44、受け継がれるもの。
おっ! 久しぶりにキターーーーーー!
このタイミングでの運び屋のレベルアップは、俺にとって最高のプレゼントであり、神様からの神託だと思うほど嬉しかった。
今の混乱した状況に役に立つスキルがあるかと思ったら興奮してしまい、俺は皆のいる前で堂々とスキルボードを開き、運び屋のスキルを確認する。
Name 大翔
年齢 26歳
Lv10 最大成長 Lv10
HP 131
MP 8?
etc …………
スキル 運び屋(多角経営)
会社名 新しい街(仮)
社長 大翔
副社長 リリ
店舗名 異世界雑貨店
王都ガルン異世界雑貨一号店
店長兼マネージャー ロンダ
従業員 シャロン、リンダ、ランダ、レンダ
王都ガルン異世界雑貨二号店
etc …………
おぉ!『運び屋(多店舗経営)』が『運び屋(多角経営)』に変わっている。
頼む、この状況を打開する便利なスキル、来い!
本気で俺は、神にも祈る気持ちでスキルボードを確認する。
運び屋(多角経営)
運び屋(多店舗経営)のスキルを引き継ぐ。
運び屋(店舗経営)のスキルを引き継ぐ。
運び屋(個人経営)のスキルを引き継ぐ。
多角経営によるボーナススキル。
分離と結合を可能とするアイテムボックス。
1.社長である大翔の意思で、アイテムボックスに収納した物を自由に分離、結合ができる。
2.社長である大翔が設置した、設置型アイテムボックスでも、収納した物を自由に分離、結合ができる。
3.社長である大翔が認めた人物なら、設置型アイテムボックスに収納した物を自由に分離、結合ができる。
4. アイテムボックスが使用できる効果の範囲なら、収納しなくても自由に分離、結合ができる。
5.社長である大翔が認めた従業員だけが、使用する事ができる。
設置型テレポート。
1.設置型テレポートは、設置した二か所以上の場所を、想像するだけで自由に行き来できるスキルである。
2.社長である大翔の意思で、凡ゆる場所に設置できる。
3.社長である大翔の意思により、自由に大きさを変えられる。
4.社長である大翔が認めた人物なら、設置型テレポートを使用することができる。
5.社長である大翔及び大翔が認めた人物と、繋がっていたら何名でもテレポートできる。
6.社長である大翔が認めた従業員だけが、使用する事ができる。
分離と結合とは、いったいなんだ?
アイテムボックスの方は意味が分からないが、設置型テレポートはなんとなく分かるぞ。
もし俺の考えが正しければ、今の状況に大いに役立つはずだ。
俺は、さっそく使ってみることにする
未だ周囲には大勢の人々がいるが、そんな事など気にも留めずに俺は設置型テレポートを試してみることにした。
広場の隅のほうに設置型テレポートを設置してみたが、思っていたのと違ったため、解除して建物の壁に設置し直す。
設置型テレポートの大きさは日本の押し入れ程度で、厚みは数ミリ程度と薄く、自立もするが見た目が分かり難いので壁に貼り付けた方が良さそうだ。
これは俺が、押し入れ程度の大きさをイメージしたからか?
壁に貼り付けた時の見た目は、壁に白いチョークで薄い四角い線を描いたような感じで、当然だが潜り抜ける部分も見た目は周囲と同じ壁だ。
自立させると分かり難いと思ったのは、薄い白色のチョークの四角い線だけが何もない空間に浮かんでいるような状態だったからだ。
「手抜きも、たいがいにしろよ!」
俺は思わず、大声で叫んでしまった。
普通アニメなんかだと、豪華な扉が現れたり、細かい魔法陣で描かれた門が出現したりと、結構派手なイメージなのに、白のチョークで薄い線を引いただけって!
作画の手抜きだろ!
「大翔さん、なにかあったのですか?」
「あぁー、何でもないです。それよりガリック様、ちょっと見てください」
「えっ、どうしたのですか?」
設置型テレポートは二か所以上じゃないと使えないので、実験のため今さっき設置した隣に設置型テレポートを設置する。
後は移動する場所を想像するだけだから、この場所を想像したら良いはずだ。
俺は、ゆっくり四角い線の中に入っていく。
すると、もう一つの四角い線の中から出る事が出来た。
成功だ。
壁の中に入り壁から出てくる不思議な光景に、領民達がガヤガヤと騒ぎ始めたが、既に俺は気にならなくなっていた。
これで足の不自由な人々や子供達を、この街まで楽に連れて来る事ができると考えたら、もう嬉しくて堪らなかったからだ。
「大翔さん、今のはなんですか?」
「ちょっとした、魔法ですよ」
「こんな魔法、見たことも聞いたこともありませんよ」
「ハハハハ、ガリック様も試してください」
今度はガリック様が四角い線のなかに入ろうとするが、全く入ることができない。
普通に建物の壁に阻まれてる感じで、潜り抜ける事はできなかった。
「今度は、俺と手を繋いで入ってもらいますか?」
「あ、あぁ、分かった」
俺と手を繋いだガリック様は、今度は見事に通れた。
「なんですかこれは。いったい、どんなトリックが」
「ハハハ、企業秘密です」
「そ、そうですか、それなら仕方ないですね…… 」
ギルバート様から何か言われているのか、ガリック様はそれ以上聞いてくる事はなかった。
「この魔法を使って、こちらに向かっている領民を連れて来ようと思います」
「それは良い、是非お願いします」
「分かりました」
俺は先にドリントにテレポートすると、適当な壁を見付け設置型テレポートを設置する。
「リリ、ちょっと手伝ってくれ」
「あっ、お兄ちゃん。向こうに行ってたんじゃないの?」
「実は、新しいスキルを得たから、さっそく使おうと思ってな」
「どんなスキルなの?」
「俺がいなくても、テレポートできるスキルだ」
「えっ、そんな事まで、できるようになったの?」
「そうだ、リリも試してくれ」
今さっき設置した場所にリリを連れていき、彼女に新しい街の広場を思い出しながら四角い線の中に入りなさいと教え、戻ってくるときはこの場所を思い出して、同じことをしなさいと伝えた。
リリは今朝俺と一緒に新しい街を見ているので、広場を想像するのは容易く、また設置型テレポートの使用許可を俺が認めたので、彼女も通り抜けることができるはずだ。
「それでは、試してみます」
「あぁ、頼む」
壁の中にリリが消えていき、暫くして壁の中から戻ってきた。
成功だ!
「お兄ちゃん! これ、凄いです。本当に、凄いです!」
「悪いがこれで…… リリ、ちょっと待ってくれ」
突然、タタタターラーラータッタラーと、どこかで聞いたファンファーレが再び流れてきて、『運び屋(多角経営)』の、従業員が一万人を突破しましたので、ツイ〇ターボからの、スペシャルボーナスのプレゼントでーすと、ツイ〇ターボに似た声でメッセージが聞こえてきた。
好きだけど、好きだけど、ツイ〇ターボの花◯美◯さんも大好きだけど、どうせなら、トウ〇イテイオーの Mach◯c◯ さんでお願いしたかった。
いえ、貴方様の本心はツイ〇ターボの花◯美◯さん推しです。
そんな事はな…… あれ、喋れるの? やはり意思があるの?
おーい! 聞こえる?
俺は、トウ〇イテイオーが好きなんだよ!
微かだが、確かに聞こえたような気がしたが、気のせいだったのか?
「お兄ちゃん、大丈夫なの?」
「アハハ、何でもないから、心配しないで良いよ。あと、もう少しだけ待っててくれ」
「それなら、良いけど…… 」
考えてる時間が長すぎたのか、リリが心配そうに聞いてくる。
まさかトウ〇イテイオーの声が聞きたかったとは言えず、少々気まずい空気を作ってしまった。
すまん、リリ!
気を取り直して、スペシャルボーナスを確認するためステータスボードを開くと、画面の中は大量の紙吹雪が舞っていた。
祝っているつもりかもしれないが、大量の紙吹雪が邪魔で肝心のスペシャルボーナスが確認できない。
気にしたら負けだ、気にしたら負けだ、気にしたら負けだ、気にしたら負けだ!
さてと、確認しようかなぁ。
俺は、舞い散る紙吹雪を無視しながら、スペシャルボーナスと書かれたボタンを押した。
まったく、普通で良いのに。
もしかして俺が、たいがいにしろよと、言ったからか?
いやいや、これはただのスキルだ。気にしたら負けだ。
画面が変わり、スペシャルボーナスの説明が書いてある。
説明書には、『社長である大翔様が万が一亡くなったとしても、設置型アイテムボックスや設置型テレポートは、大翔様が消さない限り永遠に残り続けることになりました』と、書いてあった。
これは、俺が一番欲しかったボーナススキルだ。
これで俺がいなくなった後も、従業員達が路頭に迷う可能性が大幅に減った。
会社の財産は社長独りの物じゃなくて、社員全員の物だから受け継がれなくては困る。
「リリ! やった! やったよ!」
「ふぅぇえええー、う、嬉しい、けど、みんなが、見てるよ」
嬉しさのあまりにリリに抱き着くと、顔を真っ赤に染めたリリが、俺の腰に手を回してきた。




