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あの城へ行った日から数日。
私は色々な事を思い出したり考えたりしてしまい、睡眠も浅い状態が続いていた。
日中眠気などあまり起こさないのに、気がつけば勉強の為に読んでいた本を開いたまま机に突っ伏して寝てしまう始末。
そしてその度にハーディスが私のベッドへ運んでくれていた。
「どうだ、もう三人と個別に出かけて絞ることは出来たのか?」
夕食時、お父様の言葉に食べかけていたパンが喉に詰まりかける。
さっと横から水の入ったコップをハーディスが差し出してくれ、勢いよく水を流し込んだ。
「あんなに有望で人気のあるお二人を待たせるのはやはり申し訳ありませんしね」
お母様も畳みかけてくる。
「あの、期限は私の次の誕生日前だったのでは」
私の言葉にお父様の表情が曇る。
「このところカール様、ディオン、双方に家と同格のところが娘をどうだとアピールしてきていているとヘリオドール公爵から連絡があった。
公爵も付き合いがある以上完全に断ることが出来ず、近々ディオンはその家の娘と食事をするらしい」
驚いてそのまま固まってしまう。
カール様は、と聞こうとしたとき後ろに控えていたハーディスがそれを質問した。
「カール様はいかがされているのでしょう。
先日お嬢様と出かけられたばかりですし今は仕事でお忙しいと聞いていますが」
「カール様の耳にはまだ入っていない。
仕事で忙しくまともに家にも戻っていないので話せないそうだ。
だから先に捕まったディオンの方が話が進んだ」
「それにしてもアイオライト家と同格の家が、ティアナ様に交際を申し入れているのが知られている相手二人に接触してくると言うのはカーネリアン公爵家ならやりそうですね」
さっきまで家の名前を出さなかったのに、当然のように言ったハーディスの言葉を聞いてお父様の眉間に皺が寄る。
カーネリアン公爵家。
赤系の魔法を使い、戦闘に特化した魔法を使うと言われている。
確かそこには娘が数人いたはずだけど、あまり社交界に出てこないので覚えていない。
それは自分も同じではあるのだけど。
「そうだ。相手は我が家と敵対するカーネリアン公爵家だ。
私が国王に近いことをよく思っていないのはお前達もわかっているだろうが、カーネリアン公爵は血の気が多い。
もっと領地を拡大すべきだと思う者達を先導し、国王に迫っている。
だがまだまだ彼らは国王の側近に味方が少ない。
だから信頼の厚い者達を家に取り込みたいのだ」
「よくある話しすぎて面白みに欠けますね」
鼻で笑うようにハーディスが言いのけて私の頬が引きつる。