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16 ゲンブとの話し合い

 猫又は、ふぅーと息を吐き、落ちこんでいる私を見る。。

「ことね、ずっと落ちこんでいても仕方ないだろう」

「でも、私たちがもう少し早く行っていれば、助かった人もいたかもしれないんです」

 私が膝を抱えて俯いていると、シャオが心配そうに周りをパタパタ飛ぶ。

「君たちが早く行ってもいなくても、結果は変わらないと思うよ」

 ゲンブは淡々とそう言った。私は何も言えずさらに落ちこんだ。

「でも、」

 ゲンブは湯のみを置いて私を見る。

「スザクも言っていた通り、救われた者もいると思うよ」

 ゲンブの言葉に私は顔を上げる。

「そうだね。ことねはよくやったよ」

 頷く猫又の言葉に、私はうれしい気持ちになった。

「ふふっ。ちょっとは元気になったみたいだね。じゃぁ、ことねが元気になったから、あたしはちょっと出かけてこようかね」

 猫又はパンッと手を叩いて立ち上がった。

「あ、あの、ご心配をおかけしました!」

「なーに、気にすることないよ。じゃぁ、後は若い2人にしておこうかね」

 え、若い2人って、私とゲンブのこと?!

 私は驚いてゲンブを見たが、ゲンブは静かにお茶を飲んでいた。

 さすが500歳はこえているな。全く動じていない。

 猫又が出ていった後、ゲンブが湯のみを置いて私を見る。

「さて、なら若い2人、話でもしようか」

 あ、やっぱり気にしていたのね。表情が変わらないからわからなかったよ。

 シャオを見ると、笑いをこらえているのかにやけていた。

「話というのは、邪鬼じゃきのことだ」

「でも、邪鬼は負の感情から生まれるんですよね」

「そう。人だけでなく、あやかしや神からも生まれる。そして、生んだ者の生命力を奪いながらその力を使うんだ」

「生命力を奪う?」

 そうか、だから皆顔色が悪かったのか。私は今までのことを思いだす。

「そうだよ。心当たりがあるんじゃないかい?」

「はい。じゃぁ、あの糸がその人の力を奪っていたということですね」

「あぁ、君にだけ見える糸だね。なんで君だけ見えるのかは不思議だけど」

「それに、邪鬼が現れる前に、その人の後ろに黒い影が見えました」

「もしかしたら、それが予兆なのかもね」

「あと、姿も様々でした。すっごく大きかったり、素早かったり、腕が4本あったりしましたから」

「それも、生んだ者の感情の大きさに比例するんだろう」

「なるほど……」

「まぁ、最後のは人を喰ったことも関係あると思うけどね」

 それを言われて私は黙ってしまう。

「ことね、大丈夫だよ。ゲンブはことねを傷つけるために言っているんじゃないんだから」

「う、うん、平気。大丈夫だよ」

「じゃぁ、話を続けようか」

 ゲンブは私の様子を確認して話を続ける。

「最近、邪鬼の出現が多い。それだけ、負の感情が渦巻いているということだ」

「私、もうこれ以上誰かが悲しんだり傷ついたりしないようにしたいです!」

 私の決意にゲンブは頷いた。そして私に問いかけてくる。

「ならば、そのためにはどうしたらいいと思う?」

 そう言われて、私は腕を組んでしばらく考えこんだ。そしてはっとひらめく。

「多分、邪鬼が生まれるのには元凶があると思うんです。この前の村の村長さんの家の周りに黒いモヤがかかっていました」

「黒いモヤ?」

「はい。もしかしたら、それに触れると負の感情に反応して邪鬼が生まれるんじゃないでしょうか」

「ほぅ……そんなことまで考えたか」

「あ、すみません。考えすぎでしょうか」

「いいや。いい線はいっているんじゃないかな。そして、君はどうする?」

 ゲンブはもう一度私に問いかけてくる。

 あの黒いモヤが何なのかわからない。だけど、ほっとくわけにはいかない。

 私は強いまなざしでゲンブを見る。

「私はその元凶を探します。そして、元凶を失くして皆が安心して過ごせるようにしたいです!」

 私の言葉にゲンブは微笑んだ。あれ、ちょっと可愛い。

 ゲンブの微笑みにちょっとときめいた私は、頭を振ってにやける顔を元に戻す。

「なら、僕たちも協力するよ。君はスザクと空から探してほしい」

「わかりました!」

「じゃぁ、今日は明日に備えて早く寝ようね」

「そうだけど、やっぱり見回りはちゃんとしたいからその後でね」

「ことね殿、あまり張り切り過ぎないようにしなよ」

「は、はーい。気をつけます」

 ゲンブに呆れられたが、私は少し距離が縮まったように思えてうれしかった。


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