11 見直したぜ
私は刀を支えに、よろよろと立ち上がる。
「ビャッコ……寝てないで助けてよ……」
しぼりだしたその声は、林の中に消えていった。
ビャッコを見ると、またあの糸が見えた。
「えっ、ビャッコから糸が生えてる?」
私は目でその糸の先を探ると、邪鬼の頭の方に伸びていた。
「まさか、ビャッコからあの邪鬼が生まれたの?!」
それよりも、早く糸を切らないと!
私がビャッコに近づこうとすると、邪鬼が前に立ちふさがった。
「そこをどきなさい!」
私は持っていた刀を邪鬼に突き刺す。すると、頭の中にまた声が響いた。
「おぅ、嬢ちゃんやるじゃねぇか。気分がいいから力貸してやるよ。ちょっと体を貸せ」
「え、またあの声? あなたは誰なの」
誰なのか聞く前に、私の意識はぼんやりしてきた。
「さぁ、覚悟しろよ……」
私の体は素早く地面を蹴り、突き刺していた刀は抜かずそのまま上に切り裂いた。
「があぁーっ!」
攻撃がきいたのか、邪鬼は悲鳴を上げる。
上に飛び上がった私の体は、刀を持ち直し伸びていた糸を切る。
すると、邪鬼がさっきよりも小さくなった。と言っても、私よりは大きいのだが。
「さぁ、嬢ちゃん。後は頼んだぜ……」
頭の中の声は消え、私の意識がはっきりしてくる。
「あれ? 私どうしちゃったの……」
私は考えたが、今の状況を思い出し頭を振った。
そして、後ろに倒れているビャッコがいたので体をゆすった。
「あ、さっきまで見えていた糸が無くなってる。お願い、起きてビャッコ!」
「うぅ……俺は一体……」
「よかった、目が覚めたんですね! 顔色も良くなってきたし」
ビャッコは片手で頭を押さえていたが、目の前にいる邪鬼に驚いた。
「なんで邪鬼がこんな所にいるんだよ! さっきまで何もいなかったのに」
「話は後です。早くあの邪鬼をなんとかしないと!」
ビャッコは状況がのみこめていなかったが、すぐに戦闘態勢に入った。
「ここからは俺に任せろ!」
ビャッコは一気に駆け出し、邪鬼に打撃を何度も入れる。
「すごい……あの邪鬼が防ぐので精一杯みたいだ」
「はあぁっ!」
最後の一撃を入れると、邪鬼は勢いよく吹き飛ばされた。
「ぐうぅー……」
それでもなんとか立ち上がる邪鬼に、ビャッコは自身の体に力をこめる。
「これで終わらせるぜ! 切り裂け、虎軍烈爪!」
ビャッコの前に巨大な虎が現れて、邪鬼の方へ向かって巨大な爪で切り裂いた。
3つに裂かれた邪鬼はぼろぼろになって灰と化した。
「ふぅー。なんとか終わったぜ」
「はぁー……もう動けない」
「ことねー! 大丈夫かい!」
全てが終わったところで、シャオがセイリュウを連れてきた。
「なんだ、邪鬼はいないじゃないか」
「遅かったな。今倒しちまったぜ」
「それより、なんでことねは座りこんでいるんだ?」
私は今までのことを皆に話した。ビャッコは話の内容に驚いていた。
「まさか俺から邪鬼が生まれるなんて驚きだぜ……」
「邪鬼は人や妖怪だけでなく、神からも生まれるということか」
「そこに、負の感情があれば現れるってことなのかもね」
すると、セイリュウがちらっとビャッコを見る。
「貴様に負の感情が生まれたのには理由があるんだろ?」
それを言われて、ビャッコはぎくっとする。
「だって、お嬢がなかなか上達しないからいらだってよー……」
「その怒りが原因だな」
「ご、ごめんなさい! 私がうまく出来なくて……」
「いや、俺ももう少し辛抱して教えればよかったな」
ビャッコは私に近づき、頭を2回優しく叩いた。
「俺が倒れている間、お嬢1人で戦ったんだろ? なかなか出来るもんじゃないぜ」
言われて私は涙があふれそうになった。
「こ、怖かったですー……」
「よしよし。ほら、おぶってやるから背中に乗りな」
「え、でも……」
「今は従っておけ。体中傷だらけではないか」
セイリュウに言われて私は自分の体を見る。確かに、あちこち傷だらけだった。
「ど、どうしよう……今になって痛みが……」
「だから、おぶってやるって言っただろ? ほら、早く乗れ」
私はよろよろしながら、ビャッコの背中に乗った。すごく大きくて安心する。
「ビャッコ、昼間はごめんなさい。言い過ぎました……」
「俺も悪かった、言い過ぎたよ。お嬢もやれば出来るんだな。見直したぜ」
そう言われて、私は少し恥ずかしくなった。
なので、ビャッコの背中に顔をうずめる。うれしくてたまらない。
やっと認めてもらえたことに、私はうれしくて微笑んだ。
それから猫又の家に着いたら、スザクやゲンブに嫌味を言われたのは言うまでもない。




