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「先ほど話があったように私は黒の魔法を使うことでこの城では肩身が狭かったのです。

あの頃は少々捻くれた子供でして、お嬢様が屈託無く接していただいたのはとても嬉しかった。

そんな折りにあんな事件に巻き込んで、あまつさえ助けられるなど。

ですから誓ったのです。

私の全てを捧げようと」


ものすっごく綺麗な顔で言い放ったけれど、いくら何でも結論が飛びすぎる。

庇ったと言うけれど子供のしたことなどたかがしれているし、そもそも守ったのは護衛の者達なのに。


与えられる知らない事実と、いきなり途中飛んで重い愛を押しつけられて頬が引きつる。

私の手はいつの間にかどちらもハーディスの手に包まれ、誓い合うように迫られてきていた。


咳払いが聞こえて、伯爵が苦笑いをしながら私達を見ていた。

隣から小さく舌打ちが聞こえたのは気のせいだろう。


「まぁ最後はかなり話が飛びましたが、王子はティアナ様にご執心のあまり、地位を捨ててアイオライト公爵を脅、説き伏せて貴女の側に居ることになったのです」


今、脅すって言葉を言い直しましたね、伯爵。

確かにこの男ならやりかねない。それが幼いときだろうと。


「私は後悔していませんよ、何一つ」


にこりとハーディスが笑顔で言った。

それを聞いてやはり良かったと思うわけで。


国王が小さくため息をついたのがわかった。

呆れるのも無理は無いだろう。


「・・・・・・時は限られたものだ。

好きにすれば良い」


国王はそれだけ言って、次の執務のためにあっけなく伯爵と供に部屋を出て行ってしまった。

良いのだろうかここにいても。

いや、一人従者はいるけれど。


「どーします?お二人で中庭ですか?」


男が軽そうな声で聞いてきた。


「もちろん」


「すみませんが俺も同行しますよ、仕事なんで。

ちゃんとお二人のイチャイチャ声の聞こえないくらいの距離は取りますよー」


「いっそいなくて良いのですが」


「相変わらずですねぇ」


男は頭の後ろに手を組み間伸びた声で笑う。

それをハーディスは気にもしていない。

それはとてもこの二人に長い付き合い、信頼関係があることを感じさせた。

きっとうちに来ても連絡を取っていた、いや国王との中継ぎをずっとしていたのかもしれない。



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