04 町にやってきた
しばらく歩いていると、橋があってその向こうに町が見えてきた。
「ほら、ことね。町だよ」
「はぁー。やっと休めるー」
「それはそうと、ことねはお金は持っているのかい?」
「え? お小遣いあまりもらえてないけど、一応持ってるよ」
私は持っていた財布をシャオに見せた。
シャオはじっと何か確認しているようで、少ししてから首を振った。
「これじゃだめだね。使えないよ」
「えーっ! じゃぁ今日は野宿なの?!」
「大丈夫。あの町に知り合いがいるから頼んでみるよ」
「本当に大丈夫かな……」
私は不安になりながら橋を渡った。
その先にあったのは、本でも見たことのある江戸の町に近かった。
皆和服で洋服を着ている人はいなかった。だけど、少し違和感があった。
「なんか、人間じゃないものが混じっているんだけど……」
そう、人間に混じって私のところでいうあやかしが普通に歩いていたのだ。
「なんで皆、怖がったりしないんだろう」
「驚くのも無理ないね。ここはことねの世界とは違うんだよ」
「違う?」
「そう、ここは人間とあやかしが共存する世界なんだよ」
「そ、そうなんだ……」
確かに一緒に店を手伝っている者や、ほのぼのと談笑している者もいた。
でも、なんだろう。皆こっちをじろじろ見ているような気がするんだけど。
「ねぇ、シャオ。私たちなんか見られていない?」
「それはことねがこの世界とは違う者だってわかるからだよ」
「え、そうなの?!」
「だって、洋服だし、そんなカバン持っている人いないよ」
言われて私ははっとする。目立っていたのはこの洋服のせいか!
「と、とりあえず、シャオの知り合いの所まで走るよ!」
「あぁ、大丈夫。もうここだよ」
シャオに言われて横を見ると、小さな長屋があった。すると、ガラッと音を立てて引き戸があき誰か出てきた。
「おや? シャオじゃないかい。元気だったかい?」
「やぁ、猫又の姉さん。久しぶりだね」
出てきたその人は、いや妖怪は猫又でした。
顔は本当に猫でスラッと2本足で立っていた。
その猫又がシャオとの話をやめ、私をじっと見てきた。
「おやおや、珍しい者を連れてきたじゃないかい。この娘、どうしたんだい?」
「新しい契約者だよ。あと、今日はここで休ませてもらいたいんだけどいいかな?」
「そりゃ、もちろん大丈夫さ。あたしはちょっと出かけてくるから、好きに使ってもらって構わないよ」
「本当ですか! ありがとうございます! 私、滝田 ことねと言います」
「あぁ、よろしくね」
よかった、これで野宿しないですむ。
私がほっとしていると、猫又がシャオに近づく。
「今度の契約者は長続きするといいんだがね……」
ぼそっと呟いて猫又は離れて、また笑顔で去っていく。
「じゃぁ、ことね。とりあえず中に入ろうか」
「そうだね。私、すごく疲れたよー」
「今は少しでも休んでいた方がいい。夜になればまた動かないといけないからね」
「えーっ! だってもうすぐ夜じゃない」
「だから休んでおくんだよ。大丈夫、時間になったら起こしてあげるから」
「じゃぁ、ちょっとおやすみー……」
それから、私はすぐに横になって寝た。だってすごく眠かったんだもん。
どれくらい寝たかわからないけど、頬に何か当たった気がしたので目を開けると、すごい近くにシャオがいた。
「うわぁー! シャオ、驚かせないでよ!」
「ことねが何回呼んでも起きないからだよ」
「あー……心臓に悪かった。だって、疲れていたんだもの」
「まぁ、いいや。ほら、見回りに行くよ」
「見回り?」
「邪鬼が出るって話をしただろう。それが出るのがいつも夜中なんだ。だから見回りに行くんだよ」
「え、もしかしてそれを退治するの?」
「そうだよ。大丈夫、四神もいるから安心してね」
シャオはそう言うけど、なんだか心がざわざわする。これは一体なんだろう。