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100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる  作者: 桜居かのん
第三章 なんということでしょう、生贄のプロはその経験を生かさずにはいられなかったのです
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神への冒涜だ、実りだけ手に入れようとした罰だ、自分たちが欲しがるのなら神の欲しがる物も差し出すべきだったのだ。


老人の言葉は小さな身体からとは思えないほど、流れるように叫び続けている。


私は自分の体温が下がっていくのを感じていた。

周囲には傷だらけで生死もわからない人々が横たわり、一方で生贄の必要性を説く老人、それに飲み込まれそうな人々。


人間は弱いとき、辛いとき、特に無慈悲な苦しみに遭ったとき、強く言葉を言い切る人間に弱い。

不安な、どこに気持ちを置いて良いのかわからないとき、あの老人のような存在は本当に危険だ。

おそらくここで多くの村人が死傷すれば、たった一人今後生贄に出して済むのならという短絡的思考に落ちかねない。


見知った仲間、家族、大勢の村人と誰か一人の生贄。

どちらかだけ助けられると聞いた時、天秤にかければ誰だって前者を選びたがる。

そうなれば関係無い子供を攫ってきたり、親の居ない子供を生贄にするだろう。

誰だって身内を犠牲にしたくは無いのだから。


考えろ、私はどうすれば良いのか。

最悪の結末は100回の転生で嫌というほど味わっている。


視線の向こうには緑の魔法。

あれだけ広範囲に、それもこの時間維持するのは並大抵の魔力じゃ無い。


私は本来一気に人の怪我を治すことが出来る。

だがそれは知られてはならない。

そのリスクをわかっているから。

だけどこのまま数名しか治せないという設定を守るなら、とてもこれだけの人々は救えない。


それでは今のこの不穏な雰囲気は消すことは無理だ。

消すためには多くを助けるしか無い。


生贄など必要無いのだと。


それでも不安が過る。

私の力が戦争を呼んでしまったらどうしよう。


『君がそんな魔法を持っているのは、過去に辛い思いをしたからこそ、人々を救いたいと強く願ったのかも知れないね』


ふとディオンの言葉が過った。

向こうには未だ揺るぎない力を見せる緑の魔法が村を、人々を守っている。


私は口を真一文字に結び顔を叩く。

思い切り息を吸い込んで、腹から声を出した。


「皆さん!!

私は治癒魔法が使えます!

ですが私一人だけで多くは救えません!

どうか皆さんも祈って下さい!

目を瞑り、一心にその人が助かることだけを!」


一斉に人々が私を見る。

だが突然現れた見知らぬ娘の意味不明な言葉に困惑しているのが伝わってきた。

もう一度言おうと思ったとき、


「この方はあのカール様のお連れした方!

今信じるのはどちらだ?!

私はこの方を信じる!仲間を助けたい!」


そういうと私の前に膝を突いて頭を下げた。



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