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「それって、誰も転生出来ないって事?」
「そういうことだ」
簡単に言い切られ、私はそのままの体勢で彼の腕を掴む。
「冗談じゃ無いわよ!みんなあの世界で生きてて、終わればまた違う世界にいけたはずが訳わからない神様の介入で不可能になるなんて納得出来るわけが無い!
そもそも貴方はどれだけ元凶を作ってるのよ!
今回も貴方が彼女を怒らせたことでこんなことに!」
ふと思い出した。
エリス様を庇ったとき、彼女の口は笑っているように見えた。
彼女の目的は私への嫌がらせ。
101回目の転生を早期に終わらせ、大切な人達の世界を消し、何よりそう行動させてしまったのはハーディスということ。
彼女は私に大切な者達を消し去ることに成功し、大切なハーディスにも苦しみを与えたのだ。
「泣くな」
そっと指が自分の頬にあたる。
それで頬に涙が伝わっていることに気付いた。
「お願い。あの世界の人達を戻して。
私はもうここでいい。ここで一緒に過ごすから。
ただハーディスがそういう事をして消し去ったなんて辛すぎる」
俯くと、大きな手が私の頭に置かれた。
「お前は100回も生贄として殺されたのに、いつも泣くのは他の者のためだった。
いつもそれを見てはなんとも言えぬ気持ちになっていたが、実際目の前で見ると比べものにならぬ」
ハデスは言いながらも戸惑っているように思えた。
ずっと私の死を100回、いや101回見届けた人。
この人だって私のわからない思いがあるのだろう。
だけれど今会いたいのは一人だけだ。
優しいディオンでもなく、真面目なカール様でもなく、いつも側にいてくれたあの胡散臭い笑みを浮かべる執事の事を。
「ハーディスに会いたい。
あんな事をさせずにハーディスの望む幸せを手にして欲しかった」
段々言葉に詰まってきて、言い終わると同時に頭に置かれた手が引っ張って私は硬い胸板に当たる。鼻が痛い。
「泣くな。
・・・・・・仕方が無い、原因でもあるあの女に始末をさせよう」
ハデスにゆっくりと身体を起こされ、ハデスが指を鳴らす。
しばらくして向こうから女性の喚く声が聞こえた。




