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76、リリの過去。

 ★ ★ ★ リリ視線



 どうしよう! なぜか分からないけど、お兄ちゃんと、デ、デ、デ、デ、デ、デートすることになった。


 しかも、け、け、け、け、結婚式の予行演習で、お兄ちゃんと花嫁衣装を着て写真を取ることになったよ!


 う、う、嬉しいけど、どうしよう、どうしよう、どうしよう本当に結婚したら!


 ハァ、お兄ちゃん、大好き!



 ★ ★ ★



 これはリリとお兄ちゃんが、夜景の綺麗なレストランで食事をした後、キスをするまでの話。


 リリとお兄ちゃんの出会いは半年前に遡るけど、お兄ちゃんとの運命の出会いの話をする前に、少しだけリリの生い立ちを話さなければならない。


 リリが生まれた家はドーレムと言う村で、バスタアニア王国の東の方に在る小さな村だ。


 父さんと母さんが毎日畑仕事に行くのに、家はとても貧しくて、一日一回の食事さえも野草の入った水っぽいスープが殆どだった。


 上にはお兄ちゃんが二人いてお姉ちゃんが一人いたけど、ある日お姉ちゃんはお父さんに連れられて行ったきり帰ってこなかった。


 お姉ちゃんが居なくなってから暫くは、お兄ちゃん二人の食事は一日二回になったけど、リリの食事は変わらなかった。


 お父さんが「リリは小さくて役に立たないのに、スープが飲めるのはお兄ちゃん達のお陰だから、分かったらお兄ちゃん達に感謝してから飲め」と、毎日のように言われた。


 勿論、リリが役に立たないのは分かっていたから、リリは一日一回のスープをお兄ちゃん達に感謝してから飲んでいた。


 リリが十歳になったとお父さんに言われた年に、お母さんが病気で死んだ……


 お父さんが毎日のように家にいて泣き崩れていたので、一日一回のスープも二日に一回になった。


 リリはお腹が空くと、お母さんが教えてくれた野草を取ってきて、水に浸して食べていた。


 最初は凄く苦かったけど、そのうち苦い味もしなくなった。


 今考えれば、きっとお腹が空き過ぎて、味も分からなくなっていたと思う。


 やがてリリが十一歳になったと一番上のお兄ちゃんが教えてくれた年に、二番目のお兄ちゃんがお父さんに連れて行かれ、お姉ちゃんと同じように帰って来なかった。


 その時、一番上のお兄ちゃんが泣いていたけど、なんで泣いているのかリリには良く分からなかった。


 二番目のお兄ちゃんが居なくなってから、お父さんは全然仕事に行かなくなった。


 毎日家にいて気に喰わない事があると、リリを叩くようになった。


 スープも殆ど貰えなくなったけど、一番上のお兄ちゃんが二人で畑仕事に行く時に、こっそり飲ませてくれた。


 一番上のお兄ちゃんは優しくて、リリの事も可愛がってくれたけど、お父さんには逆らうことなど絶対にできなかった。


 勿論リリも、お父さんに逆らうなんて絶対に無理だった。


 相変わらずお父さんは家にいて仕事はしないけど、リリと一番上のお兄ちゃんが畑仕事をしたら、なんとか一日一回のスープを飲めるようになっていた。


 でも、一番上のお兄ちゃんが、リリも十二歳になるねと言われたと年に、お父さんがリリに美味しい物を沢山食べられる所があるから行こうと言われ、お父さんに付いて行ったら知らない男の人の馬車に乗せられていた。


 リリは、お父さんに奴隷として売られたんだと、知らない男の人が教えてくれた。


 凄く悲しかったけど、涙は出てこなかった。


 お姉ちゃんと二番目のお兄ちゃんも、きっと奴隷として売られたのかもと思っていたからだ。


 一番上のお兄ちゃんがお父さんに「どうして自分じゃなくて、あいつが奴隷にならないとダメなんだよ」って、お父さんに話していたのを聞いたことがあった。


 その時は良く分からなかったけど、暫くして奴隷の意味が分かって凄く怖くて、泣いて眠れなかった。


 だから今度は自分なんだって思っただけで、別にお父さんを恨んでもいなかった。


 ただ、一番上のお兄ちゃんが、リリを売ったお金で美味しい物を食べてくれたら良いなって、思っていた。


 リリが知らない男の馬車に乗ってから何日も何日も経った頃、突然馬車がひっくり返された。


 何が何だか分からなかったけど、知らない男の人が、大きな魔物に体を切り裂かれたり、嚙み千切られたりして、凄く大きな悲鳴をあげていたが、そのうち何も言わなくなった。


 リリは怖くて何もできなかったけど、きっと、もうすぐ死ぬんだなって思っていた。


 だけど、リリは死ななかった。お兄ちゃんが、魔物をあっという間に倒して、リリを助けてくれた。


 お兄ちゃんはリリを魔物から助けただけでなく、リリが奴隷だという証のチョーカーも外してくれた。


 そして「俺と一緒に来る?」と、ぶっきらぼうな言い方だったけど、お兄ちゃんは優しく笑ってくれた。


 それからは、夢のような生活だった。


 お兄ちゃんに連れて行かれた小さな部屋は、狭かったけど温かくて、お兄ちゃんが入れてくれたオレンジジュースも、作ってくれたカップ麺も信じられないくらい美味しかった。


 お兄ちゃんは、お風呂の入り方や、おトイレの入り方も教えてくれた。


 最初、あのお水のでるおトイレは慣れなかったけど、お風呂は温かい水が無限に出ていて、もしかしてお兄ちゃんはお貴族様かと本気で思ったくらいだ。


 お兄ちゃんは変な魔法も使えるようで、丸太を運ぶ仕事を一瞬で終わらせて大金を手に入れると、リリを買い物に連れて行ってくれた。


 リリも一つだけ魔法が使えるけど、お母さんとの約束で誰にも見せないようにしている。


 何故か、お父さんにも内緒にしなさいって言われていた。


 もし、リリの魔法がお母さん以外の人に知られたら、一生牢屋のような部屋に閉じ込められ、死ぬまで出られないと何度も言われたからだ。


 あの時のお母さんは、凄く怖い顔をしていたから未だに約束は守っている。


 古着など一つも置いてないお店で、値段も恐ろしく高くて、リリが奴隷に売られた値段よりも高い服が沢山置いてあった。


 お兄ちゃんはお店の人にお願いして、お店の中にある沢山の服も靴も帽子も、全部買ってくれた。


 お兄ちゃんがリリに選んでくれる服は信じられない値段がして、更に下着も買おうとしたので、怖くなったリリが下着はまだ要らないって言おうとしたら「今日のリリはお姫様なんだからね、大人しくしてなさい」って、言われた。

 

 そんな事、生まれてきて一度も言われたことが無かったので、嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて、気が付いたら涙が零れていた。


 リリの涙に気づいたお兄ちゃんは、あたふたしながらお店の人に「今まで着せてもらった服で、似合うと思った服を何着か揃えてください」と、とんでもない事を口にする。


 リリが必死に一着で良いよと言っても、お兄ちゃんは「ダメだよ、お姫様。ーーー勿論、下着や靴もですよ」と、またお姫様扱いしてくれる。


 沢山買って貰ったことも嬉しかったけど、リリの事をお姫様みたいに扱ってくれたお兄ちゃんの優しさが、嬉しくて堪らなかった。


 奴隷になった時、もうリリの人生は終わったと諦めていたのに、奴隷どころかお姫様になってしまうなんて何がなんだか分からないけど、お兄ちゃんの優しさだけは身に沁みて分かった。


 お店を出ても、靴を汚すのが怖くて慎重に歩いていたら、「気にしないで良いよ。汚れたら洗えば良いし、破れたら買えば良いんだから」と、笑って応えてくれる。


 こんなにリリに気遣ってくれて、リリをお姫様の様に扱ってくれて、いつも笑顔で優しくしてくれるお兄ちゃんの事を、好きになるのに時間は掛からなかった。



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