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「くすぐったいからやめて」
「お断りします。私の愛を疑った罰です。
もっとハードなのにしたいのをこんな可愛いレベルにしているんですから感謝して頂きたいですね」
「よくわからない逆ギレだけど好きにして」
その言葉にハーディスが立ち上がり、私の椅子の背もたれに片手を置く。
さっきまで見下ろしていたはずが、あっという間に見上げることになっていた。
なにを、と口を開く前に、私のおでこに口づけをした。
思わず驚いてすぐ目の前にある胸板を両手で突き飛ばすがハーディスはよろめくこともなく、私を包み込むように見下ろす。
「愛しています。
貴女が願ったこの世界を楽しんで生きて貰うためなら私は何だって」
そこで言葉が途切れると、再度おでこにキスをされた。
離れていくハーディスの顔は何故か少しだけ切なげに見える。
「さぁ寝ましょう」
私はその後ハーディスに何も言えず、言われるがまま就寝した。
襲撃は訳のわからないところから起きた。
「お嬢様!
カーネリアン公爵家のエリス嬢から手紙でございます!」
メイドが慌てふためき私の所に一通の手紙を持ってきた。
私が受け取る前に側に居たハーディスが受け取り、中を開けますというので頷く。
そして中に書かれていたのは、エリス嬢からお茶会の誘いだった。
「内輪のティーパーティーとのことですが」
ハーディスも突然の手紙、そして誘いを不審に思っているようだ。
何故この時期に私の交際相手となることを望む二人に接触する令嬢が私をお茶会に誘うのか。
どう考えても何か嫌なことが待ち構えているとしか思えない。
元々交流も無いし、そもそも彼女がお茶会好きなんて噂も聞いたことが無い。
「お誘いの日は?」
「ディオン様とお会いする翌日のようです」
ハーディスは表情も無く答える。
お父様からディオンとエリス嬢との事を聞いてすぐ、ディオンから手紙が来た。
親の顔を立てるために一度彼女と会うけれど誤解しないで欲しいと。
ディオンも立場があって仕方が無いということは理解している。
寂しいとは思うけれど、私が何か言うのも間違っていると思い、わかっていますというような返事をした。
だが予想外のこのお誘い、どうすべきか。
「おやめになってはいかがですか」
俯いて考え込んでいるとハーディスが心配そうに声をかけてきた。
そう言われると何だか自分だけ我が侭を言って皆に迷惑をかけている気がしてくる。それに何よりも彼女の意図が気になるのだ。
「ううん、何かお話があるんでしょうしお受けするわ」
私の答えに、ハーディスは少し複雑そうな顔をした後、かしこまりましたと頭を下げた。