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先ほどから混乱して話して貰ったことが抜けてしまう。


私には本来の魔法を使った覚えは無い。

それがハーディスにより記憶を消されていたのだとしたら。

先ほど国王は言われた。

ハーディスは私のためにしか魔法を使わないのだと。


あぁ、なんて馬鹿な私。

ようやくわかった。


「ハーディス、私はこの城で本来の魔法を使い貴方がその記憶を消した。

私が治癒した人々と供に私の記憶も。そうなのね?」


ハーディスは黙っている。

だがしばらくして、えぇと言った。


何故よ、となじりそうな気持ちをグッと抑える。


「だから私は貴方の魔法を知らない。

縛りをかけてるって何?

そもそも貴方の魔法の色はなんなの?

記憶を消す魔法なんて聞いたことが無いのに」


国王がいるのも忘れ矢継ぎ早に言えば、ハーディスは困ったように眉を下げている。


「王子、流石に私から話してもよろしいですか?

思い出の場所でと言うお気持ちもわかりますが、国王の王子への心痛もおわかり下さい。

ティアナ様も知る権利はあるのでは?」


終始柔らかい笑みの伯爵に、ハーディスが、ではそのようにと珍しく折れた。


戸惑う私は黙ったままの国王に視線を向けた後、斜め後ろに控える伯爵を緊張しながら話すのを待つ。


「アウイナイト家はご存じのように青紫の魔法を使い、そのレベルは国一。

ですがまれに黒の魔法を使う者が生まれます」


黒の魔法?!

そんな色の魔法があるなんて初耳だ。


「黒の魔法は代々恐れられてきました。

王族でも生まれれば扱いに困るほどに。

何故なら、人の記憶を消すことや改ざんすることが出来るからです」


隣に居るハーディスの方を向けない。

いま、彼はどんな顔をしているのだろう。


人の記憶を消すことだって凄い魔法なのに、改ざんまで出来る、そんなことをしたらその人自身を消し去るも同然。

そんな魔法、使える者自体恐れられて当然だ。


「ティアナ様は幼い頃、何度かお父上のアイオライト公爵に連れられこの城に来たのですが、そこで王子と知り合い、二人はとても仲睦まじく中庭で遊ばれていました。


ですがそんなある日、悲劇は起きました」


「伯爵」


ごくりと喉が鳴る。

先を聞くのが怖いと思ったとき、ハーディスが止めるように伯爵に声をかけた。


「良い。先を話せ」


話すことを国王が許した。

こうなるとハーディスは止められないだろう。



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