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城に入るのは正門だけと思い込んでいたが、裏門ももちろんある。

馬車はそちらに向かい、初めて入る門にドキドキする。


門の前に来ればハーディスが降りて門番といくつかやりとりをしてまた戻ってくる。


「入れるの?」


「もちろんです」


正門とは違う質素な裏門から入るが、建物までに小さな小屋や若い衛兵などが訓練しているのが窓越しに見えた。


「こちら側は衛兵の訓練場所が多いんです。

馬小屋もこちらの方が多いですし」


慣れたように解説してくれるハーディスに、私は軽く返事をする。

華やかな表と違い、実務の裏というところだろうか。


馬車が停まりハーディスがドアを開け、下に降りると私に手を差し伸べる。


「喉は渇いておられませんか?」


「大丈夫よ」


そう答えてハーディスの向こう、建物前に若い男が一人立ってこちらを見ているのに気付いた。

歳はハーディスと同じくらいだろうか、珍しい赤茶色の髪の毛だ。

向こうも私に気付いたのか何だか軽薄に感じる笑顔を返してくる。


ハーディスに手を取られその男の方に行くと、男は深々と頭を下げた。


「お帰りなさいませ」


「単に用事で来ただけです」


笑顔でハーディスが言っているものの目が笑っていない。

変わりませんねぇと男は特に気にしたようも無くそばかすのある顔で笑う。


「あの方は」


「執務室に」


ハーディスの問いに男が答えると、横に居るハーディスが私を見て、


「ティアナ様、ではこのまま執務室に行きましょう」


「えっ、もう?!」


「面倒ごとは早く済ませて二人の時間を作りましょう」


国王への謁見が面倒ごとなのか。

頬が引きつりそうになる。


段々歩く廊下が豪華になっていき、衛兵の数も増えている。

衛兵二人がドアの横に立っている場所に来た。

衛兵達は私達が来ても一切顔も動かさないし目も合わせない。

私達を不審者だとは思わないのか、それともハーディスを知っているのだろうか。


男がドアをノックし声をかける。

中からドアが開き、ダンディなおじさまが現れた。

ブロンザイト伯爵。

この方は国王の補佐を務める一人で信任も厚い。

優しい顔つきだが、切り捨てるべき物は切り捨てられるそういう性格もあると耳にしたことがある。


「お待ちしていました、どうぞ」


優しい顔つきに合うような柔らかい声で伯爵に促される。

ハーディスに手を引かれながら中に入れば、真っ白な壁に大きな窓から光が入ってとても明るい。

大きく、重厚な飴色の机には大量の本や紙が並んでいた。



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