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68、恒久的なプラン。

 マンションにテレポートすると直ぐに麗華さんに念話で待ち合わせの場所と時間を確認した俺は、集合まで多少時間があると分かり、先に買い物を済ませることにした。


 都内の某デパートにリリを連れてテレポートすると、目に付くお酒とつまみを片っ端から買い集める。


 酒の良し悪しや、酒の肴の良し悪しなんて俺には理解(わか)らない。


 なので、基準となるのは値段だ。


 取り敢えず値段の高い物を選べば、多少の失敗はあれど大きく外れることはないだろうと、庶民的な考えだが間違いないだろう。


「お兄ちゃん、こんなのも買うの?」

「ん? あぁ、キャビアだね。食べたことないけど、世界三大珍味と言うぐらいだから、美味しいかと思ってな」

「ふ~ん」

「それより、早いとこ買い物を終わらせて、待ち合わせ場所に行くぞ」

「うん」


 刻々と麗華さん達との待ち合わせ時間が近づく中、時間ギリギリまで買い物を続け、買い物を終えると直ぐさま人目のつかない場所を探し、待ち合わせ場所のインスタを見ながらテレポートする。


 待ち合わせ場所は郊外にある少し広めの倉庫で、大きなシャッターを潜り中に入ると、隅の方に二階に登るスチール製の無骨な階段があって、それを登ると十坪ほどの事務所に麗華さん達三人が待っていた。


「久しぶり! どうここ、三人で探したけど、大翔さんの事務所にピッタリだと思わない?」


 事務所に入るなり春奈さんが元気よく飛び出して来ると、両手を広げくるくると回転しながら事務所のアピールをしてきた。


 未だ賃貸契約は交わしてないはずなのに、既に其々の机と会議室等にある大きなテーブルが備えられており、どうやら彼らの中ではこの場所で決定らしい。


 勿論俺が反対する理由もないし、なるべく早く事務所を選んで欲しいと彼らに頼んだのは俺の方なので、文句を言うつもりもない。


 ただ、問題もある。


 ここは周囲を山や田んぼに囲まれた自然豊かな場所で、ハッキリ言うと都内二十四区どころか関東でもない。


「あぁ、久しぶり。そうだね、ここなら仕入れも楽そうで良いけど、皆の家から遠いんじゃないの?」

「それなら、問題ないわ。大翔さんに、私達の家にも設置型テレポートを取り付けてもらうつもりだから」

「なるほど、麗華さんの言う通り、それなら移動時間は零秒だね」

「そうだよ、満員電車に乗る必要もないから、最高だよね!」

「ハハハハハ、確かに設置型テレポートを設置したら、満員電車に乗る必要もなければ、遅刻の心配もないか」

「えぇ、その通り」


 彼らは貴重な我が社の幹部だから、特別に優遇するのは当然の事か。と言っても、全社員五人しか居ないんだけどね。


「皆が良いなら、俺も問題ない。麗華さん、この物件を借りてもらいますか?」

「分かったわ。明日不動産屋さんと会う予定だから、早速契約を交わしますね。ー--それと、今後の事について話し合いたいのだけど、時間ある?」

「あぁ、二時間程度なら大丈夫だ」

「なら大丈夫ね。では、早速始めますけど、最初に現状を把握するために、現在のお金の流れを認識して頂きたいと思います」

「分かった」

「現在日本円の売り上げの方は異世界の工場建設や、雑貨店の仕入れ等から、日本円は徐々に少なくなっており、逆に金貨が除々にではあるが増えてる状況です」

「そうだな。その通りだ」

「将来的に逆転か、最低でも相互利益を出せるように持っていくとして、今現在は異世界に投資する段階だと踏まえ、できるだけ多くの日本円を手に入れなけなりません」


 俺は異世界で自分の夢を叶えるために、日本円を湯水の如く使い太陽光発電システムや、電動トラクターを購入して異世界で使っているから、当然利益は異世界で出ているが、日本では赤字が続いている状況だ。


 麗華さんの言うように、将来的には相互利益を出す関係じゃないと、片方が破綻してしまうかもしれないからだ。


「ただ、現在は社長である大翔さんによる、マンパワーでの利益しかなく、しかも大翔さんが動いて初めて利益が出るシステムで、単発的な利益しか生み出せない事が現状だと考えます」

「………… 」

「その単発的な利益しか出ないシステムを、恒久的な利益の出るシステムに変えるための案を私達なりに考えました」

「恒久的にか…… 」


 ん~、恒久的って難しい言葉だが、簡単に言えば何もしなくても金が入ってくる、そんなシステムを作りあげようって話だよな。


「そこで、最初のビジネスプランですが、現在J〇東海リ〇アの工事が始まっておりますが、我々は、それに代わる移動手段として、北海道、宮城県、東京、愛知県、大阪、福岡、鹿児島、沖縄に設置型テレポートを設置しようと考えております」

「えっ、それって、J〇東海リ〇アを潰すってことになるんじゃないの?」

「その通りですが、まだ完成してませんし、いろいろトラブルもありそうなので多少の問題があっても、今なら行けます!」

「私も、今なら行けると思います」

「麗華さんと良一さんと話し合いを続けてきましたが、やはり大金を得るには多少のリスクは甘んじて受け入れるべきだと、結論付けました」


 行き成りJ〇を敵に回すなんて、俺以上にぶっ飛んだ考えだな、この三人は……


 だが、俺の夢を叶えるためには、まだまだ日本円が多く必要だ。


 これは、俺にとって有難いビジネスプランだ。


「分かった、進めてくれ。俺も、出し惜しみはしない」

「「「ありがとう御座います」」」


 おっ、三人そろって「ありがとう御座います」なんて、もしかして俺が反対するとでも思っていたのか?


「次に、もう一つのプランですが、このビジネスプランは既に相手国側から了承を得ていて、後は国内の問題ですが、それも相手国からの圧力を受けて既に了承の方向に動いております」

「えっ、既に動いているとは、どんなビジネスプランなんだ?」

「それは、ニューヨーク、ワシントン、ロサンゼルス、カルフォルニア、羽田、関空、福岡空港、其々を結ぶ新たな路線で、こちらも設置型テレポートを使うことになっております」

「えっ!」


 うそぉ! アメリカと日本を、設置型テレポートで結ぶってこと?


 あぁ! もしかして、相手国の圧力って、アメリカが日本に圧力を掛けてるってことか?


「どうして、そうなった?」

「実は、既にアメリカは大翔さんの情報をある程度手に入れてるらしく、私達がJ〇東海リ〇アに代わるプランをある政治家に持ちかけたところ、いつの間にか設置型テレポートの事がアメリカに知られてしまって、このような結果になりました。情報漏洩には気を付けていましたが、申し訳御座いませんでした」


 日本はスパイ天国だからなぁ、アメリカのCIAからしたら日本をスパイするなんて、簡単な事だろう。


 それに、俺がテレポートを使いタンカーを移動した事は、アメリカどころか全世界で知られてしまったからな。


 ある意味、俺のせいだな。


「別に謝る必要はないよ、良一さん。これは別に悪い話ではない。それに、この責任の半分以上は俺にある。俺が不用意にテレポートを使っていたからな」

「いえ、そんな事は…… 」

「それよりも、アメリカと日本を結ぶ路線の事だが、どの様なシステムを作り上げるつもりだ」

「それについては簡単です。現在ある空港のシステムを使えば、問題ありません」


 なるほど、国際空港ならば税関も備わっているから、海外との路線も簡単に設置できるというわけか。


「だが、それだと航空会社がダメージを受けるのではないのか?」

「アメリカは、日本よりも柔軟な国です。今の航空業界よりも安全性が高く、しかもコストが殆ど掛からないと分かれば、アメリカが乗らない理由(わけ)がないのです。勿論、航空会社も大事ですので、テレポート料金は航空運賃の1.5倍となりました」


 確かにアメリカはタクシー業界に大打撃を与えるビジネスプラン 、Uber を便利で画期的だと言うだけで簡単に導入した。


 アメリカは、ビジネスに弱肉強食を求める、そんな国だ。


 だから成功者が集まるビバリーヒルズのような街も存在するが、同時にスラム街も多く存在する格差社会の国だ。


 そんな国なら、俺の運び屋としてのスキルは、思う存分発揮できるのかしれない。


「分かった。それで進めてくれ」

「「「ありがとう御座います」」」

「いや、こちらがお礼を言いたい。俺の事を良く考えてくれたプランで、感謝している」

「「「大翔さん…… 」」」


 彼らが考えたプランは、確実に恒久的に大金を生み出すプランで、彼らがいれば俺は日本円の心配をしないで、思う存分異世界に力を注ぐことができる。


「それから、もう一つプランがあります」

「ん? まだあるの?」

「実は、2030年問題として、ソーラーパネルの廃棄処理問題がありますが、ご存知でしょうか?」

「春奈さん、それは、どんな問題ですか?」

「太陽光発電は1990年代から日本でも広がった技術ですが、2000年代に入りソーラーパネルの生産コストが大幅に安くなった事と、2009年に日本では余剰電力買取制度が始まった事が起因して、太陽光発電システムは爆発的に広がりました」

「そうなんだ」

「ですが、ソーラーパネルの耐用年数は二十年から三十年と言われており、2030年代後半にはソーラーパネルの大量廃棄が始まると言われております」


 ふ~ん、時を遡るアイテムボックスを持つ俺には、あまり関係ない話だな。


「つまり、あと十数年でソーラーパネルの寿命がくるので、私達にはあまり関係ない話に思えますが、実際は1995年頃から規模は小さいが既に太陽光発電は稼働しているのです」

「えっ?」

「それら廃棄処分間近の太陽光発電システムを丸ごと、私達の会社で引き受けませんか?」

「それって…… 」

「はい、そうです。ほぼ無料で買い取り、アイテムボックスで新品に戻して異世界に持っていくのです」

「おぉぉおおー! 凄い! それが可能なら、異世界で多くの電気が使えるようになるのか?」

「はい! 大翔さん。もっと、もっと、電気が使えるようになりますよ!」


 なんて事だ。そんな手があったのか。


 J〇東海リ〇アの代替え案にアメリカと日本の空港を結ぶプラン、更に太陽光発電システムを手に入れる方法まで考えてくれるなんて、三人を雇って良かった!


 これは、三人には臨時ボーナスをたっぷり渡さないとダメだよな!


 それこそ、タワマンの最上階くらい買ってあげないと、ダメだよな!


「それと大翔さん、倉庫の一部に設置型アイテムボックスを設置してださい」

「おっ、おお。分かった。どこが良いかな?」

「こちらに来てください」


 俺は麗華さんの後を追いかけるようにして、一階の倉庫部分の隅に案内される。


「ここに設置して頂けますか?」

「ここで良いんだな。分かった」


 俺が麗華さんの指定した場所に、設置型アイテムボックスを設置した瞬間、またしてもタタタターラーラータッタラーと、どこかで聞いたファンファーレが流れ、『運び屋(多角経営)』が『運び屋(多世界間多角経営)』に、レベルアップしましたと聞こえてきた。




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