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「ありがとう。頼りにしているわ」
「もちろんです。私の足先の爪から髪の毛一本までティアナ様の物ですから」
「いや、そういう返事はいらない」
一瞬でこの男が変態だと思い出した。
だがハーディスの表情は今まで見たこと無いほどに嬉しそうに見える。
「今宵はティアナ様16歳の誕生日パーティー。
目一杯着飾って男達を魅了しましょう」
「素敵な殿方と恋をして結婚したいと希望を言ったけど、もしかしてそういうのは始まってるの?」
私が顔を上げれば、ハーディスはにこりと笑った。
「とっくの昔からですよ、ティアナ様が自覚されていないだけで」
目の前の鏡に映る私の顔はふんわり癒やし系などではなく、良く言えば知的な顔立ちとでもいうのだろうか。
綺麗な顔であることには違いない。
焦げ茶色の艶のある長い髪、青か少し紫にも思えるような深い色の瞳。
私の性格から言えばふんわり癒やし系は無理なので、美しい女性になりという希望から考えるとこれで良いのだろう。
さて私にはどんなお相手と素敵な時間を楽しめるのか。
恋愛なんてしたこと無い私には未知の世界だ。
そう考えると今夜が楽しみになる。
「あ、言っておきますが私もティアナ様に魅了されているうちの一人ですので」
「そんなのどうでも良いから朝食の場所にエスコートよろしく」
酷いですお嬢様、と相手にされなかったハーディスの頭に生えた犬のような耳が下がったような幻覚を見て思わずクスッと笑う。
101回目の人生、今度は目一杯幸せに過ごしたい。
私はようやく手に入れた今までとは違う人生を歩めると、期待に胸を膨らませていた。