


「……仕方ないな」


彼はそう言いながら、ムーンの顎をそっと持ち上げる。そして、先ほどよりも深く、強く、彼女の唇を奪った。


「……っん、んぅ……」


舌が絡まり合い、熱を帯びた吐息が交わる。ムーンの指がサマルの肩をぎゅっと掴み、まるで彼にすべてを委ねるように身を預けた。


どれほどの時間、こうして口づけを交わしていただろう。気づけば、ムーンの呼吸は浅くなり、頬は桃色に染まっていた。サマルもまた、微かに息を弾ませながら、ムーンの髪を愛おしげに撫でた。


「……もう、本なんて読ませてあげないんだから」


唇を重ねたまま、ムーンが拗ねるように囁く。サマルは小さく笑い、彼女の額に優しくキスを落とした。


「なら、ずっとこうしているか?」


「……うん」


ムーンは微笑みながら、再び彼の唇を求めるように顔を近づけた。彼女の心も身体も、今はただ、サマルにすべてを委ねることしか考えられなかった。


ムーンは、サマルの唇をゆっくりと味わうように啄んでいたが、ふと唇を離し、少しだけ上目遣いで彼を見つめた。


「ねぇ、サマル……今夜はキスだけの日にしない?」


ほんの少しだけ頬を染めながら、甘えるような声音で囁く。


サマルは驚くこともなく、ただ穏やかに微笑んだ。ムーンが体を重ねることを拒んでいるのではなく、ただ純粋にキスを楽しみたいのだと理解していたからだ。彼女にとってキスは特別なもの。愛の証であり、そして何よりも心地よいもの。


「……そうか、なら、たっぷりとキスをしよう」


サマルは優しくそう言うと、ムーンの髪をそっと撫でながら、再び唇を重ねた。


最初は軽く触れるだけの優しいキス。しかし、ムーンの舌がそっと彼の唇を押し開くように動いた瞬間、サマルも応えるように口を開き、彼女の舌を迎え入れる。


「ん……っ、ぁ……」


ぬるりと絡み合う舌の感触に、ムーンの身体が小さく震えた。


サマルはゆっくりと彼女の舌を吸い上げるように絡め、時折、先端を甘く撫でるように動かす。ムーンはその度にくすぐったそうに身をよじらせるが、それすらもどこか心地よさげだった。


「はぁ……ん、サマル……もっと……」


甘く蕩けるような吐息が漏れる。


サマルはムーンの腰をしっかりと抱き寄せ、彼女の背を支えながら、舌の動きを徐々に深めていった。


「んっ……、ふぁ……ぁっ……」


舌先が絡み合い、時折、サマルの舌がムーンの口内をゆっくりと探るように這う。ムーンはそのたびに身を震わせ、彼の肩をぎゅっと掴んだ。


そして、サマルが意識して彼女の上あごを舐めるように舌を動かすと、ムーンの身体がピクンと震え、甘い声が漏れる。


「んぁっ……! そ、こ……っ」


彼女の性感帯――上あごにサマルの舌が触れるたび、ムーンの身体が熱を帯びていく。


「ここが好きなんだな……」


サマルが囁くと、ムーンは恥ずかしそうに小さく首を振るが、彼の舌がもう一度同じ場所を撫でると、耐えきれずにびくっと震えてしまう。


「ぁっ……! だ、め……気持ちよすぎる……」


ムーンの指がサマルの服をぎゅっと握り、彼の唇を必死に求めるようにさらに深く舌を絡めていく。


サマルは彼女の背を優しく撫でながら、時折舌を吸い上げるように動かしながら、ムーンの口内を優しく攻め続けた。


「ん……ふ、ぁ……っ……サマル……もっと……」


どれだけキスを交わしても、足りない。舌を絡めるたびに、快感と愛しさが増していく。


唇を離した瞬間、二人の間には名残惜しげに唾液の糸が光る。ムーンは蕩けた表情で、潤んだ瞳のままサマルを見つめた。


「サマルのキス……すごく好き……」


甘い告白に、サマルは満足そうに微笑みながら、再び彼女の唇を深く奪った。


蕩けるような囁きとともに、ムーンは熱を帯びた瞳でサマルを見上げた。その表情はすでに、ただのキスでは満足できなくなっている証だった。


サマルはそんな彼女を見つめながら、微笑を浮かべる。そして、ゆっくりと手を伸ばし、ムーンの頬を優しく撫でた。


「ムーン……まだ足りないのか?」


低く甘い声が、彼女の耳に心地よく響く。ムーンは少しだけ頬を染め、恥じらいを見せながらも、小さく頷いた。


「……もっと、キスして……」


その言葉を聞いた瞬間、サマルは再び彼女の唇を深く奪った。今度は、最初の甘いキスとは違う。より濃厚で、支配するような深い口づけだった。


舌が絡み合い、互いの唾液が混ざり合う。サマルは意識的にムーンの舌を吸い上げ、彼女が感じる場所を探るように動かす。


「んっ……ふぁ……ぁ……っ……!」


ムーンの身体が小さく震えた。彼女の手がサマルの肩にぎゅっとしがみつく。その仕草が、どれほど彼のキスに翻弄されているかを物語っていた。


サマルはさらに彼女を追い詰めるように、舌を巧みに動かしながら、彼女の性感帯である上あごをゆっくりとなぞる。


「っ……んぁぁ……!?」


ムーンの身体がビクンと跳ねる。まるで電流が走ったかのように、全身が震え、足先まで熱が駆け抜ける感覚。サマルの舌が上あごを優しく、時に強く押し上げるたびに、甘い痺れが彼女の身体を突き抜けていく。


「はぁ……ぁ……サマル……そこ……っ……ぁぁ……っ!」


ムーンの指がさらに強くサマルの服を掴み、まるでしがみつくように身体を寄せる。その瞳は潤み、頬は火照り、唇はすでに熱を帯びている。


サマルはそんな彼女を抱き寄せるように支えながら、さらに舌の動きを深めた。彼の舌が、上あごを何度も優しく、執拗に撫でる。


「んっ……ぁぁぁ……っ……!?」


その瞬間、ムーンの身体がびくびくと痙攣するように震えた。全身が痺れるような快感に包まれ、息が乱れ、意識が白く霞む。


「……ぁ……サマル……っ……すご……い……」


蕩けた声が、かすかに漏れる。サマルはそんな彼女を優しく抱きしめながら、最後にもう一度、深く甘いキスを落とした。


「……お前が、キスだけでこんなに感じるなんてな」


ムーンは恥ずかしさに頬を染めながら、サマルの胸に顔をうずめた。


「だって……サマルのキスが……すごく、気持ちいいんだもん……」


彼女のその言葉に、サマルは優しく笑いながら、もう一度彼女の髪に口づけを落とした。


今夜はただ、キスだけの夜。

それだけで、二人は確かに一つになっていた。


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