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その先に座るのはアウィン国国王。
私達が入ってきたというのに、国王は顔も上げずにペンを握って何かを書き続けている。
「王子、こちらへ」
「そのような呼び方はもうおやめ下さい。
今日は私の仕える愛するお嬢様の件で伺っただけですので」
広い部屋の端に置かれた豪華なソファーを伯爵から勧められ、ハーディスは困ったような顔を彼に向ける。
だが伯爵はまるで自分の子供を見るようにハーディスに優しい顔。
横に私は座っているものの本来の身分は私の方が遙かに低いわけで。
きっと変な小娘が王子の側にいるなど不快かも知れない。
・・・・・・殺されたりしないよね、私。
今までの経験からやはりそういう方向になっていきやすくて、気持ちを切り替えようとしたら人影に気付く。
急いで立ち上がり、対面にやってきた国王に頭を下げた。
「よい。楽にせよ」
「ありがとうございます」
国王の言葉に、私が礼を言おうとしたらハーディスが返した。
横を向けばハーディスは私に笑顔で私を先に座らせた。
国王の後ろに伯爵、そして何故かハーディスの横に案内した若者が立っている。
「既にお伝えしていますが私の愛するティアナ様の魔法の一件です。
あの村への遮断処理は済んでいるようですが」
なんか先ほどから私の名前にうざい修飾語がついていないだろうか。
だがそんなことよりもハーディスが国王に向かい話し出したが話が見えない。
遮断処理って何?
国王の顔は整っているよりも迫力がある。
髭に目が鋭いのはとても上に立つ者としての威厳を感じる。
それに比べハーディスは男っぽいと言うより綺麗な顔立ちだろう。
おそらく母親似なのだろうか。
いや、今はそんな事を考える時では無い。
ハーディスはいくら私の執事とはいえ、ここの場に来て味わうのはハーディスをあくまで王子として扱っていることだ。
私こそメイドのようにしか見られていない気がするしそうなのだろう。
だからまずは黙っているしか無い。
「遮断処理は済んでいるがそう日にちは持つまい。
村と村との往来を止めればそれだけで噂は広がる。
早い内に村人の記憶を消すべきだろう」
低い声で話す国王の内容を聞いて、驚きながら必死に考える。
ハーディスが国王に私が魔法を使った事を報告、すぐに誰か魔法の使える者があの村の出入りが出来ないようにさせていて、村人の記憶を消すのか。




