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性欲無斬-後半-

リナの訃報を受け混乱する教室


「そんな……」


「リナ……」


「やっぱ例のカッター女の……」


「エロいの読んでる奴が狙われるっていうあれか」


ヒソヒソする教室


「ほら女子!お前らも見てたんじゃん!!」


「ちょ、やめてよ!人死んでんだよ?!」


男子達がカッター女の噂をダシに女子達にマウントをかける


「ミユ、顔色悪いよ

あの子と一番仲良かったもんね… 」


「う、うん……」


リナと仲良くしていた腐女子仲間の一人

ミユは青い顔をしていた


「(どうしよう……リナも殺されるなんて

エロいの見たくらいで……、どうして?

男子の悪口言ったから…?)」


ミユは気遣いとは全く別の事を考え

恐怖に震えていた


「まぁ私らエロいのとか興味ないから

狙われる事ないし、大丈夫だと思うけど

ミユ体悪くしないでね」


「あ、ありがとう」


ーー次の日、ミユのバラバラ死体が発見されたという報が入る


「そんな…ミユまで…どうして?

私ら清純派だって言ってたのに……」


腐女子仲間のカナは困惑した表情を浮かべている



ーーーー


廊下で女性教師と男性教師の二人が

例の事件について話をしていた


「最近、生徒が殺人鬼に惨殺される事件が相次いでいますね……」


「私怖いです…先生…」


「どうも噂程度ですが、生徒の間では

性的なものに興味を持った子が狙われる対象になるみたいですが……」


「年頃の子なら、そういうのに興味を持つのは普通の事ですよ……殺されるなんて理不尽です」


「そ、そうですよね」


「シバ先生、もし私が襲われたら、

私を守ってくれますか?」


「は、はい!もちろんですよ!」


女性教師の前で得意げに振る舞う男性教師

その日の夜、車の中で裸になる二人の男女がいた


「いいのかい?教育者がこんな事して」


「平気、学校では清純系で上手く振る舞ってるから」


「でも男とか寄ってくるでしょ?」


「あぁ、シバ先生のこと?あんないい歳して恋人もできた事のない人なんかどうでもいいわ

私が好きなのはあなたのように凛々(りり)しくて(たくま)しくてオンナを(すみ)まで解ってくれてる人よ」


「ふふ、悪い女だな君は」


女は男の上に跨り、ユサユサと上下に動き甘い声を出す


「あ、あん…あ…ぐぇっ……」


「あ、あ、、ん?どうした?」


男が女に声をかけ、少し体をゆすると

ズルッと腰から上が落ちてきた


「う、うわああっっ!!!」


叫ぶ男の方へ鋭い刃を突き立てる黒い影



ーー次の日、女性教師が死亡したという報が入り、男性教師が青い顔をしながら辿々しく報告をする


「二人は車の中に全裸の状態で発見されたらしい」


「そ、それって……」


「ギハタ先生、まさかとは思ってたけどやっぱり」


「噂は本当だったんだ」


「間男とカーセックス……」


「(セックスもダメなの!?)」


カナはその報を聞いて途端に恐怖する


学校中カッター女の話題で持ちきりになる中

ある噂が生徒の間でまことしやかに(ささや)かれていく


「ねぇ聞いた?」

「知ってる知ってる」


「男は処女と、女は童貞とセックスすれば

殺されずに済むらしいよ」



「ーー山田くん、私とシよ!」


「え、俺と!?いいんすか!?」


「谷口くん、私と!!」


「喜んで!!」


噂が広まった途端

女子達が積極的に男子を誘うようになる


「ミコシバ!お前童貞だろ!?」


「え!?」


廊下で男子生徒に声をかけるカナ


「お前みたいな奴に彼女なんて出来るわけねーし!今すぐ私とヤレよ!!」


「あの噂、本気にしてるんですか……?」


「いいから!私とヤレって!!ここで!!」


「こ、ここで!?無茶言わないでください……」


「シタいんだろお前!女子の足とか胸とかチラチラ見てんだろ知ってんだぞこっちは!!」


カナは必死な顔で男子生徒に詰め寄る


「女子みんなキモがってんだよお前みたいな奴!

でも今はヤラせてやるって言ってんだ!!」


「そ、そんなこと言う人となんか……し、したくありません……」


「うるせぇ!テメェに拒否権ねーんだよ!!

お前どうせ家でエロ動画見て毎日シコってんだろ!?

真面目な面してんじゃねーんだよキモオタが!!」


「ぼ、僕授業に戻ります……」


「待てよオイ!!今ここでヤンなきゃ、お前一生童貞だぞ!!オイ!!……!!」


カナの声がどんどん遠のいていく


その後、カナは何者かに斬り殺され

無惨な状態で発見された


「あの子死んじゃったみたい」


「何で殺されちゃったんだろ」


「20代の彼氏がいたらしいよ、好みのタイプだったんだって」


「へぇ……」


「エッチな人はみんな殺されちゃうんだって」


「そっか、あの噂はホントだったんだ」


「私達これで助かるね」


「うん、そうだね」


「童貞で良かった」

「処女で良かった」


互いの体に触れ合い、キスをする二人の背後に黒い影が現れ

次の日、公園で首のない男女の死体が発見される


「童貞でも斬られる、処女でも斬られる……」


「俺たちどうしたらいいんだ……」

「私たちどうすればいいの……」


次は自分の番かもしれない

男子と女子、それぞれが不安を抱えるようになったーー



薄暗い闇の中、少女の声が響く


『ーー私は……性欲のない自分を誇りに思って生きてきた』


少女の目には

エロ本や動画をニヤニヤとしながら漁る男たちが映った


『性欲がある男はクズで情けなくて、だから性的な物に興味を持たない女の方が偉いんだと、私は女である自分を誇りに思って生きてきた……だけど』


少女の目には

過激なBL本や裸体の男の写真集をニヤニヤとしながら見ている同級生達が映った


『ーー女としての栄誉をズタズタにされた気分だった』


少女はハサミで同級生の股付近を滅多刺しにした


「だからほら……」


少女は自身の服とスカートに手をかけ

スルスルと(まく)りあげた


「私はもう、男でも女でもない……」


少女は自身の体を見せつけてきた

黒い糸でまばらに縫われた性器、

胸はわずかな膨らみがあり、あとはバッサリとカットしたような状態


「ケガれたものは全て削ぎ落とした」


「そしてお前も……」


少女の声が(かす)れた声に変わっていく


「コノ世ノケガレタモノ全テ排除スル」


そう言って金属の板を振り下ろす女



ーーーー


ーーアスファルトの道を静かに歩く少女


『この惨劇で分かったことはーー』


『エロいものに興味を持たない事

エロいものを視界に入れない事

エロいものに興奮しない事

セックスしない事、子供を産まない事、、

それが殺されないための必要条件』


少女は口をつぐみ、ギュッと胸に過激なBL本を抱き抱える


「ーーでも、好きなものは好き……」


静かな街中で

金属音と何かがちぎれる音が響いたーーー



性欲無斬-後半-(完)

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