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「詳しいお話は後日。
一番はお嬢様の身の安全のためにすることです。
それだけは信じていただければ」
じっとカール様はハーディスを見ていた。
一切二人は目をそらさず、私は側でハラハラと二人を交互に見ていることしか出来ない。
やがてカール様が大きなため息をついた。
「君がティアナ嬢に不利なことはしないということだけは信じている。
それ以外は信じていない」
「十分でございます」
「なら早々に連絡を頼む。
村人達の命がかかっているんだ」
「もちろんでございます」
厳しい声で続けるカール様に、ハーディスは笑みを消し胸に手を当て真っ直ぐに答えた。
カール様は、わかった、と言うと私の方を向く。
「次の相手はハーディスと聞いています。
ですが今回のことがありますのでお会いする時間を頂くかもしれませんがよろしいですか?
もちろん村の様子はお伝えしますが」
「はい。私も気になりますのでお願いいたします」
カール様は私に微笑んだ後、馬に乗って帰られた。
それは風のように凄いスピードで、私を乗せてるときどれだけ慎重に走ってたかがわかった。
土や砂まみれになっていた髪や身体を洗い、ほっと部屋の大きな椅子でくつろいでいるとノックと供にハーディスが入ってきた。
「どうぞ。お疲れになったでしょう。
飲んだ後は身体の隅から隅までマッサージ致しますよ」
「飲み物だけで良いわ」
グラスに入ったジュースだけ飲んでいると足下から良い香りがする。
私の足の前には、白い手袋を外したその手に何か液体を伸ばしているハーディスがいた。
「何をする気なの」
「こちら、やっと手に入ったローズオイルです。
なんとローズ100%!
お肌も心も艶々に。
きっと貴女の心の中にある迷いも解きほぐすでしょう」
「どこかの妖しげな物売りそのものね」
だけど最後の言葉で私は抵抗を止めた。
それがわかっていたかのようにに、私のふくらはぎにゆっくりとオイルをのせていく。
既にハーディスが温めていたのか肌に乗せられ、よりローズの香りが立ち上って本当に良い香りだ。
「どこまで知っているの」
ハーディスはゆっくりと私の前に跪いたまま右足のふくらはぎをマッサージしている。
顔もこちらに上げず、
「全てでございます。
あそこで魔法を使われるとは無茶をしましたね」
どうやってついてきたのか。馬もいなかったのに。
「魔法を使うのは流石に悩んだわよ。
でもディオンとカール様の存在が後押ししてくれたの。
あそこで村人達が多くなくなって、生贄なんて馬鹿な真似をしだすのも嫌だったし。
どうせ呆れているんでしょ?身勝手だって」
ぐっと椅子の背にもたれかかり上を見る。
未だに私の足を痛くも無く適度な力でハーディスはマッサージをしていた。




