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09 ビャッコの特訓

 ビャッコは、大柄でムキムキマッチョな体育会系の男性だ。

 絶対私とは合わない気がする。

 最初に会った時は、坂から転げ落ちた私を助けてくれたけど、もう少し優しくしてくれてもいいのにな。

 そんな私たちは、町の近くにある林で秘密の特訓をしていました。

「まぁ、秘密と言っても誰も教える人いないんだけどね」

「おい、手が止まっているぞ。しっかり動かせ」

「は、はい!」

 私は慌てて刀を振る。ビャッコはため息をついていた。

「全く……お嬢が俺に刀の使い方や、戦い方を教えてほしいと言ったから引き受けたものの……」

 ビャッコはちらっと私を見る。

「予想以上にだめだめじゃねぇか」

「そんなこと言われたって、戦ったりとか初めてなんですもん!」

「そんなんじゃ、すぐにやられちまうぜ?」

 すると、ビャッコは私の目の前に、大きな丸太をドンッと」置いた。

「よしっ。これを使って練習するか」

「これを一体どうするんですか?」

「その刀でこの丸太を斬ってみろ」

「い、いや無理ですって! だってこんな太いのに」

「つべこべ言ってねぇでやってみるんだ」

 そう言われて、私は刀を構えた。しかし、緊張で手が震える。

「おいおい、ただ丸太を斬るだけじゃねぇか。なんでそんな震えてんだよ」

 ビャッコは私に近づいて、私から刀を取る。

「いいか? 刀はちゃんと持って、相手をしっかりと見るんだ。目を離すんじゃねぇぞ」

 私が頷くのを確認すると、刀を振り上げる。

「刀を振り上げたら、一気に振り下ろす!」

 ビャッコが刀を振り下ろすと、丸太は斜めに切り落とされた。

「すごーい! あんな太い丸太が一振りで……」

「な? 簡単だろ?」

「いや、今のはビャッコの力が大半だったから切れたんだよ。ことねにそこまで求めるのは酷じゃないかい?」

 シャオはパタパタ飛びながら丸太を指さす。

「そうか? まぁ、お嬢やってみろ」

「は、はい!」

 私は刀を受け取ると、もう一度丸太を見て刀を構える。

「はぁっ!」

 刀を勢いよく振り下ろしたが、丸太をかすっただけで、小さな傷が出来ただけだった。

 それからも、ビャッコの指示に従って、何回もトライした。

 シャオは見ているのに飽きたのか、近くの石に寄りかかって寝ていた。

「やぁっ!」

「もっと腰を入れて!」

「ていっ!」

「踏みこみが甘い!」

「とうっ!」

「ふざけているのか!」

「ま、真面目にやっています!」

 なかなか上達しない私を見て、ビャッコはいらだっていた。

「全く、ここまで要領が悪いとは思わなかったぜ」

「そんなこと言われても……」

 私が俯いていると、ビャッコのため息が聞こえた。

「大体お嬢がもう少し出来る奴なら、こんな苦労はしなかったんだがな」

 ビャッコの言葉に、私はカチンときた。

「だったら、もう少し戦える子を呼べばよかったじゃない!」

「なんだと?」

「私は呼ばれたからここにいるだけで、好き勝手言われる筋合いはない!」

「お嬢がもう少し戦い方を覚えればいいことだろ!」

「だから私は、刀なんて持ったことがないんだってば!」

「教えた通りにやれば出来るんだよ!」

「だったら、もうちょっと優しく教えてくれてもいいじゃない!」

「うるさいなー。もう特訓は終わったのかい?」

 私たちの言い合いで、シャオが目を覚ます。

「「うるさい!」」

 2人同時に怒鳴ったので、シャオが驚いて石の後ろに隠れる。

「特訓は一旦中止だ。そこで素振りでもしていろ」

「ちょっと、どこに行くの?!」

「俺は邪鬼じゃきがいないか見てくるぜ」

 そう言って、ビャッコは私に背を向けて林の奥に行ってしまった。

 その時、ビャッコの背中辺りに黒い影が見えたような気がした。残された私はその場にしゃがみこむ。

「なんであんなこと、言っちゃったんだろ……」

 落ちこむ私を見て、シャオは頭を撫でてくれた。


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