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28、新たな出会い。

「これでも、くらえぇぇええええー!」


 自らを奮い立たせるように俺は、大声で叫びながらM4A1アサルトライフルの引き金を引き続ける。


 空気を破裂させる爆音が連続で鳴り響き、同時に盗賊らの大量の血液が恐ろしい勢いで飛び散り、辺りを血の海へと変えていく。


 M4A1の威力は凄まじく、攻撃を受けた彼らの中には下半身が太腿から吹き飛んだ者まで現れるが、俺は攻撃の手を緩めない。

 

 彼らは為す術もなくその場で崩れ落ち、余りの激痛に悲鳴を上げながらのた打ち回る。


 当然ながら彼らは銃の存在を知らない。故に俺は、完全に無抵抗の人間を攻撃したことになる。


 無抵抗の人間相手にと言うかもしれないが、相手は統制の取れた盗賊で全員が武器を持っている。


 どうせ()るなら、先制攻撃しかない。


 盗賊の理不尽さは既に経験済みで、油断をすると次の瞬間に地面に転がっているのは俺のほうだ。


「おい! なにぼさっとしている! お前ら、早くに逃げだせ! リリ、俺と一緒に援護を頼む!」

「分かった、お兄ちゃん」


 M1911の弾倉を交換しながら騎士達を怒鳴りつけるが、今一つ反応が鈍い。どうやら、状況変化に頭が追い付いてないようだ。


 逃げる瞬間は一刻一刻と過ぎていくのに、誰もが呆然と立ち尽くしていて、見てるこっちが(いら)ついてくる


「しっかりしなさい! みんな、何してるのー、早くその男が作った道から逃げなさい!」

「お、お、おぉ! みんな、走れぇぇえええー!」

「「「「おっ、おおぉぉぉおおー!」」」」

「ダレン、ザンダ、俺と一緒にダスクを抱えて逃げるぞ」

「分かりました、隊長!」「分かった!」


 真っ先に我に返ったのは貴族の夫人らしき人物で、張り裂けんばかりの大声で皆に命令する。


 夫人の叫びに我に返ったのか、貴族の男を筆頭に騎士たちは仲間を救出すると、俺が倒した盗賊を踏みつけながら走り抜ける。


 敵を殺すのは簡単だが、敵の追跡を逃れるには怪我人を多く残したほうが有利と聞いたことがあり、俺は盗賊の下半身を狙って攻撃した。


 そのため、多くの盗賊が生きている。


 盗賊が仲間を救出する合間に、逃げ延びるのが俺の算段だった。


 勿論出血多量で死ぬこともあるだろうが、そんな事は俺の知ったことではない。


 だが、彼らには新たな悲劇が幕を開けた。


 騎士たちが盗賊を踏みつけて逃げる際、彼らの首を遠慮なく跳ね飛ばして行くからだ。


 勿論、我に返ったのは貴族夫妻や騎士達だけじゃなく、盗賊らも我に返り怒声を上げながら襲い掛かろうとする。


 その足を止めたのも、空気を切り裂く連続の破裂音だ。


 盗賊が動き出した瞬間、リリの両手に構えるルガーLC9sが、彼らの足の甲を正確に撃ち抜いたからだ。


 一発の弾丸が人一人を動けなくする、ルガーLC9sにはチャンバー内に弾を込めておけば、連続で七発打つことが可能となり、両手にルガーLC9sを持つリリは十四人の足止めに成功する。


 9mmパラべラム弾の射程距離は五十メートルだが、拳銃となると射程距離は二十五メートルと短くなり、実際に足の甲を狙うとなると、その射程距離十メートル離れても至難の技となる。


 更に動いている十四人の敵の足の甲を、連続で狙い撃ちする場合は数メートルでも不可能に近い。


 リリはそれを十五メートル近く離れた敵に対して難なく行い、しかも左右両方の手に持つルガーLC9sで、自らも動きながら確実に撃ち抜いている。


 彼女の正確無比な銃さばきの前には、銃の威力など無意味にさえ思えてくる。


 仲間が大勢いるからとはいえ、十四人もの人間がバタバタと目の前で倒れていけば、人は恐怖に飲み込まれて動けなくなる。


 その隙を、俺とリリは見逃さない。


「お兄ちゃん、お願い!」

「任せろ!」


 リリに代わり、今度は俺のM1911が激しい破裂音を奏で敵を足止めする。


 俺が弾倉の交換をしている間はリリが敵の足止めをして、リリが弾倉の交換してる間は俺が敵の足止めをする。


 流れるようなスイッチで、敵を翻弄していく。


「リリ、魔法使いがいる、狙えるか?」

「任せて!」


 俺は、盗賊の後方に三つの炎の塊が見えた瞬間、急いでリリに指示を送ると、彼女は慌てることなく三発の弾丸で、五十メートル以上離れた三人の魔法使いが持つ杖を、確実に狙い撃ちにする。


 大勢の人が入り乱れる状況でも、盗賊らの隙間を縫うようにして確実に魔法使いに狙いを定めるリリの腕には、銃の神が宿っているかとさえ思うほどだ。


 だが、敵の数はまだまだ多く、周囲を取り囲まれたら一瞬で終わりかねない。


「リリ、逃げるぞ」

「うん!」


 リリを先に逃がし、俺は地面に大穴を開けて更なる足止めをした後、走り出す。


 敵は半分以上減ったが、それでもまだまだ多い。


 だが、囲まれなかったら敵を殲滅する方法など、幾らでもある。


 俺は振り返ると、テレポートとアイテムボックスを使い、敵の正面に円形の大穴を一直線に何度も開ける。


 俺達を追いかけてきた盗賊は、目の前の左右に広がる大穴にその足を阻まれる。


 完全に敵の追撃を退けた事を確認したら、大穴を開ける際アイテムボックスに収納した円柱の瓦礫を、テレポートを駆使しながら盗賊の周りに並べ、逃げ道を完全に塞ぐ。


 行き成り目の前に大穴が存在したかと思ったら、周囲に円柱の壁が現れたのだから、さぞかし盗賊は驚いただろう。


 だが、それで終わりではない、俺は再びM1911を円柱の壁に向かって連射する。


 M1911から放たれた激しい爆音が連続で繋がると同時に、円柱の壁に激しく土煙を舞い上げ、弾丸がめり込む際にできた傷跡が連続的に刻まれていく。


 銃を知らない彼らでも、俺のM1911から放たれたということは一目瞭然で、ようやく盗賊達は逃げ場のない状況に気付き、その場に崩れ落ちるように膝をついた。


「これは、君の仕業か?」


 振り返ると俺の傍に貴族の男が立っていて、俺を守るようにリリがルガーLC9sを男に向け、引き金に指をかけていた。


「す、すまない。ー--助けてくれた君に感謝こそすれ、危害を加える気は我々にはない」

「リリ、銃を下ろせ」

「でも…… 」

「良いから。ー--それにリリの早打ちなら、問題ないだろ」

「そうね、分かった」


 素直に銃を下したリリが、俺の背中に隠れながら服の裾を掴む。


 別に俺から離れたくないわけではなく、テレポートしたとき一緒に移動するための備えだ。


 俺のテレポートは、相手に触らないと使えないからだ。


「私の名は、ルーベル・ロイド・ジェームズ、ザードの街を含むルーベル侯爵領の領主をしている。彼女は私の妻でキャロラインだ」

「助けてくれて、ありがとうございます」

「それから、娘のマリーナ」

「ありがとうございます」

「そして、我が公爵領の騎士団をしているドレーンと、騎士団の面々だ」

「貴殿の助けがなければ、私は任務を全うできなかった。貴殿には感謝する」

「私の名前は大翔と言います、それから彼女はリリです」


 異世界に貴族が存在することは召喚された時に知っていたが、あの国王を見た日から王族や貴族に対して忌避感しか抱けなかった。


 だが、ジェームズを見てる限り、立派な貴族としか思えないから不思議だ。


 普通に考えたら、王族や貴族が全員そろって悪人だなんて、俺の被害妄想かもしれない。


「私は貴族だが、君は私の命の恩人だ。だから普段通りの話し方をしてくれたほうが、私も助かる」

「ありがたいです。リーマン辞めてから、敬語は苦手になりました」

「なに? リーマン?」

「ああぁ、なんでもないです」

「………… 」


 やべぇ、うっかりリーマンって言っちゃったよ。


 相手は貴族だし、さっさと逃げたほうが良いかな。


「さてと、リリ。そろそろ行くか?」

「うん」

「ちょっと待ってください。助けて頂いたのにお礼もしないなんて、公爵家として末代まで笑われます」

「妻の言う通りだ。話したくないことは話さなくても良い。だから私達を助けると思って、お礼をさせてくれないか?」


 本音を言うと、好んで貴族とは関わりたいとは思わないが、ザードで店を出している以上、完全に無視するのも後々の事を考えれば良いとは思えない。


 逃げるのを諦めて、この機会をチャンスと捉えるべきか、それとも……


(お兄ちゃん、どうするの?)

(ハッキリ言えば、貴族とは関わりたくない)

(だったら、逃げる?)

(いや、折角だ、この機会を利用しない手はない)

(お兄ちゃんが良いなら、リリも良いと思う)

(おぉ、だが、用心だけは忘れないようにしような)

(うん)

「分かりました。公爵様のご厚意に感謝して、お礼を受けることにします」


 逃げ出すのは簡単だが、この先の事を考えれば貴族と顔見知りになる事は悪いことではない。


 命の恩人という立場で貴族と接する機会を得たことは、ある意味チャンスとも言える。


「おぉ、感謝する。それではザードの我が屋敷に、大翔様とリリ様を是非招待させてください」

「ありがとうございます。喜んで、公爵様の御招待を受けたいと思います」

「固い固い、どうやら年も近いようだし、それに命の恩人なんだから私の事は気軽にジェームズと呼んでくれ」

「分かったよ、ジェームズ」

「おぉ、今晩は楽しくなりそうだ」

「貴方、飲みすぎ注意ですよ」

「もう、折角盛り上がってるのに…… だが、私の妻は怖いから逆らうことなどできないのだ」

「小声で仰っても、聞こえてますよジェームズ様!」

「アハハハハハ、いや、すまんすまん」


 最初の印象はどこへ行ったのやら、意外と気さくな奴かもしれない。


 兎にも角にも俺とリリは、妻の尻に敷かれているジェームズの屋敷に招かれることとなった。





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