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60、トラブルの元。

 最初の案内先である太陽光発電システムに到着して、駐車場にバスを止めるが興奮状態の徴税官や騎士達は、なかなか車から降りようとしない。


 不思議に思っていたら、シートベルトの外し方を知らなかっただけだった。


 慌てて全員のシートベルトを外すし恐る恐る彼らの機嫌を伺うが、シートベルトが外れなかった事に対する怒りよりも、車の外に光り輝くソーラーパネルに興味があるらしく、彼らは全員ソーラーパネルを食い入るように見ていた。


「この光る板はなんじゃ?」

「これはソーラーパネルと言って、太陽の光を集め………… 」


 バスから降りると、すぐさまステファニー徴税官がいろいろと質問をしてくる。


 太陽光発電システムの説明はリリがしてくれるので、俺は念話を使い調理室で働く人達と電動トラクターで畑を耕している人達に、見学者が来ることを報告しておく。


 電動トラクターを乗りこなすお爺さんたちは、今ではすっかりトラクターの扱いが上手くなっており、畑を耕すスピードも格段に速くなっていた。


 お陰で新しい街の畑の開墾は、想像以上に早く終わりそうだ。


 ただ、今までお米を食べたことのなかった異世界の人々が、お米の味にすっかり魅了されてしまい、是非水田を作って欲しいと頼まれ、麗華さんたち三人に水田の詳しい仕組みや作り方を調べてもらっている。


 もしかしたら、来年の春には日本で良く見られる田植えの光景が、異世界でも見られるかもしれない。


「なるほど魔素を魔力に変換する装置か、こんな物を作り出すとは大翔殿は凄いお方じゃな」

「えぇ、お兄ちゃんは、本当に凄い人なんですよ」


 リリと盛り上がっているステファニー徴税官とは違い、ローレル徴税官は無言で太陽光発電システムを見ている。


 騎士達は太陽光発電システムよりもマイクロバスの方に興味があるらしく、マイクロバスの表面を触ったり、タイヤのゴムの部分を押してみたりと、こちらも真剣そのものだ。


 太陽光発電システムの見学は、最初にソーラーパネル、次に大容量の蓄電システム、最後に変電所の順に見学を行った。


 見学会が進むにつれ次第にローレル徴税官の質問が多くなり、太陽光発電システムを見学するのに半日もかかってしまった。


 ローレル徴税官の突然の変貌ぶりに、予定では調理室の見学の後で昼食を取るつもりだったが、予定を繰り上げて先に集会場で昼食を取ることになった。


 ちなみに昼食は、みんな大好きビーフシチューだ。


「そろそろ次の見学場所に案内するので、マイクロバスに乗って頂けますか?」

「そうか、それは楽しみじゃな、それで次はどこに行くのじゃ?」

「次は農作業をしている所を、見学しに行きます」

「農作業じゃと。技術の粋を集めたあの様な凄い装置の次に農作業とは、なかなか先が読めない案内じゃな。だが、それはそれで楽しみじゃ」

「そこでも、この太陽光発電システムみたいな、新しい装置が使われているのか?」

「はい。そこでは、この太陽光発電システムで作った電気を利用して、電動トラクターによる農作業をしていますので、ローレル徴税官も楽しみにしてください」

「勿論だ。これほどの物を作り上げる技術で、どんな風に農作業に関わっているのか、是非この目で確認したいが、その前にお会いした時の失礼な態度を、ここで詫びさせてくれ。済まなかった」


 突然、ローレル徴税官が頭を下げる。


 先程までの横柄な態度とは打って変わり、リリの説明を真剣に聞いたり俺に頭を下げたりと、ローレル徴税官の胸の内が良く分からない。


「べ、別に気にしないでください、それよりもお貴族様なのですから頭を上げてください。ほら、騎士達も見ているので、早く頭を上げてください」

「いや、私の浅はかな常識で、大翔殿には大変失礼な態度を取ったのだ、誰が見ていようが関係ない。本当に済まなかった。それから公爵様。今迄の無礼な態度、如何様(いかよう)な責めもお受けしますので、どうか家族だけはお許し下さりますよう、お願い致します」


 ローレル徴税官は行き成り地面に両膝を付けると、周りの目を気にする様子もなくジェームズに向かい土下座をした。


 彼の突然の行動にジェームズも戸惑ってる様子で、暫く沈黙が続いた。


「ローレル徴税官、私に謝る必要などない。私自身、皆に話をしながら、なんとも荒唐無稽なことを話しているのかと悩んでいたくらいだ。私が其方の立場なら、同じ事をしたさ」

「ですが…… 」

「ルーベル公爵がもう良いと申しておるのじゃ、だから終わりじゃ。分かったな、ローレル徴税官」

「か、畏まりました。公爵様、ありがたき幸せに存じます」

「もう良い。それよりも、私の話したことを理解したのなら、帝国の未来のために何ができるのか、何を行えば帝国の未来が輝かしいものになるか、ローレル徴税官よ、そこら辺を真剣に考えて欲しい」

「畏まりました。身命を賭して、学ばせて頂きます」


 なんだ、身命を賭してって、大袈裟すぎるだろ。


 それに、徴税官がそこまでするのか?


 仮にそこまでしたとしても、この街で問題を起こさないでくれよ。


 流石に国際問題に発展したら、また俺がギルバート様に怒られるからな。


 なんか嫌な予感がするから、面倒な事になる前に、さっさと見学会を終わらせた方が良いよな。



 ★ ★ ★



「ここでは先程の太陽光発電システムで得た電気を使い、トラクターを動かして農作業をしています」

「この畑は馬や牛じゃなく、その機械で耕しておるのか?」

「はい、ローレル徴税官が仰る通り、全てこの電動トラクターで耕しております」

「これは凄い装置だな、どんな風に動くのか見てみたい」

「それなら、ローレル徴税官が動かして見ますか?」

「良いのか? 良いのであれば、是非動かしてみたい」

「分かりました。では彼に、動かし方の説明してもらいますので、良く聞いてから動かしてみてください」

「分かった、よろしく頼む」


 俺は先程までトラクターを動かしていたお爺さんに、ローレル徴税官にトラクターの操縦の仕方を教えてほしいと頼むと、ローレル徴税官は自ら進み出て、相手が平民だと分かっていても頭を下げ、トラクターの動かし方を真剣に習っていた。


 その後ローレル徴税官は、意気揚々とトラクターの運転を開始する。


 トラクターを操縦するローレル徴税官は、畑を少し耕してはトラクター降りて耕した畑を確認すると、再びトラクターに乗って畑を耕す。


 彼は同じ行動を何度も繰り返しながら、トラクターの性能を調べているようだ。


 そんな彼の行動を見ていて俺は、この見学会が上手く行きそうな気配を感じていた。


(上手くいきそうだね、お兄ちゃん)

(あぁ、そうだな。これで、種ジャガが手に入る)

(あれ? だれか走ってくるよ)

(ん? どこ?)

(ほら、街の方から誰か走ってくるよ)

(本当だ、いったいなんだろう? ああぁ、なんか嫌な予感がするから、ちょっと行ってくる)

(うん、分かった)


 リリとの念話を切った俺は、こっちに向かって走ってくる男のもとにテレポートする。


「どうした、何かあったのか?」

「ハァ、ハァ、救世主様、大変です。ハァ」

「まぁ、落ち着いて、こちらを飲んでください」


 息も切れ切れに走ってきた男に俺はペットボトルの水を差し出すが、男はペットボトルの水を飲もうとして全部吐いてしまった。


 着てる服が汗で(しぼ)れるくらいずぶ濡れになっている事からも、彼が相当慌てて走ってきたことは一目瞭然だ。


 街に何かあったのかもしれないと一瞬慌てるが、未だ『緊急避難テレポート』が発動してないことを考えると、緊急を要する事案だとしても多少の時間は残ってるようだ。


 そうなると、やはり彼のほうが心配だ。


「ゆっくりで良いから、ゆっくりで良いから、少しずつこの水を飲んでください」

「ハァ、ハァ、た、た、大変です、開拓の災厄が、ウッ、オェッ、オェッ」


 えっ、水が飲めないなんて、これは相当ヤバいかも。


 走り過ぎて気分が悪くなっただけなら良いが、水が飲めない程弱っているとしたら、彼は酷い熱中症の一歩手前のかもしれない。


 もしそうなら、すぐにでも治療を始めないと彼の命が危ない。


 確か熱中症になったら日陰で休ませて、体の熱を取るために服の上からでも水を掛けたほうが良いはずだが……


 ああぁ、素人の俺には、それぐらいしか治療の方法が思いつかない。


 しかも、それが正しい治療なのかさえ分からない。


(お兄ちゃん、何かあったの?)

(そうだ! リリがいた! ちょっと待っててくれ)


 くそぉ! 俺自身が慌ててどうする。


 リリに治療してもらえば良いはずだ!


 俺は急いで彼を抱え上げると、リリがいる場所にテレポートする。


「リリ、彼が熱中症になりかけている。悪いが急いでヒールを頼む」

「えっ、わ、分かった。すぐにヒールを掛けるから、彼を地面に寝かせて」

「あぁ、そうだな」

「聖なる祝福を彼女の身に与えたまえ、ヒール、ヒール、ヒール………… 」

「大翔、何かあったのか?」

「俺にも分からないが、何かあったのは間違いないはずだ。こんなになるまで走ってきたのだから、絶対に何かあったはずだ」


 リリが男にヒールを掛け始めると、騒ぎが気になったのかジェームズ達が俺達の所に集まってきた。


 ジェームズの質問に、改めて不安な気持ちが押し寄せてくる。


 彼が体を壊してまで何を伝えに走ってきたのか、そのことは彼が元気にならないと分からないが、少なくとも彼の状態から緊急的な事案が発生したはずだ。


 だがリリの治療を受けた彼は、やがて呼吸が落ち着いていくと、静かな寝息をたて始める。


「もう大丈夫だと思うけど、暫くは起きないと思うよ」

「そっか、何か起こったのか聞きたかったけど、彼が目覚めるまで待つしかないか」

「緊急事態なら、街の人から念話が来るんじゃないの?」

「それもそうだな、ーーーだが、誰も何も言ってこないし、『緊急避難テレポート』も作動してないから、街の方は大丈夫じゃないかな」

「そう。だとしたら、彼は何を伝えに来たのかしら?」

「大翔よ、彼が倒れる前に何か言ってなかったか?」

「そう言えば、開拓の災厄とか言ってたような…… 」

「「「「開拓の災厄だと」」」」


 えっ、開拓の災厄の事を、皆知ってるの?


 それって、なんかマズイ事が起こっているって事なのか?


 ハァ~、もう、どこでフラグが立ったんだよ!


 取り敢えず彼を休ませるために、お爺さんがトラクターで彼を街に連れて行くことになったが、俺はもしかしてジェームズと一緒にいるからトラブルが起きるのかと、一瞬ジェームズを睨んだ。



今日のPM6時過ぎに、初めてのエッセイを投稿したいと思いますので、良かったら見てください。


題名は、なろうの底辺作者が、底辺を抜け出すために考えた、七つの方法を語るです。


私と同じ底辺作者に、少しでも役に立てばと思って書きましたので、役に立てたら嬉しいですね。

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