11、身の守り方。
二日後、体調が戻ったことを確認した俺は、ダイヤモンドが本物かどうか確認するため、以前勤めてた会社の営業先の宝石店に行ってみる。
結果は、本物のダイヤモンドで、かなりの値で取引されてる事を知った。
宝石店が是非売って欲しいと頼んできたので、買値だけ聞いて返事する時間をもらい、俺は一度マンションにテレポートで戻る。
時間を貰ったのは、他の宝石店での買値を聞きたかったからだ。
何件かの宝石店で鑑定と買値を聞いたが、営業先の宝石店が一番買値も高く、顔見知りでもあるので、売ることに決めた。
大きめのダイヤモンドが二個と、薬指の爪ほどのダイヤモンドが二十数個だったが、一番高く売れたのは大きめのダイヤモンドで、八千五百万円で売れた。
全部で一億四千万円の値がついて、正直変な汗が出て落ち着かない。
テレポートが使えなかったら、家まで帰るのに何度も後ろを振り返ったと思う。
日本とはいえ、異世界と同じように襲われるのではないかと、正直ビビっていた。
これは早めに引っ越さないと、怖くておちおち眠ることもできない。
だが、これで日本でのお金に困ることはなくなった。
宝石店が今後も取引をしたいと言ってきたので、盗品ではないが手に入れた方法を詮索しない事と、売り主が俺であることを秘密にする条件で手を打った。
金額が金額なだけに注意深く見守るのは必要だが、良い商売相手になりそうで内心笑いが止まらない。
★ ★ ★
日本でのお金の心配が無くなった今、一番大事なのは異世界での身の守り方だ。
以前のように行き成り襲われても、俺だけだったらすぐにテレポートで逃げることがはできるが、リリが人質になると逃げる事が困難になる。
リリと別行動すれば良いことだが、今更それは無理なことで彼女も嫌がるだろう。
もしかしたら、落ち込んで泣き出すかもしれない。
それなら多少強引でも、リリに身の守り方を覚えてもらったほうが良いと思う。
異世界人じゃない俺には、リリのような力のない人でも身を守れる方法を知っている。
それを使えば、リリだけじゃなく俺の身も守れる強い味方になるだろう。
俺はアメリカに渡り、ガンショップに行く。ガンショップに行ったのは、勿論買うためだ。
力のない俺やリリが身を守るには、銃が一番だと思う。
軍◯タの◯ュートは銃を作ったが、俺には作れないので持って行く事にする。
老◯に備えての世界でも、銃は敵を殲滅するのに効果抜群だったからな。
やっぱりラノベは、マジ勉強になる。
ガンショップで、アサルトライフルやハンドガンなどを購入し、弾丸も大量に購入する。
勿論、殺傷能力はないが相手を制圧できる、スタンガンや催涙スプレー、ゴム弾なども手当り次第購入する。
金は沢山持ってるし、今後もダイヤモンドを売れば幾らでも増えそうに思うので、ここでも超大人買いだ。
ガンショップの店員に「戦争でも起こす気か?」と聞かれたが、俺は笑って誤魔化した。
アメリカに行ってる間も、何度もマンションにテレポートして、リリの相手をすることを忘れない。
俺は、意外とマメな男なのだ。
後は素知らぬ顔で飛行機に乗り、日本に帰れば任務完了だ。
テレポートを使えば簡単に帰れるが、ビザの関係もあるので今後もアメリカに行くことを考えたら、飛行機を使うしかない。
そして俺は、このアメリカ旅行で重大な事実に気が付いた。
なんと、英語が喋れなかった俺が、なぜか日本語感覚で英語が理解できている。
考えてみたら、異世界人のリリとも普通に話をしてるし、冒険者ギルドの掲示板に貼られている依頼書も理解している。
だって、日本語で書いてあるからだ。
これも異世界に召喚された影響なのかもしれないが、不思議なことに英語が俺には日本語に聞こえるし、英字新聞が日本語の新聞に見える。
その逆もしかりで、俺の日本語が英語に翻訳されているようで、相手も普通に答えていた。
これぞ召喚マジック、異世界あるあるだ。
ご都合主義はラノベのようで不思議な体験だが、これも世界の理だと適当に理由をつけて納得した。
「リリ、戦闘訓練するぞ」
「戦闘訓練って、何するの?」
俺は日本に帰ってくると、早速リリを戦闘訓練に誘った。
警察官の存在しない異世界では、自分の身は自分で守らないと以前のように簡単に襲われてしまう。
勿論、異世界でも警察官の代わりになる近衛兵とか、騎士団、民兵、自警団などが存在するが、日本の警察官のように、きちんと取り調べとかはしない。
近衛兵とか騎士団は、王族や貴族を守るために存在するもので、厳密に言えば警察官とは違う。
一番近いのは民兵や自警団だが、賄賂が横行しているので当てにならない。
異世界で悪人が蔓延るには、それだけの理由があるということだ。
「銃という、俺の世界の武器を使った訓練だ」
「でも、リリに力は無いよ」
そう言ってリリは、いつかの俺みたいに右腕の力こぶを見せた。
勿論、ぺったんこだった。
「大丈夫、ちゃんとリリにも使える武器を、手に入れたからな」
「リリ、強くなれる?」
「あぁ、必ず強くなれる。だから練習しに行こう」
「うん! 分かった」
路地裏で襲撃された時、リリは自身が人質になったことを悔やんでいて、何度も俺に謝っていた。
俺にはテレポートがあるので、一人だったら確実に逃げられたからだ。
襲ってきた盗賊が悪いのであって、リリは一つも悪くないと説明したが、それでも彼女の悔しさは決して消えない。
リリは強くなれるの俺の言葉に信じ、俺と彼女の二人だけの戦闘訓練が始まった。
銃を手に入れると考えた時から目を付けてた、異世界の草原にテレポートする。
銃の危険性を十分教えてから、リリでも使えそうな『ルガーLC9s』ハンドガンを手渡すと、草原に標的を立てて練習を開始する。
『ルガーLC9s』は重さが480gと軽量だが、リリは体が小さいので少し不安だったが、心配無用だった。
銃の扱いに関してリリは、ハッキリ言って俺よりも数段上手い。
初心者とは思えないほど上手すぎて、もう俺が教えることなど何もない。
なんて偉そうに言ってるが、俺も初心者なので最初から教えられるのは、使い方だけだ。
勿論、アサルトライフルやサブマシンガンが使える俺のほうが有利だが、ハンドガン勝負なら圧倒的にリリには勝てない。
命中率や連射のスピードが、達人の域に達していると言っても過言でもない。
まるで、の◯太君だ。
俺は、リリの恐ろしい才能を目覚めさせてしまったようだ。
女の子が、そんな才能に目覚めて良かったのかと少し不安になるが、殺されるよりは数段マシだ。
これで再び、異世界で金儲けできると思うと、顔がニヤけて止まらなかった。
ただ、銃の引き金を引く時のリリが笑顔になり、少しだけ怖かった……
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