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12、我儘。

 リリと戦闘訓練を終えてから、一ヶ月余りが経った。


 俺は相変わらず大量に魔物を狩り、冒険者ギルドに買い取ってもらい大金を手に入れている。


 勿論商業ギルドにも、リリが詰め替えた様々な商品を買い取ってもらい、ここでも大金を得ている。


 以前盗賊に襲撃された経験から、両ギルドに行くのは日が昇っている間と決めてからは、襲われる事もなくなった。


 勿論異世界に行く時、俺とリリは護身用に銃を携帯していて、襲撃されても反撃する用意はしているが、大事なのは襲われないようにする事で、銃を使うことではない。


 お陰で今のところ問題は起きてないが、唯一の懸念材料が勇者召喚された時に、俺が牢屋から逃げ出したことだ。


 今思い出しても国王の態度には腹が立つが、お陰で面白い体験をさせてもらっているので、今の俺には恨むところはない。


 だが、もしかしたら俺を探しているかもしれないし、見つかったら再び牢屋に入れられる可能性もある。


 俺一人ならテレポートで逃げられるが、今はリリがいるので簡単には逃げられない。


 いや、逃げ出したくない。


 俺は、異世界で堂々と生活するのに何が必要かと常に考えていて、その結果、一つの答えに辿り着いた。


 簡単なことだ、俺が権力者になれば良い。


 それこそ、国王でも簡単に命令できないほどの権力者になれば、問題ないはずだ。


 貴族でない俺が権力者になるには、莫大な金と世界中を股に掛けるほどの存在になれば良い。


 そのためには、今のような日銭を集めるだけの生活では永遠に無理な話で、別の道を模索する必要がある。


 本気で権力者になるには、会社を作り多くの店を経営する事が一番の近道だが、その道程(みちのり)は簡単ではない。


 俺はこの途轍もない夢のような話を、リリに打ち明けることにした。


「リリ、今迄默まっていたけど俺の不思議な力は、この国の国王の指示で勇者召喚が行われたせいなんだ」


 マンションで、リリとコンビニ弁当を食べながら、俺は勇者召喚の話を始める。


「えっ、お兄ちゃんは勇者様だったの?」

「残念ながら違うよ、勇者達は別にいて、俺は失敗だったらしく牢屋に入れられた」

「なにそれ、酷すぎる」

「でも、お陰でリリに会えたから、良いけどね」

「逆だよ、お兄ちゃんに会えなかったら、リリ死んでたもん」


 そういえば、出会った当初は奴隷商の馬車に乗っていて、魔物に襲われていたんだよな。


 あれからリリとの生活が始まったが、なんだか最近の事なのに懐かしく思える。


「話戻すけど、ーーー牢屋に入れられた俺は、すぐにテレポートを使いマンションに逃げたが、もし見つかったら再び牢屋に入れられると思う」

「それって、王都にいたら危ないんじゃないの?」

「そうだけど、俺にも考えがあるから、簡単には王都を出たくない」

「考えって?」


 俺は途方もない、夢のような考えをリリに話した。


 普通なら笑い飛ばす話だが、リリは真剣に俺の話を聞いてくれた。


 勿論、俺自身も不可能だととは思ってない。


 なぜなら、俺には運び屋のスキル『テレポート』と『アイテムボックス』があるからだ。


 この二つを駆使すれば、世界中の店を輸送費ゼロで繋ぐ事ができる。


 これは、新たな流通経路の誕生で、俺にしかできない商売の仕方だ。


 俺は不可能ではないと信じているし、挑戦すべきだと思っている。


 だが、それをリリが信じてくれるかは別の話だ。


「お兄ちゃんなら、絶対できるよ」

「良いの? 別に他の国に行って、静かに生活する道もあると思うが……」

「それは、お兄ちゃんが目指す道じゃないんでしょ」

「そうだけど、これは俺の、たんなる我儘みたいなもんだ」

「お兄ちゃんの我儘なら、リリは叶えたい。リリは何もできないけど、応援だけはできるから」

「でも、手広く商売をすると、この間みたいに襲われる事もあるだろうし、国に追われることも…… それでも良いの?」

「リリは、どんな事があってもお兄ちゃんに付いて行く。これは、リリの意思だから、お兄ちゃんは関係ない」

「ーーー分かった。俺の我儘に付いて来い。何があっても、俺がリリを守ってやる」

「大丈夫! リリには強い味方がついているから、今度はリリがお兄ちゃんを守って見せるよ」


 そう言うとリリは『ルガーLC9s』を俺に見せ笑った。


 銃を持ったリリは、少し怖い。

 

「リリが賛成してくれたので、早速だが手始めに王都で店を持とうと思う」

「お店持つの?」

「うん。折角だから持ちたいけど、国王に見つかった時が心配なんだよね」

「そっかぁ。お店を誰かに任せるとか?」

「それも考えたが、店を任せられるほど信用できる人って、簡単には見つからないよ」


 店を他の人に任せるのは良い考えだと思う。


 世界中に店を広げるには、俺一人では絶対に無理で、誰かに任せないといけないからだ。


 問題は、知り合いの少ない異世界で信用できる人を探すことは至難の業ということだ。


「どこかにいないかな、信用できる人」

「冒険者ギルドで探す?」

「それは無理だ、俺が関わってる事は秘密にしたいからな」

「誰にも秘密にしながら、信頼できる人を探すって難しいんじゃないの?」

「そこが問題なんだよなぁー。でも、探すしかない」


 店を出すにしても、俺が関わっているとバレたら国に見つかってしまうし、かと言って秘密裏に信頼できる人を探しても、到底見つかるとは思えない。


 更に、その人に店を任せるなんて、普通に考えたら有り得ない話で絶対に無理だ。


 だが、逆に言えば、それさえクリアしてしまえば王都でも店を出すことができるはずだ。


 難しい問題だが、リ◯ロのナツ◯・スバ◯だって、俺以上の問題を解決している。


 だから俺も、頑張って必ず問題を解決してみせる。


 難問だが、取り敢えず情報を集めながら一つ一つ解決する事が、最善な方法だろう。


「それで、リリ」

「なに?」

「暫く、夜になったら情報収集のために出かけるけど、留守番大丈夫?」

「どこに行くの? エッチなお店?」


 なんでエッチなお店が出てくる。てか、どこで覚えてくるんだ。そんな言葉。


 テレビ? 残念だが、俺の家にテレビはない。


「そんなんじゃない、冒険者ギルドに酒場があるだろ、あそこで情報収集しようかと思ってな」

「あぁ、在ったね。リリも行ったらダメ?」

「お酒が出るから、流石に、ーーーごめん」

「もぉ、仕方ないけど、早く帰ってきてよ」

「あぁ、すぐ帰るからよ」

「もう、しょうがないなぁ」


 最近のリリは、以前と比べ俺にべったりのような気がする。


 いや、以前もべったりだったが、あの時は俺以外に頼る人がいなかったからで、今のリリは違う意味でべったりな気がする。


 それがどんな意味なのか良く分からないが、もしかしたら俺の行動が原因で、リリに心配をかけているのかもしれない。


 原因は分からないが、好きな男ができたときに親離れができないとリリが困るので、その辺は俺が気をつけなければいけない。


 まぁ、リリは可愛いから、男には困らないと思うけどね。


 俺も最近、親バカになったかな……





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