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100回生贄として殺されたので101回目の転生では幸福な人生を願って令嬢になったけれど何故か元凶が偏愛してくる  作者: 桜居かのん
第三章 なんということでしょう、生贄のプロはその経験を生かさずにはいられなかったのです
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だが前に傾けていた顔を上げ、カール様は前を見ている。


「そういうのを日頃から見ていて、これでいいのだろうかと思うのです。

俺は貴女に出会えてこうして交際相手になれるチャンスを得られたというのに、やはり仕事に飲み込まれて恋敵であるディオン様にも気遣われる始末。

ですので割り切ることにしました」


彼はこちらを向いて、強い眼で私を見る。


「それなりにですが休みを作る体制がやっと出来上がりました。

ようは家庭や余暇を作れる体制です。

今まではあまりに偏りがありそれは立場上仕方がなかったのですが、それにより引き起こる問題は大きく後々の指揮にも影響します。

ようはですね、やっと貴女をお誘いできる時間を作れました」


きょと、と真面目な表情のカール様を見つめていると、彼は目を泳がせ咳払いをした。


「出かけませんか、二人だけで」


ようやく彼が回りくどい言い方をしてこの言葉にたどり着いたことに気付く。

きっと自分だけ休みを取れるような状況では無かったのだろう。

そもそものやり方を見直し、仕事が疎かにならないような体制を維持しつつ皆が休みを取れるようにしてやっと彼は私を誘ってくれた。


貴重な休みを私に割いてくれる。

その気持ちにドキドキするよりも、じんと胸の奥が熱くなった。


私は両手を自分の胸元に当てる。


「貴重なお休みを私に頂けるなんて光栄です」


微笑めば、彼は俯いて顔に手を当てた。


ここは明るい城灯りが届いているとは言え薄暗い。

彼の顔色はわからないが、恐らく顔を赤くしているのではと思うとたまらなく可愛いと思ってしまう。

何というか大型犬を撫でたい欲望に駆られる。


手を伸ばそうとしたら彼が勢いよく立ちがり、びくっとして彼を見上げる。


「そろそろ仕事に戻らなくては」


「そうですね、お引き留めしてすみません」


「いえ、直接伝えられて良かった。

明日にでも手紙を送ります。日程はその際に」


はい、と答えると手を差し伸べられる。


「広間までお送ります」


まだ照れているのかいまいちこちらを見ないカール様を微笑ましく思いながらその手を取ろうとしたら、横から私の手を誰かが握って驚く。


そこにはいつの間にかハーディスが立って私の手を握っていた。


「カール様、この後は私がお嬢様を広間までお連れしますのでどうぞ仕事にお戻り下さい」


笑みを浮かべるハーディスに、先ほどまで可愛かった大型犬がオオカミのように鋭い目でハーディスに視線を向ける。



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