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08 頭の中の声

 頭の中に声が聞こえたと思ったら、意識がぼんやりしてきた。

「娘、何をしている!早く逃げろ!」

 セイリュウの声が遠くで聞こえた気がした。

「うるさいな……ちゃんと聞こえているぞ」

「なに?」

 やだ! 私何を言っているの?!

 私が心の中で慌てていると、私の体は刀を構え、一瞬で水の球を全部斬ってしまった。

「すごいよ、ことね! いつの間にそんなこと出来るようになったんだい?」

 シャオが私の周りをパタパタしていたが、私の体は無視して走り出していた。

 そして素早く邪鬼じゃきの背後に回りこみ、頭にある糸を切った。

「ぐおぉー……」

 すると、さっきまで素早かった邪鬼の動きが少し鈍くなった。

「さぁ、セイリュウ。早く仕留めてくれないか」

「貴様に言われなくても!」

 セイリュウは少し怒りを露わにしたが、すぐに刀を構える。

「轟け、雷刃丸らいじんまる!」

 セイリュウが刀を上に向けると、雷が勢いよく邪鬼に落ちてきた。

「ぎゃあぁーっ!」

 邪鬼は悲鳴を上げ、黒焦げになり灰になって消えていった。

「ふぅ。なんとかなってよかったな。じゃぁ、体は返すぜ……」

 また頭の中に声が響いてきたと思ったら、私の意識がはっきりしてきた。

「あれ? ちゃんと思い通りに体が動く?」

「おい、娘。さっきのはなんだ。言葉遣いといい、動きもいつもと違ったように思えたんだが?」

「私にもわかりません……」

 私が俯いていると、セイリュウはため息をついた。

 あぁ、またがっかりされたかな。私は悲しくなったが、水神様のことを思い出す。

「いけない! 早く水神様の所に行かないと!」

 私たちは急いで橋に向かった。

 橋の真ん中辺りで水神様はまだ倒れていた。

「大丈夫ですか、水神様! しっかりして下さい!」

 私の呼びかけに、水神様はゆっくりと目を覚ました。

「うぅ……私は一体どうしたのだ?」

「それはこちらのセリフだ。一体何があった」

「わからぬ……そなたたちが帰った後、少ししたら意識が遠のいて、気づいたらそなたたちがそこにいたのだ」

「邪鬼のことは覚えていないんですか?」

「あぁ。力になれなくてすまない。しかも、どうやら迷惑をかけたようだな」

「いえ、水神様が無事でよかったです」

ありがとう。えっと……

「あ、私の名前は滝田 ことねです」

「ありがとう、ことね殿」

 すると、シャオが私の耳元に近づいてきた。

「ことね、邪鬼は負の感情から生まれる存在なんだ。もしかしたら、水神様の悲しみに反応したのかもね」

「なるほど……」

 私はそれを聞いて、1つのアイデアが浮かんだ。明日、実行してみよう。

 次の日、私は猫又に昨日浮かんだアイデアを話してみた。

「へぇー。面白いこと考えるじゃないかい。いいよ、協力してあげようじゃないか」

「ありがとうございます、猫又さん!」

「気にすることないよ。じゃぁ、先に行ってておくれ。すぐに人を集めるよ」

「わかりました。よろしくお願いします」

 私は頭を下げて、急いで湖に向かった。

 湖に着くと、セイリュウを呼び出した。

「おい、娘。用も無いのに呼び出すんじゃない」

「いえ、ちょっと水神様と談笑しててもらえませんか?」

「なぜ俺がそんなこと……」

「少しの間だけでいいんです!」

「娘が何をしたいのかわからんが、ここら辺はあのやしろから丸見えだぞ?」

  そう言われて私ははっとする。確かにやしろは全体を見渡せるようになっていた。

「これじゃサプライズが出来ない……」

「さぷらいず?」

 あまり聞いたことのない言葉を聞いて、セイリュウは首を傾げた。あ、なんか可愛いな。

「水神様、人が来ないってさみしそうだったから、猫又さんに頼んでここで宴会みたいなのが出来たらいいなと思って……」

 私の話をセイリュウは静かに聞いていた。

「……いいんじゃないか? それなら水神もうれしいだろ」

「よかったー。じゃぁ、早く準備しますね!」

「俺も手伝おう」

「あ、ありがとうございます!」

 それから私たちが準備をしていると、猫又がたくさんの人を連れて来てくれた。

「わーっ! きれいな湖!」

「ここで宴会が出来るなんていいじゃないか」

「早速、酒が飲めるぜ!」

 それぞれがいろんな感想を述べていたが、楽しんでくれるのならそれでいいか。

「皆さーん、自分で持ちこんだ物はちゃんと持ち帰って下さいね!」

「」おー!

「はーい!」

 湖の周りでは人やあやかしが楽しく宴会をしている。

「何やら、外が騒がしいな」

 奥にいた水神様は、気になって外に出た。

「これはまた、賑やかな……」

 湖の周りにいるたくさんの人を見て、水神様の顔がほころぶ。

 私は水神様が見えたので大きく手を振る。水神様も小さく手を振ってくれた。

「よかった。水神様、うれしそうですね」

「まぁ、ここまで騒がなくてもいいんだがな」

「やっぱり、だめですか?」

「いいや、水神があんなにうれしそうなのを、俺は久しぶりに見た気がする」

 セイリュウの少し微笑んでいる顔を見て、私は見とれてしまう。

 すると、ふいにセイリュウがこちらを向いた。

「ありがとう、ことね。感謝する」

「あれ、今私のこと、ことねって呼んで……」

「契約者のことを名前で呼ぶのに驚くことはないだろ」

「すみません、いきなりだったもので……」

「それに、俺たちにさん付けはしなくていい。なんかこそばゆい……」

「わかりました、セイリュウ!」

 そして、私たちはお互いに微笑んだ。


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