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27、順風満帆。

 アルバートさんが開くお店の物件が決まり、従業員も四人雇うことになった。後は簡単なリフォームをしたら、アイテムボックスを設置して商品を並べてオープンするだけだ。


 少し手が空いた俺は、新たに奴隷を買うことにする。


 今回はお金にも余裕があるから、時間差で二店舗目もオープンさせようと考えたわけだ。


 俺は再び奴隷商会に行き、双子の姉妹を買うことにした。


 姉の名前はランラン、妹の名前はリンリンと言うらしく、パンダみたいな名前だと思ったが、決して触れてはいけない。


 二人を選んだ理由は、元々二人とも商会の娘で読み書き計算ができるという事と、必ずお店を再興するという強い意志が感じ取れた事が大きな理由だ。


 俺の店を立ち上げ軌道に乗せれば、奴隷から開放した後に、彼女達のお店を立ち上げる資金を援助する約束を交わした。


 彼女達が店を立ち上げても店に並ぶのは俺の商品で、結局俺が一番儲かると踏んで約束を交わしたつもりだったが、想像以上に彼女達の信頼を得たようだ。


 奴隷落ちした彼女達にとって、俺は救世主に見えたのかもしれない。


 宿屋の部屋を二人に借りて、店のオープンについて夜遅くまで話し合っている時、突然彼女達が服を脱いで迫ってきたのだ。


 突然の出来事に慌てふためく俺を、彼女達はベッドへと追い詰めていく。


 勿論その後、別の部屋で休んでいたリリが目を覚まして戻ってきてしまい、泣くや喚くやで大騒ぎとなったのは言うまでもない。


 まるでお約束のように戻ってきたリリが見た光景は、丁度二人にベッドに追いやられている瞬間だったから、俺が誘っているようにも見えたのかもしれない。


 泣きながら暴れ回るリリに二人は固まってしまい、俺は必死に説明したが、リリが納得するまで一時間を労した。


 度々思うが、思春期の女の子はそんなに家族を他の人に取られたくないものなのか?


 あぁー、チャンスだったのに……


 勿論、従業員に手を出したらコンプライアンス違反だが、ーーーでも、お互いに納得してるのなら……


 俺にも人並みに、性欲ってもんがあるんだよ!



 ★ ★ ★



「なぁ、リリ。そろそろ帝都に移動するか?」

「そうね、結局二ヶ月半もいたからね」


 リリの言う通り、俺達はザードの街に二ヶ月半も滞在した。


 勿論、その間何もしてないわけではない。


 俺達は必死にお金を稼ぎ、そのお金で更に三店舗の店をザードで立ち上げた。


 トータル五店舗の店をザードに立ち上げた俺達だったが、実は孤児院の方でも新しいお店が二店舗もオープンしていた。


 新しいお店の店長にはセリナ先生とローラ先生になってもらい、現在は従業員を雇ってお店を盛り上げているようだ。


 以前先生達が俺のために頑張ってくれると話していたが、実際その通りになっていて嬉しい限りだ。


 商品の売れ行きも順調に右肩上がりで、先生達は忙しい日々を送っているが、孤児院の子供達にも手伝ってもらっているので、安心してほしいと念話で話してくれた。


 院長先生から、以前のような貧しい思いをしなくて済むと感謝されたが、商品を卸している俺もかなり儲かっているため、こっちが感謝したいくらいだ。


 ちなみに孤児院のボロボロだった古い建物は、俺がアイテムボックスに収納して時間を遡った結果、今では新築に生まれ変わっている。


 王都のほうでもロンダさんが頑張ってくれていて、新たに奴隷を購入して三軒の店を立ち上げた。


 ロンダさんはやり手で、購入した奴隷を店長に据えると次々に従業員と秘密保持契約を結ばせ、自らはマネージャーとなり各店舗の指導をしている。


 まるでフランチャイズ契約だ。


 俺は彼らの頑張りのお陰で、現在十三店舗を経営するまでに至ったが、まだまだ俺の目標には程遠い。


 ザードを離れ、俺とリリは帝都に向かって街道をジム〇で走っている。


 久しぶりにリリと二人きりのドライブとなったが、なぜかリリの機嫌が良すぎて少々困っている。


 モ〇バーガーで買ったダブルモ〇チーズバーガーを食べている時に、口の両端が汚れてしまったが、リリが直ぐにティッシュを取り出すと、俺の口の周りの汚れを取ってくれる。


 まるで恋人同士のほのぼのしたシーンだが、俺とリリは親子か兄妹(きょうだい)だ。


 過剰なスキンシップはリリの将来の為にも良くないと思い、俺が自分ですると言っても、運転中だからダメとか言って聞いてくれない。


 まったく、困った妹だ。


 しかし、俺は何度もダブルモ〇チーズバーガーを食べているが、一度として口の周りを汚さないで食べた経験がない。


 果たして口の周りを汚さない、綺麗な食べ方があるのだろうか?


 他にもペットボトルのキャップを、何も言わなくても絶妙なタイミングで開けてくれたりもする。


 タイミングを計るために、俺の行動をジッと見つめるリリの瞳が、可愛いけど少しだけ怖い。


 音楽だって、俺の大好きなターニ◯・デグ◯チャフが歌う L◯s! L◯s! L◯s! をかけてくれたり「もう一度聴く?」とか「他に聴きたい曲ある?」とか、なぜか至れり尽くせりだ。


 何を考えてるか分からないが、もしかしたら何か欲しいものがあるのかもしれない。


 俺も子供の時、欲しい物があると父親の機嫌を取ったものだ。


「なぁ、リリ。何か欲しいものでもあるのか?」

「ん? なんで?」

「い、いや、別に理由はないが、ちょっと聞いただけだ」

「んー、別にないけど」


 おや、欲しい物があるから俺の機嫌を取っていたんじゃないのか?


 俺の勘違い?


「あっ、強いて言うなら…… 」

「あるのか?」


 やっぱり何か欲しかったんだ。そうだよな、魔◯科高校の劣◯生でも◯雪が達◯に甘える時は、達◯の機嫌を取っていたし。


 ん? あれは終始達◯機嫌を取っていた気も…… 兎に角、世の妹は何か欲しい時に兄貴の機嫌を取ると、ラノベで読んだ気がする。


「帝都に着いたら、丸一日はお兄ちゃんとデ、デ、デ、デ、デ、デ、デ、デートしたぃ…… 」

「デート?」

「う、うん」


 何でいきなりデート? いつも一緒に買い物とか食事とか行っているのに?


 あぁー、今後彼氏ができた時のための予行演習か! 


 あるある、確かにある。うん、ラノベで読んだ気がする。


『やは〇俺の〇春ラブ◯メ…… 』でも、主人公の八〇が〇〇先輩とデートの予行演習してた気がする。


 リリも、お年頃というわけだな。


「そうだな。デートするか」

「良いの?」

「あぁ、別に良いけど」

「や、やった!」


 そんなに喜ぶなんて、もしかしたら好きな人でもできたのかな?


 それはそれで、なんだか嫌な気もするが、でもリリが幸せになるなら俺は喜んで祝福してやるぞ。


 ん? あれは、馬車が倒れているのか?


「キャァァアアアアー! 助けてぇぇえええ!」

「な、なんだ!」

「お兄ちゃん、あっち、あっちの方から聞こえた!」


 楽しいドライブを搔き消すように突然悲鳴が聞こえてきて、俺は慌てて車を止めリリの指差す草原を確認する。


「リリ、少し見てくる」

「ダメ、リリも行く!」


 どうする、リリも連れて行くか?


 それとも置いていくか?


 あぁー、あれだけの悲鳴だ、考えてる時間が勿体無い!


 だいたい、こんな所にリリ一人置いて行けるわけないだろう!


「リリ、銃を携帯しろ! それから、何があっても俺の傍を離れるな!」

「分かってる。もう銃は持ってるし、予備の弾倉も携帯した」


 既にダッシュボードから銃と予備の弾倉を取り出し、それらを装備したと笑顔でリリが応える。


 俺も慌てて、M1911ガバメントをショルダーホルスターに吊り下げ、予備の弾倉を腰のベルトにセットする。


 更にM4A1アサルトライフルを取り出すと肩にかけ、予備の弾倉二つも腰のベルトセットする。


 相手が甲冑で身を包んだ場合、ハンドガンの威力だと不安が残るため、それを補うアサルトライフルだ。


 リリの腕ならハンドガンでも甲冑の隙間を狙うこともできるが、俺の腕だと隙間なんて狙えない。


 それならハンドガンよりも、威力の高いアサルトライフルを使用したほうが、危険が少なくて済むと俺は判断した。


「行くぞ、リリ!」

「うん!」


 俺の言葉にリリが俺に抱きつき、それを確認するとテレポートを使い上空に移動する。


 数ミリの距離を高速で連続テレポートを繰り返すと、重力に逆らい宙に浮いた状態となる。


 対価無しに無限にテレポートを使える事を利用した、俺の新しい技だ。


 宙に浮いた状態で状況を確認した結果、貴族らしい夫婦とその子供、それから執事らしき人が一人とメイドらしき人が三人、彼らを守るように取り囲む騎士らしき人達十数名が、剣を構えている。


 更に大きな輪が騎士達を取り囲み、騎士達に剣を向けていて、その数は少なく見ても百人以上。


 騎士達を取り囲む百人以上の人達は甲冑や武器もバラバラだが、逆に言えばバラバラでも装備されてる事や、取り囲んで逃がさないように統率された動きは、とても素人とは思えない。


 傭兵崩れの盗賊か?


 このまま戦えば、明らかに貴族側が不利。


 どうする、どうする、どうする!


 俺が躊躇してる間にも時間は刻々と過ぎて行き、盗賊のボスらしき男が、騎士の一人を引き摺ってきて地面に転がす。


 たぶん逃げてる最中に、盗賊に捕まったのだろう。


 盗賊のボスは何か話しているが、ここからは聞こえない。


 少し近づくか……


(お兄ちゃん、助けないの?)

(数が、多すぎる)

(そうだね、でも、このままじゃ…… )

(分かっている、けど…… )


 行くか、リリを連れて赤の他人を助けに、行くのか!


 これは現実で、相手は生身の人間だ。ラノベじゃないんだぞ!


「おとなしく金と女を渡さなきゃ、こうだ!」

「ウギャァァアアアー!」


 ボスが、地面に転がった騎士の太腿に剣を突き立てた。


 その瞬間、俺はテレポートを使っていた。




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