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62、カモネギ。

「ふざけるなぁ!」


 喜び勇んでリリの体を持ち上げグルグルと回転させていたら、突然騎士隊長のガイアス様が大声で怒鳴りだした。


「公爵様、こいつは何なんですか! 開拓の災厄ですよ、魔物の大群が目の前に押し寄せて来てると言うのに、こいつは、なぜ笑っているんですか! 人が大勢死ぬかもしれないんですよ!」

「いや、わ、私に言われても、困ると言うか…… 」

「では、誰に言えばいいのですか?」

「大翔に、直接言ったら?」


 こっちに振るなよ! そして、そんな怖い顔で俺を睨むの止めてくれ。


 まぁ、実際俺は喜んでいるけどな。


 だって、あれだけの魔物が大群で押し寄せて来るなんて、千載一遇の大チャンスでしかないし、新しい街の台所を預かってる俺からすれば、喜ぶ意外他にないだろ。


 まるで神様からの贈り物かと思うほど、美味しい話で都合良すぎる話だ。


 大量のカモが、大量のネギを背負って現れるようなものを、喜んで何が悪い!


「では、俺は、魔物の収穫、いや、魔物退治に行ってきます」

「い、今、魔物の収穫って言おうとしただろ、いや、絶対に言うつもりだっただろ!」

「まぁまぁ、隊長様、そんなに怒らないでください。隊長様の言う通り、魔物(金貨と肉)が大群で襲ってくるなんて、(おいし)いですよね」

「棒読みで言うな! 棒読みで!」


 もう、何て言えば良いんだよ!


 何言っても怒鳴り散らすなんて、本当に面倒臭い奴だな。


「お兄ちゃん、本当に大丈夫?」

「何言ってるんだよリリまで、俺は魔物の天敵だぞ!」

「そ、そうだけど、数が凄いんでしょ」

「あぁ、数万はいるかな」

「「「「数万だと!」」」」


 あっ、余計な事を言ってしまった。


「陛下、公爵様、さっさと逃げましょう、ここに居たら、魔物に殺されてしまいます。宰相様も…… 」

「静かにしろ、ガイアス!」

「で、ですが、陛下…… 」

「大翔とやら、其方は、数万の魔物相手に勝てると言うのか?」

「勝てますよ、相手はたかだか魔物ですから」

「まだ言うか! こいつは…… 」

「黙れと言うのが聞こえんのか、ガイアス!」

「………… 」

「そうか、勝てるのか……  宜しければ、其方が戦うところを是非見てみたいだが…… 」

「えっ、まぁ、別に良いですけど。ー--だったら、あちらの外壁の上にでも移動しますか?」


 ステファニー徴税菅、いや王様だったか。


 俺が戦うところを見たいと言うなら、見せてやろうじゃないか。


 その代わり種ジャガの件、よろしく頼むぞ。


 魔物(にく)は手に入りそうだが、炭水化物が手に入らないと物足りないからな。


「陛下、危険ですからお止めください。それよりも、早く逃げましょう」

「静かにしろと言っている。大翔、悪いが外壁の上まで連れて行ってくれるか?」

「勿論良いですけど、隊長様も行きますか?」

「陛下が行くなら、行くに決まっておるだろ!」

「そんなに怒らなくても…… 」

「なんか言った?」

「いえ、別に何も言ってませんよ、はい。ーーーそれでは全員行くようなので、皆さん手を繋いでもらいますか」


 はぁ、もう面倒だから、さっさと移動したほうが良いな。


 ん? 考え事をしているとリリが、俺に抱きついてきた。


 まっ、良いか。


「では、行きますよ」


 俺は全員が手を繋いだのを確認してから、外壁の上にテレポートした。


 丁度魔物が向かってくる方向に(そび)え立つ、外壁の上にテレポートすると、適当な場所を見つけて設置型テレポートを設置する。


 この町全体が俺の会社と運び屋のスキルに認識されているので、設置型テレポートはどこにでも設置できる。


「リリとジェームズに、設置型テレポートを使用する許可を与えたので、もし危険が及んだら安全な場所にテレポートしたら良いよ」

「ありがとう、お兄ちゃん」

「悪いな、大翔」

「では、行ってくる」


 俺は一度上空にテレポートすると、魔物の位置を確認しつつリリに念話をする。


(リリ、聞こえる?)

(うん。それよりも、本当に大丈夫なの?)

(あぁ、大丈夫だ。それよりも、何か気付いたら念話で教えてくれる?)

(うん。分かった! お兄ちゃん、頑張って!)

(おぉ!)


 俺は魔物の最前列の右端に突っ込み、魔物の五十センチ程上空にテレポートすると、アイテムボックスの有効範囲にいる全ての魔物の核を、片っ端からアイテムボックスに収納していく。


 収納有効範囲内にいる魔物十数体の核を一瞬でアイテムボックスに収納すると、すぐに隣にテレポートして再び十数体の魔物の核をアイテムボックスに収納する。


 右から左にどんどんテレポートしていき、一列目の全ての魔物の核をアイテムボックスに収納すると、今度は二列目の魔物の核を収納すると同時に、一列目の討伐した魔物もアイテムボックスに収納していく。


 この作業を、目にも止まらぬ速さで永遠と行うだけだ。


 俺は水路を作る時、最初に川幅三百メートル、長さ四十キロメートル以上の川を、テレポートとアイテムボックスだけを駆使して半日ちょっとで作った。


 あの時は川の深さまで計算して作業していたのだ、それに比べたら今回の魔物の核だけを収納する作業なんて、何も考えなくて良いから楽でいい。


 四十キロメートル以上の水路を作る作業(修行)のお陰で、今の俺の連続でテレポートするスピードは、もはや人の目では追いつけないだろう。


 更に溜池から畑に続く網目のような水路を作るには、水路の幅や高低差、強度もかなり重要となってきて、アイテムボックスの精密な操作を必要とした。


 網目のように張り巡らせた水路の総距離は軽く百五十キロメートルを超えてしまい、俺はその作業中は常に精密なアイテムボックスの操作を強いられていたのだ。


 だが、そのお陰で今の俺は、収納有効範囲をミリ単位で自覚できるうえ、操作することも可能となった。


 故に魔物の大群など、俺に言わせたら簡単なアイテムボックスの操作と、単純な連続テレポートをするだけの退屈な作業だ。


(お兄ちゃん、すっごー-い! いつの間に、そんなに早く動けるようになったの?)

(かなり特訓したからな。どうだ、魔物の数は減っているか?)

(うん! 物凄いスピードで減っていっているよ! まるで見えない掃除機に吸われるゴミのように、魔物が次々に消えていってるよ)

(だから言っただろ、俺は魔物の天敵だって)

(うん、そうだね。お兄ちゃんのスピードなら、一時間もあれば全滅するんじゃないかな)

(一時間か、三十分で倒したかったけど、流石に無理か?)

(幾ら何でも無理だよ、魔物だって最後はバラバラに動くと思うよ)

(あぁ、そうだな。魔物だってバカじゃないか)

(お兄ちゃん、欲張り過ぎ)

(アハハハハ、そろそろ集中するから、何かあったら念話頼むな)

(うん! 分かった。頑張ってね)


 リリとの念話を切って、俺は更にスピードを上げていく。


 前列の魔物が次々に倒れていく状況に、流石の魔物も違和感を覚えたのか、慌てて立ち止まり周囲の様子を確認する。


 だが魔物が立ち止まった事により、俺は更に作業がしやすくなった。


 最早、俺を止めることなど魔物には不可能だ。


 全ての魔物が、自分達の身に何が起こっているのか分からないうちに絶命してしまい、死んだことにさえ気付かないだろう。


 それこそ今、ステータスボードを開いて、アイテムボックスの魔物の数を確認することができたら、物凄い勢いで魔物の数字を示すカウンターが回転してると思う。


(お兄ちゃん、何か変だよ?)

(ん? 魔物の数が増えたのか?)

(ううん、そうじゃない。魔物は凄い勢いで減っていて、残りは半分くらいだよ)

(それなら、何が変なんだ?)

(なんかね、山が、山が動いているんだよ)

(ん? 山が動いている?)

(うん、そうとしか言えないの)

(そっか、取り敢えず残りの魔物をある程度減らしてから、その動く山を確認するから、悪いが動く山を注意して見ててくれ)

(うん。何かあったら、念話するね)

(おぉ、頼んだ)


 リリとの念話を切った俺は、再び作業を開始していく。


 絶命した魔物が次々に消えていく状況は、やがて残りの魔物に恐怖を与えたのだろうか、次第に魔物がバラバラに広がっていく。


 俺が走って追いかけるなら、バラバラに広がって逃げだすのは有効だろうが、テレポートで瞬間移動する俺にはあまり意味がない。


 バラバラに広がって逃げても、一度に収納する魔物の核の数が減るだけで、面倒だとは思うが所詮その程度の問題でしかない。


(お兄ちゃん、動く山は、すっごく大きな魔物だよ)

(そっか、ありがとうな)

(うん、でも、あんな大きな魔物、どうやって倒すの?)

(ん? 前にもやったけど。そっか、あの時リリは一緒にいなかったから分からないよな)

(良く分からないけど、倒す方法はあるのね?)

(あぁ、任せろ!)

(うん。でも、気をつけてね!)

(分かった。ありがとな)


 巨大な魔物か、となると魔物の核をアイテムボックスに収納するのは多分無理だ、それならあの方法だな。


 さてと、そろそろ目に見える範囲の魔物は少なくなってきたから、一度上空にテレポートするか。


(お兄ちゃん、魔物の口が光ってる! こっちに向かって、何かするつもりみたい)

(分かった、俺が何とかする!)


 すぐさま上空にテレポートして魔物が出現する森の方を確認すると、確かに東京ドームの二倍はありそうな巨大な亀の魔物が動いている。


 その巨大な亀の魔物の光る口が大きく開いた瞬間、魔物の口の中から巨大な炎の塊が新しい街に向かって発射された。


 

 



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