12
「ハーディスは最初会った時に私に101回目の転生を過ごすためにいるって言っていたけど」
「あれもそもそも死者で転生させるときに約束をした。
お前を守るという点では一致していたからな。
私が中で覗くことも承知していた」
「もしかしてハーディスとは」
ハーディスが異様に私に執着していた理由ってもしかして。
だがハデスは眉間に皺を寄せ、言わん、と不機嫌そうに顔を背けた。
思わずムッとして鼻を摘まむと、驚いたように目を丸くしている。
「ハーディスとは100回の中で私と何か深い縁があったんでしょ」
睨めば、ハデスは私の手をゆっくりと外し大きなため息をついた。
「何度かお前の恋人、婚約者、夫だったこともあった。
何度も同じに生まれ変わるので、最後はお前の側で素直に気持ちを打ち明けられるようにしてやった。
もちろん本人は納得している」
自分は以前の転生で関係無いと言ってたのは嘘だったのか。
だがそんなハーディスを最後にあんな顔をさせてしまった。
「あの後私のいた世界はどうなったの?」
「終わった」
「いやそれは私の人生であって、ハーディス達がどうなったかということを」
「言っただろう、あの世界は終わった。
ハーディスは我と近い力が使える。
101回目の転生を楽しませるはずが、余計な女の妨害でお前は死んだ。
意味の無くなった世界をハーディスは消去したのだよ。
一番消したかった女はその前に逃げてしまったが」
「その女って」
「エリスだ。あれは争いを好む神。
我と、そしてハーディスすらお前に執着したことがたいそう面白くなかったらしい。
うるさいのでこちらに来られないよう罰を与えたのだが、まさか裏を掻いてお前の世界に行って邪魔をするとは思わなかった」
「待って。
じゃぁエリス様は神で、ハーディスは私の死に関係してあの世界を消したってこと?
お母様達は?ディオンとカール様達は!?」
「言ったであろう、消去したと。
無くなったのではなく、消えたのだ。
そもそも存在していない世界という扱いになったので死者も来ないで済む」
口が少し開いたまま状況が飲み込めない。