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名前を呼ばれやっと順番になった。
私は鮮やかな青色のドレスのスカートを軽く摘まみ頭を下げ、その横の父が口を開く。
「おめでとうございます」
そう言った父に私も同じ言葉を続ける。
壇上にある二つの椅子には少し冷たそうにも思える王妃と、髭を蓄え眼光の鋭い国王が座り、私達の言葉に王妃はこくりと頷く。
別に雑に扱われているのでは無く、多くの来客に挨拶をしていたら疲れてしまうためにそういう形式を取っているだけだ。
下がろうとしたら何故か国王と目が合う。
今までなら頭をすぐに下げるところだが、ハーディスの話を思い出してじっと見つめてしまった。
「ティアナ」
小声で父に言われ慌てて頭を下げて下がる。
もう次の来客が挨拶をして国王の顔は見えない。
『さっきの国王の目が気になるわ。
もしかしてハーディスから私に出生の事を話したことでも聞いたのかしら。
だとすると未だに国王とはそれなりに親密と言うことになるし』
考え込んでいると父に声をかけられた。
「私は他の方々に挨拶をしてくるよ。
疲れたのだろう?少し夜風に当たってきては」
「そうですね。そうさせて頂きます」
広間にある開け放たれた窓からはバルコニーに出られるが、そこにも男女が一定間隔で談笑している。
こういう場所は出会いの場でもあるし、ただでさえ良い身分の者が揃う以上そうなるのは当然。
私は広間から出て長い廊下を歩く。
そう言えばこちら側には裏庭があったのを思いだし階段を降りた。
外に出られるようにしてあるのか既に開いているドアから外に出れば、階段の下には噴水のある緑豊かな庭園。
柔らかな風が自分の身体を擦るように通って気持ちが良い。
ほ、と息を吐くと後ろから重い靴音がして振り返った。
「ティアナ嬢?」
そこには軍服に腰には剣を挿したカール様が立っていた。
その後ろには若い兵が二人いる。
私を見たカール様は眉間に皺を寄せ、
「今日こちらに来られるのは存じていましたが、城内とはいえお一人での行動はお控え下さい」
「申し訳ありません。
ちょっと人酔いしてしまって風に当たりたかったのです」
申し訳ない気持ちで謝れば、カール様は眉間に皺を寄せたまま後ろの兵に何か言うと、二人は私をチラチラ見ながら去って行った。




