03 ハズレ
「じゃ、じゃぁ一応紹介しておくね」
シャオはセイリュウたちの所に飛んでいく。
「右から無口で無愛想なのがセイリュウ、隣のマッチョで暑苦しいのがビャッコ」
私は前の2人がシャオを睨んだのがわかった。シャオは気づいているのかわからないが紹介を続ける。
「あと、けっこう上から目線で言ってくるのがスザク、そして横の小さい子どもがゲンブだよ」
後の2人もシャオを睨んでいた。うん、なんか悪意のある紹介だったもんね。
私は苦笑いを浮かべた。しかし、全員がこちらを向いたので、私は急いで立ち上がり自己紹介をした。
「えっと、はじめまして。滝田 ことねです。さっきはいきなり逃げてごめんなさい。よろしくお願いします」
私は謝罪の言葉を言って頭を下げた。そして、もう一度4人の方を向く。
4人ともお互い顔を見合わせていた。すると、スザクがちらっと私を見る。
「まぁ、悪いと思っているなら別にいいわよ」
「あ、ありがとうございます……」
さっきゲンブの歳が500くらいだと言っていたので、多分他の3人もだいぶ年上なのだろう。言葉遣いを間違えればまた機嫌を悪くしてしまう。
「あ、そうだシャオ」
「なんだい?」
よかった。シャオは普通にしゃべっても問題ないようだ。
「私がここに来る前に声が聞こえたんだけど、あなただったの? それとも他の4人の誰か?」
私の問いに、シャオは首を傾げた。
「さぁ、知らないな。君たちはどうだい?」
「そんな小娘、呼ぶ訳がないだろう」
「ちなみに嬢ちゃんは何か霊感とかあるのか?」
セイリュウはぼそっと呟き、ビャッコが問いかけてくる。
「いえ、生まれて今日まで霊とか見たことありません」
「じゃぁ、特技とかないのかい? ほら、弓とか刀とか」
「そんなの、やったことないよ……」
シャオは私の周りをパタパタしながら聞いてきた。なんか、申し訳ない気分になってきた。
「ねぇ、今回の契約者はハズレなんじゃないのかい?」
「そうだね。何も出来ないみたいだし」
スザクとゲンブが、こちらにもわかるようにため息をついた。いや、そんなわかりやすくしないでよ。
私は涙が出そうになった。
「呼んでしまったものは仕方ないだろう。とりあえず、この世界の状況を説明しておこうよ」
「説明?」
「そうだよ。ずい分前から邪鬼という化け物が出るようになってね、君にはその退治を手伝ってほしいんだ」
「でも、私には退治出来るような力なんて持ってないよ?」
「うーん、でもこちらに来れたということは、何かしらの力があると思うんだけどなー」
「そんなあいまいな……」
私ががっくりしていると、今まであまりしゃべらなかったセイリュウが口を開く。
「ここでしゃべっていてもラチがあかないだろ。俺たちは一旦姿を消す。何かあれば呼べばいい」
セイリュウがそう言うと、4人とも光になって、私の手首にブレスレットみたいになった。
4つの球がキラキラ光っている。
「へぇー。こんなのにもなれるんだね」
「まぁ四神は基本、人の前に現れないからね」
「そういうものなの?」
「ここで話してても先に進まないから、とりあえずこの山を下りようか」
「えっ、ここ山だったの?!」
「そうだよ。小さな山だけどね。安心して。ことねが転げ落ちた所より、安全な道を進むから」
なんか、いちいち気にするようなこと言うんだよな。
私がため息をついていると、シャオが道を教えてくれる。
確かにさっきよりは急じゃないけど、それでも山を下りるのには苦労した。
「はぁ……はぁ……つ、疲れた……」
私はやっと山を下りることができたけれど、疲労感はハンパじゃなかった。
「だらしないな。もう少し体力をつけた方がいいんじゃないのかい?」
「シャオは飛んでいるからいいじゃない! こっちは歩きなのよ!」
山を下りた後は、ずっと1本道だったので迷うことはなかったけど、もう日が暮れてしまった。
「もう少し行けば、町が見えてくるよ」
「よかったー。じゃぁ、そこで休ませてもらおう」