表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/88

15、最初の一歩。

 今迄俺のストライクゾーンをピンポイントで攻めていたローレンが、今回は至って普通の人達を紹介してくれた。


 彼が紹介してくれたのは五人家族らしく、父親は知的な感じのする三十過ぎで、母親は美人だが淋しそうな雰囲気のする二十代後半に見えた。


 子供は三人とも小学生ぐらいに見え、全員女の子だった。


「彼の名前はロンダ、王都から少し離れたゴーテリアという街で、大きくはないがそれなりに名の知れたドラン商会という名の商会の、経営者でした」

「商会の経営者が、どうして奴隷に…… いや、別に何でもない」


 商会の会頭が奴隷に落ちたということは、普通に考えれば借金で首が回らなくなり、借金奴隷として売られたからに決まっている。


 分かりきった理由を聞き、更に傷つけるような真似はしたくない。


「お教えしても問題ございません。彼も納得済みですから」

「そうなのか?」


 ローレンに言われ振り向くと、ロンダが黙って頷いた。


「彼は商売の才能は有ると思いますが、(いささ)か優しすぎたのです」

「優しすぎた、とは?」

「困ってる人を放っとけない性格が災いして、友人の保証人になったのですが、その友人が自殺してしまい、彼は借金のかたに店を取り上げられ、更に家族全員で奴隷落ちしたのです」

「店を取り上げられたうえに奴隷落ちって、そんなに多額の借金の保証人になったのですか?」


 幾ら友人のためとはいえ、店を取り上げられ家族全員で奴隷落ちする程、多額の保証人になるなんてお人好しにも程がある。


「いえいえ、違います。どうやらその友人が借金した相手が悪かったようで、信じられないような利子を請求されたみたいです。彼が言うには、どうやら契約書に魔術的な細工がされてたようですが、今となっては調べようがありませんので…… 」

「そ、それは…… 」

大翔(ひろと)様、良かったらロンダさん達家族を購入しませんか? ーーー彼らは、大翔様が購入して頂けなければ、もうバラバラで販売するしか御座いません。可哀想と思いませんか?」


 色気の次は同情とは、恐ろしい男だローレン。


 最初は、美人ぞろいの性奴隷を紹介して、次はCランク以上の冒険者か戦闘経験豊富なうえ性経験も豊富な傭兵。そして、ついさっきは美人秘書のような知的で美しい女性。


 今回は至って普通だが、人数は五人……


 つまり、売値の高そうな人ばかりを紹介している。


 形振り構わずに売値の高い商品を売るのは、同じ商売人として尊敬できるが、露骨すぎる。


 ローレンはどこかで、俺が荒稼ぎをしていることを聞いていたのだろうか、敢えて値の張る奴隷ばかりを紹介してくる。


 だが同情ではなくロンダ一家は、俺の考える理想の奴隷とも言える。


 問題は値段かぁー、高いだろうな……


「お兄ちゃん、リリが選んで良いのよね」

「ん? あぁ、勿論。リリが選んでいいよ」

「だったら、この人達にする」


 リリならそう言うと思ったよ。だって、美人な奥さんだけど旦那とコブ付きなら、俺が手を出さないの分かっているからね。


 勿論、そうじゃなくても俺は手を出さないよ。


 でも、何そのポーズ。両手を腰に当てて満足気に微笑みながら『役に立った』みたいな顔をしているけど、リリの考えなんか丸分かりだからね。


 まっ、最後にこの家族を紹介して、リリの心を動かすのもローレンの計算の内だろうし。


 俺がリリの事を大事にしてると知って、逆手にとった行動だと考えれば全ての事が腑に落ちる。


 優しいリリがこの家族を選ぶことを、最初から計算に入れての行動だったのかもしれない。


 更に俺にとっても最高の奴隷と言えるので、ローレン恐るべし。


「ローレンさん、この家族、幾らですか?」

「彼ら全員で、金貨十五枚になります」

「あれ、安くないですか?」


 金貨十枚なら、日本円で一千万円相当になる。


 意外と安かった。


 以前商業ギルドで奴隷の値段を聞いたとき、成人男性一人でも金貨十枚と言っていたから、家族全員なら結構するはず。


 何か理由があるのか?


「別に何も無いですよ」


 俺の心を読んだのかローレン! 


「怖いなぁ、心を読まないでくださいよ」

「彼が商会を経営しているとき、私もお世話になりましたので駆け引き儲けなしの値段です。それに顔見知りの家族を、バラバラにするのは私だって忍びないです」

「そうですか、ーーー分かりました、彼らを購入します」

「ありがとう御座います。では、こちらで契約書にサインをして頂けますか?」

「分かった」


 一通り契約書に目を通すと、俺はサインをした。これで彼らは俺の所有物となり、俺の命令には絶対逆らえず、奴隷を開放された後でも秘密は厳守される。


 奴隷用のチョーカーのことだが、ローレンに相談したところ別にチョーカーじゃなくても良かった。


 チョーカーと同じ効果を得る魔法陣が存在していて、体の見えない所に入れ墨のように刻めば良いと言われた。


 勿論痛みはないし、開放された後で消し去る事も可能だ。


 お店の店長として雇うつもりなので、ひと目で奴隷と分かるチョーカーは難点だったが、意外と簡単に解決した。


 ただ、チョーカーより魔法陣のほうが数倍値が張ったが、それでも許容範囲だ。


 まっ、これも初期投資と考えたら安い買い物だと思う。


「御主人様にお嬢様、本日は私達のようなものお買い上げくださり、ありがとうございます。私の名前はロンダと申します。それから、こちらは妻のシャロンと、長女のリンダ、次女のランダ、三女のレンダで御座います。以後、よろしくお願いします」


 何その娘に付けた、雑な名前……… 


 もちろん聞かないよ、聞かないけど、めちゃめちゃ気になるよね。


「俺の名前は大翔で、この子は娘でなく相棒のリリ。ほら、リリ、後ろに隠れてないで挨拶しなさい」

「初めまして、リリです」

「分かりました、御主人様、お嬢様」

「よし、挨拶も済んだし、先に服を買ってから宿屋に行こうか」

「うん」

「畏まりました、御主人様」


 以前行った服屋さんで家族全員の服を買い、その後は宿屋に行き一先ず泊まる所を確保する。


 前回の買い物を覚えていた服屋さんが、引くぐらいの勢いで出迎えてくれたのが怖かったが、それ以外は概ねスムーズに事が進んだ。


「失礼ですが、御主人様。ーーー御主人様は、お屋敷は無いのでしょうか?」

「在ることは、在るが。遠い場所に在るから、ロンダさん達を連れて行く事はできないのです」

「そうですか、それで私達は一体何をすれば?」


 流石に、そう思うよね。


 普通奴隷を買ったら、屋敷の手伝いをさせたり、護衛をさせたり、料理を作ってもらったり、夜の営みを……


 多くの人がそんな目的で奴隷を買うだろう。ましてや家族で購入したのだから、当然屋敷ぐらいあると思うはず。


 お店を経営してもらう予定で購入したのに、お店自体が存在してないという摩訶不思議な状況だし。


 更に泊まる所は宿屋、今後の生活が不安になるのも無理はない。


 だが、俺の家はワンルームだ、この宿屋より狭いかもしれない。よって、絶対連れて行けない。


 先行きが不安な気持ちも分かるが、そこは諦めてもらうしかない。


「ロンダさんには明日商業ギルドに行ってもらい、お店になりそうな物件を借りてもらいます」

「えっ? お店もないのですか?」

「はい。今は無いです。それで、できればお店で寝泊まりできる物件が在るなら、なお良いです」

「御主人様は、店を立ち上げるために私達を購入されたのですか?」

「そうです、その通りです。お店の開業資金も、商品も全て私が準備します。ロンダさん一家には、店の経営全てを任せたいと思っています」

「私達にできるのでしょうか…… 」


 俺自身、日本でも異世界でもお店の経営なんてした事がないので、必ず儲かるなんて言えない、


 だが、商業ギルドが俺の商品を高く買ってくれるので、絶対儲かるはずだ。


 それに失敗はしたが、ロンドさんは元々お店の経営者で、ある程度のノウハウは知っているはず。


 つまり、俺は安心して任せられる。


「大丈夫です。必ず売れる商品を卸しますけど、別に無理に利益を出す必要はありません。家族が生活できる範囲の利益がでれば、それでも良いのです」

「そうですか、でも…… 」

「最悪赤字でも、俺が全て面倒見るので気にしないでください」

「畏まりました。そこまで仰って頂けるのなら、頑張ってみます」

「よろしくお願いします」


 俺の夢を現実にするためには、今は俺自身が表に出るわけにはいかない。


 故に俺は影として目立たないようにしながら、王都での金儲けを考えなければならない。


 これは、その最初の一歩だ。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ