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私は意を決して口を開こうとした。


ハーディスを器とする男が私の肩越しに城を見ている。


「ヤバそうっすね」


若い男が軽口では無く言ったが、男は特に興味も無いようだ。

一体何が起きているのだろう。


「何、どういうこと?」


私が二人を見て聞けば、二人は顔を合わせて相反する表情になった。

困ったような若い男に対し、ハーディスを器だという男は何もないように、


「ただ城に賊が入っただけだ。

衛兵を多くしていた割に分が悪そうだな。

これがわかっていたから器はここに誘導したのだろう。

我が出てくればお前を守れる」


「待って!国王は」


「知らぬ。

さて、お前はどうする?

血が流れているこの世界でまだままごとを続けるか?

それとも我の元に来るか?

我の元に来れば好きに過ごせるぞ。

もちろん死に怯えることも無い」


乾いた音が中庭に響く。


「何故、我の頬を叩いた」


ジンジンとする自分の右手を拳にする。

頬を私によって叩かれた男は、何も感じていないように逆に聞いてきた。


「当たり前でしょう?!

ハーディスのお父様が窮地なのよ?!」


「何故そんなことを気遣う必要がある。

最初からただお前だけが」


「うるさい!ハーディスを返して!

国王のところに行くんだから!」


大声で言い放っても男は動じていない。


強い眼で私を探るように見ていたが、面倒そうに息を吐いた。


「何をそんなに不機嫌になるのかわからん」


「貴方、モテるのに人の気持ちがわからなくて最後は全て彼女から振られるタイプね」


ぶはっ!と隣から噴き出す声が聞こえ、若い男はひーひーと笑っている。

だが私が指摘した男は特に気にもしていないようだった。

だからこの男は駄目だと思ってしまう。


「確かに女に不自由していないが、面倒をかけてまで欲しいと思った女はお前だけだ。

ただ消滅させるのは惜しいと手を尽くして永らえさせ、最後は好きな人生を送れるようにまでしたのに何が不服なのか」


先ほどから聞き流してしまっていたが、今までの言葉をまとめれば私は50回の生贄で消えるとことがこの男によって100回生贄として殺され、恩着せがましい101回目の転生を与えられたのか。


元凶だ。

この男に私の全ては決められたのだ、この101回目の転生ですらも。




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