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79、面倒な話。

 リリの誕生日から早くも一週間が過ぎて、現在俺はリリと一緒にギルバート様の屋敷に来ており、彼の執務室でエリザベート様を交えながら、テーブルを挟んで鉄鉱石の話し合いをしている。


 ゴーダの森の地下で開始された石炭の発掘作業は、順調に行われていて今のところ問題はない


 空調設備や照明等の設備も無事取り付けられ、安全対策には万全を期しているつもりだ。


 懐中電灯型アイテムボックスは、採掘と同時に結合のスキルを使用することで、壁や天井等をコンクリート以上に補強しながら進んでいくので、柱を作りながら進んでいけば崩落事故が起こる可能性は少ない。


 そのうえ重機やはつり機、ダイナマイト等で壁を破壊しながら掘り進むわけではないので、埃が一切出ないので空気を汚すこともない。


 更に作業は大きな力を必要としないため、女性や子供でも作業できることが大きな利点と言えよう。


 特にお爺ちゃん達が喜んで作業に参加していて、新しい作業場を提供してくれたと喜んでいた。


 ある程度作業が進めば空調や照明設備の取り付けを行うため、その間の二日間は休日となるが、そのお陰で週休二日制がすんなり取り入れられた。


 空調や照明設備の取り付け作業も、麗華さん達が日本から専門職の人を呼び寄せて作業を行うようにしているので問題はない。


 懸念していた魔物の出現だが、不思議な事に今のところ一切出てこない。


 もしかしたら魔物が出現するのは地上の森だけなのか、それともアイテムボックスの結合スキルを使った地下空間には、魔物が出現しないのか良く分からないが、今のところ魔物は出てこない。


 勿論、この先魔物が出てくる可能性はあるので、用心するに越したことはない。そのため地下空間には、至る所に脱出用の設置型テレポートが設置されている。


 鉄製品を作るための石炭の確保は取り敢えずできたので、次はいよいよ鉄鉱石の採掘に取り掛からなければならない。


「鉄鉱石の採掘権の事だが、なかなかリンドバーグ伯爵が良い返事をしなくて困っている」

「やはり難しいですか。それなら辺境伯領に埋まっている鉄鉱石だけでも、採掘できませんか? リンドバーグ伯爵領の鉄鉱石を採掘しなければ、俺は問題ないと思いますけど」

「私もそうしたいが、リンドバーグ伯爵との余計な軋轢は作りたいくない」


 リンドバーグ伯爵との軋轢とは、鉄鉱石がの鉱脈が二つの領地に跨って存在した場合、それが地上での採掘ならば採掘状況が見えるので問題ないが、地下での採掘になると間違って相手の領地まで採掘してしまう可能性がある問題だ。


 王国ではその問題を解決するために、採掘されてない側が採掘している側に、自領地だけで採掘してる事を証明してくれと命令できる権利を与えている。


 この権利を、採掘範囲証明法と言う。


 つまり採掘している側は命令されると、自領地だけを採掘していると証明しなければならないが、それを異世界の技術で厳密に証明することは事実上困難だ。


 なぜ困難かと言えば、採掘する側がどれだけ正確に掘った距離を証明しても、採掘された側は「隠れて掘ってるだろ」と難癖を幾らでも付けられるからだ。


 よって、証明は不可能と言える。


「仮に勝手に採掘をしたとして、それをリンドバーグ伯爵様から、辺境伯領内だけで行われている採掘だと証明しなさいと命令され、証明できなかった場合どうなるのですか?」

「法律だと、採掘した事により売り上げた利益の七割を、国に収めないといけないはずだ」

「えっ、なぜ国に?」

「いったん国に利益の七割を収めさせ、その中から手数料として国が半分を取り、残りの半分を採掘された側が受け取る事になる」

「えっ、国に半分の手数料? それって、何もしないで国が儲かる仕組みじゃないですか?」

「仰る通りです。お互いの領地が揉める原因を作り、それを利用して国が設けるシステムとも言えます」


 最後はエリザベート様が、溜息を吐きながら説明してくれた。


 しかし、考えたらこの法律は国にとっては上手くできた法律で、証明できない難題を与えることにより、勝手に採掘できなくすることにして、領地が力を蓄えることを不可能としている。


 更に勝手に採掘しても、国は必ず利益を得ることになるので問題はない。


 命令するだけで利益が出るなら、採掘された側は必ず命令するからだ。


 江戸時代の日本でも、各地の領主が力を蓄えられないように参勤交代が行われていたが、やり方は違うが考え方は似たようなものだろう。


「それでリンドバーグ伯爵は、何か条件みたいなものを仰りましたか?」

「それだが、利益の五割をくれと言ってきた」

「五割ですか! 無茶苦茶ですねぇ」

「滅茶苦茶な話だが、黙って採掘して見つかったら七割も取られるんだから、その事を踏まえての五割だと思うよ」

「なるほどね、ところで採掘している事がバレなくても、採掘範囲証明法は適用されるのですか?」

「えっ、それって…… 」


 採掘してる事がリンドバーグ伯爵様に見つからなければ、採掘範囲証明法は適用されないはずだ。


 別にリンドバーグ伯爵内の鉄鉱石も採掘しようとは思わないが、何もしないで五割の利益を得ようとするリンドバーグ伯爵様にも腹が立つ。


「新しく鉄鉱石の鉱脈が見つかったことにすれば、問題ないのでは?」

「そんな簡単にはいかないだろ」

「今現在ゴーダの森の地下で石炭の採掘作業を行ってますが、採掘作業に気付いている人いるのでしょか?」

「それならば、誰も気づかないと思うが、まさか鉄鉱石でもそのように採掘するつもりか?」

「勿論、リンドバーグ伯爵領の鉄鉱石は採掘しません。ですが、辺境伯領内の鉄鉱石を採掘するならば問題ないと思います」

「それはそうだが、誰かの軽口で見つかる可能性だってあります」

「だからこそ、新しい鉄鉱石の鉱脈が見つかった事にするのです」


 確かに作業を行う人からバレる可能性は大いにあるが、作業を行う人が新しい鉄鉱石の鉱脈だと信じていれば問題ないはずだ。


「採掘現場までの移動はカインの街からテレポートで行うので、どこで採掘しているのか作業員には知りようがありません。よって新しい鉱脈だと伝えれば、誰でも信じると思いますよ」

「確かに大翔の能力ならば、それも可能になると思うが…… 」

「辺境伯領で作られた鉄製品の販売ルートの多くは、ドリッシュ帝国を含む国外を考えていますので、そんなに問題にはならないのと思います」

「なるほど…… だが…… 」

「それに見つかっても、お金を払えば良いだけで命を奪われることもありません。更に辺境伯領内に新しい鉱脈が見つかったとなれば、今度はリンドバーグ伯爵様から声を掛けてくるのではないですか?」


 鉄製品の多くを国外で販売するとはいえ、多少は国内にも販売することになるから、リンドバーグ伯爵様にも辺境伯領内で鉄製品を製造していることは知れ渡るだろう。


 領民の口から洩れる可能性だってあるしな。


 だが、新しい鉱脈発見されたとなれば、何もしないで五割もの利益を得ようとしたリンドバーグ伯爵様が、大人しくしているとは思えない。


 しかしリンドバーグ伯爵様自身が採掘を行うとなれば、今度はギルバート様から五割の採掘権を請求されると考えるはずなので、自ら採掘を行うことは有り得ない。


 となると、自然と採掘権の値を下げてくるだろう。


 まっ、それが狙いだけどね。


「確かに、今度はリンドバーグ伯爵から声を掛けてくる可能性が大いにある。その場合の採掘権の値段は、適正価格となると思う。だが新しい鉱脈の場所をリンドバーグ伯爵に聞かれたときは、どう答えるつもりだ?」

「どこかの山に穴を掘り、穴の表面に鉄鉱石を貼り付ければ、新しい鉱脈の完成です」

「ぎ、偽装するつもりか?」

「えぇ、勿論です。偽装するしか方法はないと思いますので」

「簡単に言ってくれるが…… そっか、大翔の能力なら、それも可能なんだよな」

「勿論です」


 山の中にアイテムボックスでトンネルを掘り、トンネルの表面に分離して薄くなった鉄鉱石を貼り付けた後に、今度は表面を結合で固めたら偽装した鉱脈の完成だ。


 トンネルの表面をコンクリート以上の固さにすれば、まずバレることはないだろう。


「分かった、上手くやってくれ。責任は、私が取る」

「いえ、国にバレたときは、俺が支払います」

「いや、責任は私に取らせてくれ。国に見つかったときは、私も覚悟を決めるだけだ」

「覚悟ですか?」

「ああ、そうだ。国を守るために必死で戦い、多くの被害を出しながら敵を退けても褒美も与えず、それどころか食料の援助すらもない」

「………… 」

「もう良い加減に私も…… あっ、大翔は気にしないでくれ」

「………… 」


「ロンバード辺境伯領は、国に裏切られ見捨てられたのです」と、ガリック様が仰っていたが、そんな目に遭わされたギルバート様の気持ちを考えると、俺には言葉が出てこなかった。


 ギルバート様は、国のことは一切信用してないと思う。彼が考える事はいつも領民のことばかりで、領民のことを常に一番に考えている。


 そんなギルバート様が覚悟を決めるとは、いったいどんな……



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