3
「あー、それはぁ」
焦っている声。
おそらく言ってはいけないことを、口を滑らせてしまったのだろう。
だが見知らぬ誰かに勝手に選ばれて100回殺され、それで世界が幸せになった、良かったですね、なんて思えるわけが無い。
私はその時々に苦しみ、悲しみ、痛みを味わってきた。
まともな親も、優しい兄弟も覚えが無い。
どれもこれも辛く悲しかった。
そして殺される直前に毎回思う。
あぁまた私は16歳になれなかったのだ、そしてただ殺されるのだと思いながら。
「誰よ!誰なの、私をそんな目に遭わせたのは」
「いやぁだからその」
「世界を救った?
それ聞いてあー良かったですぅ。100回殺された甲斐がありました!
とか私が思うような人間だとでも?!」
「それは思ってないよ、そんな魂の者では調和する力なんて無いし」
「だから、首謀者を、吐け」
私のドスのきいた声に、白い世界が一瞬たじろいだのがわかった。
冗談じゃ無い!知らない誰かのせいで私は100回も殺されたのだ。
未だに沈黙が続いている。
私の苛立ちが高まると供に、何故かこの白い世界にジジッとラグのようなものが走った。
「ま、待って待って落ち着いて。
君が落ち着いてくれないとこの世界が消えてしまう。
そうすると本来の目的が達成できないんだ!」
焦る声と裏腹に、私はイライラが増えて仕方が無い。
だが私は数々の世界を調和するのに役立ったせいなのか、この白い世界で怒ると何かまずいらしい。
・・・・・・もしかして、私は世界を破滅させられる事も出来るのでは?
「ストップ!その危険思想!」
見えないが相手が酷く焦っているのはわかる。
どうやら私の考えを読んだらしい。
その上で否定しないところを見ると、どうやら私の考えもあながち間違っていないようだ。
「あの、ここに君を呼んだ本来の目的をだね」
「その前に首謀者を吐け」
「首謀者という言い方は・・・・・・。
とにかく本題!今回100回生贄を為したから、君には褒美が贈られるんだよ」
「褒美?」
怪訝そうな私の声に、そうなんだよ!凄いんだよ!と声が被さる。
どうやら首謀者を聞き出すことから話を逸らしたいらしい。
とりあえず聞いてみるか、その褒美とやらを。