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「ちょっとー!突然なんなのよ!!」
そこに現れたのは、ロープのような太い紐で身体をぐるぐる巻きにされた女性。
気の強そうなつり目に真っ赤なドレス。
顔は違うし年齢も上だと思うが、すぐにあのエリス様だと気付いた。
「エリス、また諍いを起こした罪は重いぞ」
「趣味なんですぅー」
ハデスの言葉にエリス様はわざとらしい語尾の伸ばしか下をしてつん、と顔を背ける。
なお、こちらは大きなベッドの上で二人で座っていて、エリス様は何人もの屈強な男達に身体を縛っている紐を握られている。
「我が妻への愚行、それ相応の罪は償って貰う」
「なによ、私のおかげであの小娘の世界が終わって妻に迎えられてるのよ?
感謝こそされてもそこまで言われる筋合いは無いわ」
「確かに我は早く妻を迎えたかった。
だが最後の願いは叶えたいと思うくらいに待ち続けた相手だ。
その願いを踏み弄っておいて自分のおかげだとよく言えるな」
「格好つけちゃって。ずっともう攫おうかと愚痴ってたくせに」
それは何となく聞き覚えがある気がした。
いまいち思い出せないのでハデスをのぞき見れば、目が合った後顔を逸らされた。
恐らく事実なのだろう。
「エリス様」
エリス様が眉を寄せて私に視線を向ける。
「何よ」
「あの襲撃をわかっていましたね?それも私が庇うことも」
「そうよ。貴女は生贄の適正者。
あの時は私のために死ぬ、そういうルートは簡単に出来るの。
あの村の土砂崩れだって、そもそも城での襲撃も貴女が身代わりとなって死に、他の者が生きるルートがあった。
それは全てハデスが動かすハーディスに邪魔されたけれど、今回ばかりは傀儡のハーディスでは私の力に及ばなかったみたい」
頭がフル回転している。
そう、101回目の転生でも私は生贄として死にやすいのをハーディスが守っていたのか。
それをエリスが邪魔をした。
ずっと守ってきてくれたハーディスは、あの世界を消すほどの絶望を味わったのだろうか。




