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「私達は領民に生かされている。
だからこそ私達は彼らに土地を貸し、彼らは私達にその費用を支払う。
そのお金が無ければ我々は他に回すことも出来ません。
アイオライト家ならばよくおわかりでしょう、我らの立場だからこそ為さねばならぬ事は」
彼女の目は冷たく、そして揺るぎない。
私も彼女の意見が全面的に間違っているとは思わない。
だがそれにより追い詰められた領民がどうなるのか。
私は何度も転生で味わっている。
貧しい人達が子供達に何をするかを。
お金を作る為の方法など、限られているのだから。
「ご歓談中の所失礼致します。
ティアナ様、少し外の空気を味わってはいかがですか?顔色があまりよろしくないようですので」
顔を上げると斜め後ろに控えていたハーディスが私にいかにも心配そうな顔で声をかけてきた。
「そうですわね。
せっかくですしお庭を案内致しますわ」
エリス嬢の勧めもあって私達はそろって庭に出ることにした。
降りたのはシンプルな庭園。
噴水などは無いのだが、草花がそれなりに手入れされているのはわかる。
だが手入れする量を減らしたいのか、花壇などは土だけで何も無い場所もあった。
エリス嬢に案内されながらゆっくりと歩く。
後ろにはエリス嬢の執事とハーディスが距離を取ってついてきていた。
「うちは庭師も一人しか雇えないので」
私の心を見透かすようにエリス嬢が言うので、穏やかで落ち着きますと答えると彼女はにこりと笑った。
「率直にお話ししますと我が家は位だけでお金が無いのです。
ですのでうちが差し上げられるのは立場くらいのみ。
それを考えあのお二人にお声がけを致しました」
笑顔のままで彼女は唐突に宣言した。
この話をしたいが為の誘いだったのだろう。
我が家を実際見てもらえればわかるでしょう、貴女の家とは違うのよ、というのを先ほどから裏で言われ続けているのはわかっていた。
「もうおわかりだとおもいますが、あのお二人のどちらか、私に譲って頂けませんか?」
目を細めてそんなことを言った彼女に苛立ちを感じてしまう。