10、家族?
どれくらい寝ていたのか? 目を覚ますと、床に敷かれた敷布の上で俺は寝ていて、隣にはリリがいた。
俺を布団の上から抱き枕のように抱きしめているリリは、離そうとしても簡単には離れそうにもなかった。
リリを危険な目に合わせないと言いながら、結局危険な目に合わせてしまい、なんてザマだと本気で思うよ。
想像よりも簡単に金が稼げるもんだから、油断してい……
いや、調子に乗っていたのだ。
異世界では人の命が軽いものだと分かっていたのに、金を稼ぐ事に夢中で一番大事な事を忘れていたなんて、最悪だ。
「お兄ちゃん、目が覚めたの?」
「あっ、リリ、起こしたのか、悪いな」
「それは、良いの! お兄ちゃん、どこか痛いところある?」
「そういえば、多少痺れるような感覚はあるが、痛みはない」
あれだけ蹴られたり、棒みたいものでも殴られたのに、一切痛みがない。
襲われた事が一瞬夢かと錯覚してしまうぐらい、体のどこにも痛みがなく傷一つ残っていない。
夢なら良かったが、リリの反応を見るかぎり現実なのは明らかだ。
つまり、俺が人を殺したのも現実ということになる。
後悔はしていない。勿論、浮かれていて注意散漫だった事は後悔しているが、殺したことは後悔していない。
転◯ラの◯ムルだって、戸惑いながらも敵には容赦しなかったじゃないっか! 大事なのはリリであって、敵の命なんかではない。
襲ってくる奴なんかに同情したら、死んでいたのは俺だったかもしれないし、助けたりしたら今度は別の人を襲うに決まっている。
俺は、絶対に後悔なんてしない。ラノベの主人公みたいに、強くカッコ良く生きていくんだ。
「お兄ちゃん、本当に大丈夫?」
「あぁ、大丈夫。ちょっと考え事してたから」
「それなら、良いけど…… 」
少し考え込んでしまったか、リリが心配そうな顔で俺を見つめてくる。
あんな事があったんだから、今だけでも心配かけないようにしないとダメだよな。
「本当に大丈夫だから。ーーーそれより、怪我が治ったのは、リリが何かしたのか?」
「今まで使う機会がなかったから黙っていたけど、ーーー別に隠していたわけじゃないよ」
「そんなに焦らなくても、大丈夫。ちゃんと、分かってるから」
「ありがとう。あのね、リリにも一つだけ魔法が使えるんだ」
「魔法?」
「そう、ヒールって言う魔法」
そう言えば、記憶の中でリリが何度も「ヒール」と、叫んでたような気がする。
ハッキリとは覚えてないが、そんな気がする。
「どんな魔法なの?」
「傷を治す魔法で、一回では中々治らないけど、何度も使ったら少しずつ治すことができる魔法だよ」
「それ、すごいね」
「でも、リリ魔力が少ないから、お兄ちゃんを治すのに、三日も掛かっちゃった」
「それでも、凄いよ。って、俺、三日も寝ていたのか?」
「うん、怪我が酷い時にヒール使うと眠くなるみたいで、多分それが原因で寝てたと思う。でも、ちゃんとリリがお兄ちゃんの面倒見てたから、安心して」
ヒール使うと眠くなるのか、ーーーもしかして麻酔みたいなものかな、だから三日間も寝てたのかも。
ん? 面倒を見てた?
あぁ! 俺、裸だ……
「リリ、なんで俺は裸なんだ?」
「リリが脱がしたから」
「なんで脱がしたんだ?」
「だって、おしっことか、他にも…… 」
「あぁぁああああー! 聞こえない、聞こえない」
なんてことだぁ! 俺の下の世話をリリにさせていたなんて、一生の不覚!
もう、死にたい……
あれ? なぜ口の周りがベトベトしてるんだ?
ショックのあまりに顔を隠そうと触ったら、唇の周りがベトベトする不思議に思いリリの顔を見ると、恥ずかしそうにしている。
「リリ、俺の口に何かしたのか?」
「えぇっと、ほら、お兄ちゃん三日感も寝てたから、何か食べさせようと思ったけど、硬い物は無理だから飲み物だけ、そ、その、口移しで…… 」
「あぁぁあああああー! 聞こえない、聞こえない」
俺のアホ! もしかしたらリリのファーストキスだったのかもしれないんだぞ!
なんで、こんなことに……
いや、これは生命維持のために必要な処置で、人命救助だからノーカンだ。
って、なんで俺が乙女みたいなことを考えているんだよ!
分かった! ここは大袈裟にしないほうが良い。
騒いだら、俺の負けだ。
「そっか、助けてくれて、ありがとう」
「ううん、リリのファースト…… 」
「それは良い! それはノーカンだから。それよりも、俺が寝てる時に何かなかったか?」
「えっと、ーーーあっ!」
「あっ!って、なんだよ、あっ!って」
「別に、良い…… 」
顔を真赤にしたリリが、俺から目を背ける。
俺が寝てる間に、いったい何をしたんだ?
物凄く嫌な予感がする……
「リリ、俺達の間に秘密はダメだよ。気になるから、教えなさい」
「怒らない?」
「怒られるような事したのか?」
「ううん、ヒール、使ってただけ」
「だったら、怒らないから言ってごらん」
「あのね、リリがヒールかけてたら、お兄ちゃんのおち…… が、おっきなっ…… 」
「あぁぁあああああー! 聞こえない、聞こえない」
十二歳の女の子に、俺は何させてるんだよ!
いや、これは怪我の治療で、俺は寝てたから仕方ないことだし、正常な成人男性なら普通な事だ。
リリは家族だ、家族だから恥ずかしい事ではない! はずだ……
「兎に角、リリ。ありがとうな」
「うん、リリも助けてもらったから、お互い樣だよ」
「そっか。それじゃ、俺、着替えるから、ちょっと向こうを見ててくれ」
「えっ、なんで? リリ、もう全部見てい…… 」
「あぁぁあああああー! 聞こえない、聞こえない」
もう何回、繰り返すんだよ!
分かってるんだよ! 敢えて言わなくても、分かっているんだよ!
「兎に角、リリ、向こうを向いて!」
「はーい」
俺は急いで服を着て顔を洗い、何事も無かったかのようにリリの前に座る。
今後の事を、リリと一緒に考えないといけないからだ。
「なぁ、リリ」
「なに?」
「暫く向こうの世界には行かないで、こっちでの金儲けを考えてるけど良い?」
「別に良いけど、何かあるの?」
「あぁ、ちょっと考えがある」
「そう、なら良いけど、プリン買ってね」
「分かった!」
俺は笑顔でプリンを買う約束をすると、日本でダイヤモンドを販売する方法を考える。
最初に異世界の金剛石が、本当にダイヤモンドかどうか調べないといけない。
次にダイヤモンドの価値だが、これは何件かの店で買値を確認したら大丈夫だと思う。
最後に、ダイヤモンドを誰に売るかだが、一番高い値を付けて信頼できるところに売れば良いと思う。
まっ、以前勤めていた職場の営業先の宝石店で、一度聞いてみたほうが良いよな。
営業先だけど、一応知り合いでもあるから、行き成り知らない宝石店に行くよりはハードルが低いか。
後は異世界での身の守りかただが、今回のようにリリが人質になった場合、逃げることが困難になってしまう。
つまり、俺とリリには、新しい武器が必要だということだ。
さてと、頑張ってみるか!




