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87、Dランク。

「ジャイアントエアスネーク討伐会議に大勢の冒険者が集まってくれて、冒険者ギルドのギルド長として感謝する」


 ギルド長は軽く頭を下げると、全員の顔をじっくりと眺めながら再び話し始める。


「ジャイアントエアスネークに襲われた町は捨てるしかない、この言葉は今迄は当然の様に使われていた言葉であり、それに異を唱える人も少なかっただろう。実際にジャイアントエアスネークを倒したという話を、俺は聞いたこともないからだ」


 ギルド長のザイムは、両手をテーブルの上に置いたまま話を続ける。


「だが今回こそは、ジャイアントエアスネークを倒せるかもしれない。いや、確実に倒せるだろう。なぜなら、今から紹介する者はあの超巨大な魔物『長巨大陸獣(グレートベヒモス)』を討伐した男だ」

「さっきの人だな、俺も見たが、あれは凄すぎだ!」

「あぁ、俺も見たが、あんな巨大な生物は見たことない!」

「あれが倒せるなら、ジャイアントエアスネークも倒せるかもしれない」

「いや、確実に倒せるだろ!」

「だが、ジャイアントエアスネークの方が動きは速いから、分からんぞ…… 」

「それでも、彼がいるなら戦うべきだ!」

「「「「そうだ! そうだ!」」」」


 ギルド長の言葉が終わるや否や、各席に座る冒険者達から怒声とも思える叫び声が会場を飲み込んでいく。


 彼らの瞳には希望の光が輝いていて、今迄絶望の中で我慢してた思いがここに来て爆発したように歓声をあげる。


 中には戸惑っている人もいるが、多くは俺が巨大亀をアイテムボックスから取り出した瞬間を見ており、彼らは(こぞ)って歓声を上げた。


「それでだ、今回の作戦の要でもある男、大翔から作戦の概要を聞きたいと思う…… 」

「ちょっと待ってくれ、その前に聞きたいことがある」


 ギルド長の話を遮るようにしながら、一人の体躯の良い男が立ち上がり話始める。


「その作戦次第では俺達の命を預けるんだから、せめて彼の冒険者ランクだけでも教えてほしい。俺は広場で何が起こったのか分からないし、俺と同じように広場に居なかった人もいると思うから是非教えてほしい」

「それもそうだな。大翔、ギルドカードは持っているのか?」

「あぁ、持ってるよ。これで良いか?」


 俺はギルド長にカードを渡した。


 ギルド長は俺のカードを受け取り確認すると、なぜか渋い顔をする。


 その瞬間を先程の男が見逃さなかったらしく、更に声を張り上げてギルド長に追及する。


「ギルド長、早く教えてください!」

「あぁ、分かった。大翔の冒険者ランクは、ーーーDランクだ」

「Dランクだと、そんなランクではジャイアントエアスネークとはとても戦えないぞ!」

「えぇ、Dランクだと、そりゃ何かの間違いだろ!」

「そうだ、あんな巨大な魔物を倒せるのにDランクなわけないよな」

「「「「間違いだろ、そんなわけないだろ」」」」


 再び会議場を怒声のような大声が響き渡り、最初は互いに言い合いを始めていたが、やがて彼らの視線は俺に集中してくる。


「大翔、君はDランクなのに『長巨大陸獣(グレートベヒモス)』を倒したと言うのか?」

「あぁ、そうだ。ギルドカードがDランクなのには理由(わけ)がある」

「その理由(わけ)とは?」

「ギルドカードのCランク以上になるには、盗賊の討伐依頼や要人の護衛依頼を(こな)さなければならないが、俺は魔物討伐専門であって、その両方とも依頼を受けたことが無いからだ」


 俺の能力は対人戦よりも、対魔物戦の方が向いている。今なら銃器が使えるので対人戦でもある程度成果を上げることができるが、やはり人を殺すのには若干の抵抗を感じるし、それに盗賊の討伐依頼や要人の護衛依頼は、ハッキリ言って金にならないからやりたくない。


 その点から言えば、俺はラノベの主人公とは全く違うのかもしれない。


 ラノベの主人公と言えば、要人の護衛依頼の合間に盗賊退治が良くある話だからな。


「なるほど、それでDランクと言うわけか。なぜ盗賊の討伐依頼や要人の護衛依頼を受けなかったのか、聞いても良いかな?」

「別に大した理由ではないですよ、たんに金にならないからです」

「金! 金だと。そんな理由で、依頼を受けなかったのか?」

「普通に考えて魔物の買取価格の方が圧倒的に儲かるのに、なぜ時間が掛かる割に儲からない盗賊の討伐依頼や、要人の護衛依頼を受ける必要がある?」

「大翔は金儲けだけで冒険者をしているのか?」

「そうだけど、それだとマズいのか?」

「いや、別にマズくはないが、それだとランクが上がらないから何かと困るんじゃないか?」

「別に困る事なんてないでしょ。そもそもランクが上がっても魔物の買取価格が変わるわけないから、俺的には問題ない」


 ラノベとかで良くある話に、冒険者ギルドが魔物にランクを付けて更に冒険者にもランクを付けて、互いのランクが同レベルではないと依頼を受けられないという話があるが、この世界にはそんなのはない。


 魔物の森では弱い魔物も強い魔物も等しく存在していて、この森には弱い魔物しか存在しないという事は無い。


 よって冒険者が魔物と出会うのは運であって、運が良ければ弱い魔物と出会い運が悪ければ強い魔物と出会う。


 魔物同士が争わないから、つまり魔物が食事を取らないから、その様な妙な生態系ができてしまったと思われる。


「だが冒険者のレベルが上がれば、貴族からの依頼も受けられるから、楽して大金を得る機会も増えるはずだ。勿体ないと思わないかね?」

「その事を考慮に入れても、やはり魔物討伐の方が金になると思うけどね」

「そうなのか? 魔物討伐は命懸けだと思うが、違うのか?」

「他の人にはそうかもしれませんが、俺には魔物討伐の方が楽に儲かるってだけですから、これからもランクには拘ることはないです」


 貴族からの依頼って余計に面倒な依頼じゃないですか、そんな依頼はこっちから断りたい話だ。


「貴方の話は信じられない! 自分に都合の良いように話しているのではないですか?」


 突然ギルド長と俺との会話に、先程のランクを聞いてきた男が割って入ってきた。


「冒険者の強さはランクで示されており、Dランクに『長巨大陸獣(グレートベヒモス)』を倒せるとは思えないし、ジャイアントエアスネークも倒せるとは思えない!」


 俺を信じられないと言う男の言葉に、ガヤガヤと周りの冒険者が騒ぎ始める。


 冒険者らに俺に対する疑念が生まれ始めたところで、その疑念を吹き飛ばす言葉を俺は告げる「そんなに俺の力が信用できないなら、俺と戦ってみるか?」と。


 あくまでも上から目線で、生意気な態度を前面に出しながら挑発する。


「俺はBランクだぞ、お前など相手になる…… 」


 その言葉が終わる前に、俺は彼の背後にテレポートすると、彼を連れて上空百メートルにテレポートする。


 一瞬で景色が変わったことに男が驚愕の表情を見せるが、そんなことは俺の知った事ではない。


 勿論勝負を挑んだのは俺だが、だからと言って勝負に時間を掛けようとは思わない。


 完全にフライングだが、その事を差し引いても納得してもらえると思ったからだ。


「はい、これで俺の勝ちね」

「えっ、ちょっと待て!」


 焦る男の話など聞かずに、俺は男を解放してあげた。


「うわああぁぁぁぁー-----」


 解放された男は当然地面に向かって突っ込んでいくが、その途中で男の傍にテレポートした俺は、直ぐに会議室のテーブルの上にテレポートする。


「うわぁぁあああー-----」

「大丈夫ですよ、ここは先程の作戦本部ですから安心してください」


 百メートルの上空から地面に落とされた男は、作戦本部のテーブルにテレポートした後も悲鳴を上げ続け、その状況を目の当たりにした他の冒険者達は言葉を亡くした。


 消えたり現れたりしたら、そりゃ言葉も無くすか。


「えっ、こ、こ、ここは、作戦本部か…… 」

「だから、そう言ってるじゃないですか」

「あ、そ、そっか」

「先程の勝負は、俺のフライングですから、もう一度勝負しますか?」

「い、いや、良い! お、俺の負けで良い!」

「なら、俺がジャイアントエアスネークと戦う事に賛成しますか?」

「も、勿論だ! 賛成するに決まっている! 反対などしないから、もう勝負はしないでくれ」


 怯えた顔で懇願する男と、それを見てたリリが一言口にした。


「やりすぎ!」と。


仕事と私生活が忙しくなってしまい、現状だと自分なりに納得できる作品にはならないと思ったので、暫く休んだのちに週に2~3のペースで投稿したいと思います。


毎日投稿を楽しみにしていた方には申し訳ないですが、ご了承ください。

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